10月4日 セイリュウ
「……ただいま」
縁側から家の中に入ってきたのは、長い間この家を空けていたオウリュウだった。
「オウリュウ?! 久しぶりだね! どこ行ってたの?!」
「……沖縄」
「沖縄……? あっ、ねぇお土産は?! お土産!」
「……ここ」
持っていた紙袋をビャッコに手渡して、オウリュウは私のすぐ傍に腰を下ろす。そんな彼が帰ってきたことに気づいたのだろう、ゲンブとスザクも居間に姿を現してきちんと土産に食いついた。
「あー! これ、前から欲しいと思ってた格ゲーだ!」
「おおっ、これあれだろ?! シーサー!」
「何故そんなものを……あ」
「待ってください、セイリュウ。今何を無言でしまったんですか」
相変わらずとんでもないものを持ち帰ってくるオウリュウの土産を見なかったことにし、お茶を出すスザクの手を上手く躱す。
「……拾ってきたやつ、気に入ってくれて良かった」
「気に入ってませんから! 貴方は毎回毎回なんてものを拾ってくるんですか!」
「……スーちゃん、おなかすいた」
「わかりました! すぐ作ります!」
「待て待て待て待てスザク! ちょっと待て!」
「セイリュウがご飯作るって! ねぇ?!」
「えぇ。おかわりなどと言えないほどにたんまりと作ってきます!」
「えぇ〜、みなさんなんでですかぁ〜!」
嘆くスザクを放置してすぐに作りに行く。オウリュウ一人がいるかいないかでこの家の騒がしさががらりと変わるのは何故なのだろう。やはりこの家にはオウリュウが必要なのだと思わされる。
それでも、オウリュウがこの家に常にいた時は一度もない。私が生まれるよりも前から世界各地を旅するオウリュウは、ふらりとどこかに行ってふらりと帰ってくる。この家の最古参の式神なのに、それ故か大事な時には必ずいない。
いつの間にか代替わりしていたスザクを見て彼が言った言葉は、「……おかなすいた」だった。
ぎりっと歯を噛み締める。痛い。だから考えることを止めて料理に没頭した。
「……セーくん」
「今回はなんの用件で帰ってきたんですか」
「……暇だったから」
「旅ばかりしてるんだから常に暇でしょう」
「……旅するの忙しい」
「それを暇と言うんです」
「……ううん、忙しい」
「…………」
何を考えているのかがわからない。オウリュウはいつもそうだった。だから旅にも意味があるのかと思ってしまう。
「貴方は何を探しているんですか」
一瞬の間。
「……妖怪」
切っていた野菜から視線を外してオウリュウを見下ろす。その表情は本物だった。




