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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2011年
58/201

1月1日   雪之原雪路

「新年、あけましておめでとうございます」


 最初に口を開いたのは、私たちの代での最年長者──乙梅おとめさんだ。私は彼女の一つ年下。一年早く産まれていたら乙梅さんの立場になれていたかもしれない女。


「昨年度は芽童神かいどうしん家に次世代の半妖はんようが産まれました。一卵性の双子、二人の半妖は《十八名家じゅうはちめいか》千年の歴史の中でも例のないことです。そして、次世代の半妖はご存知の通り〝家族として〟日々を過ごしています。長女となった麻露ましろの負担は相当なものとなっているはずですが、必要であれば我々も支援を惜しみません。後は……」


 言いたいことを言うだけ言って、言葉を切った乙梅が視線を移す。その先にいたのはエリスだった。


「……後は、鴉貴からすぎ家ですね」


 いつもと言われたらそれまでだけれど、エリスは怯えた表情を見せている。エリスに向いている視線は一つではなく、新年会に集ったすべての《十八名家》の人間が彼女のことを見つめていた。

 燐火りんかも、栄子えいこも、七緒ななおも、そうも、瑠璃るりも、茉莉花まりかも、咲把さわも、槐樹えんじゅも、涼凪すずなも、与音よねも。私たちの世代の総大将の万緑ばんりょくも鴉貴家の半妖の誕生を待っていた。


 千秋せんしゅう雷雲らいうんじんの男三人はエリスを見もしない。彼らは半妖でなければ半妖の家の者でもないから興味がないのだろう。


蒼生そうせいは今年で十七でしょう。第二子の件は残念でしたが、まだ、《十八名家》の未来、鴉貴家の未来の為に諦めないでくださいね」


 エリスの第二子は流産だったらしい。それがトラウマとなっているのか、エリスが妊娠したという話はそれ以来一切聞かなかった。


「…………はい」


 小さなエリスの声が聞こえる。エリスがこのまま半妖を産まなければ、次世代──私の娘の麻露が率いる世代は《十八名家》千年の歴史の中で最も前例のない世代になる。


 二卵性の双子の片割れ、愛果あいか。一卵性の双子、月夜つきよ幸茶羽ささは阿狐あぎつね家は没落していて、よりは半妖でもある娘の亜紅里あぐりと共に姿を消している。鴉貴家の半妖は、まだ、産まれていない。

 麻露は蒼生と同い年だ。乙梅や他の現頭首に先を越されないように早く産んだのは、最年長者として次世代を率いてほしいという私の劣等感が理由。なのに、とんでもない世代に産んでしまったこと──乙梅より数倍もの負担が彼女の双肩にのしかかってしまったこと。心から申し訳なく思っている。


 麻露。強く生きて。今はまだ会えないけれど、いつかまた会えたら私は少しでも貴方の力になりたい。最年長者の失敗は、誰であろうと許されないから。

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