1月1日 雪之原雪路
「新年、あけましておめでとうございます」
最初に口を開いたのは、私たちの代での最年長者──乙梅さんだ。私は彼女の一つ年下。一年早く産まれていたら乙梅さんの立場になれていたかもしれない女。
「昨年度は芽童神家に次世代の半妖が産まれました。一卵性の双子、二人の半妖は《十八名家》千年の歴史の中でも例のないことです。そして、次世代の半妖はご存知の通り〝家族として〟日々を過ごしています。長女となった麻露の負担は相当なものとなっているはずですが、必要であれば我々も支援を惜しみません。後は……」
言いたいことを言うだけ言って、言葉を切った乙梅が視線を移す。その先にいたのはエリスだった。
「……後は、鴉貴家ですね」
いつもと言われたらそれまでだけれど、エリスは怯えた表情を見せている。エリスに向いている視線は一つではなく、新年会に集ったすべての《十八名家》の人間が彼女のことを見つめていた。
燐火も、栄子も、七緒も、双も、瑠璃も、茉莉花も、咲把も、槐樹も、涼凪も、与音も。私たちの世代の総大将の万緑も鴉貴家の半妖の誕生を待っていた。
千秋、雷雲、仁の男三人はエリスを見もしない。彼らは半妖でなければ半妖の家の者でもないから興味がないのだろう。
「蒼生は今年で十七でしょう。第二子の件は残念でしたが、まだ、《十八名家》の未来、鴉貴家の未来の為に諦めないでくださいね」
エリスの第二子は流産だったらしい。それがトラウマとなっているのか、エリスが妊娠したという話はそれ以来一切聞かなかった。
「…………はい」
小さなエリスの声が聞こえる。エリスがこのまま半妖を産まなければ、次世代──私の娘の麻露が率いる世代は《十八名家》千年の歴史の中で最も前例のない世代になる。
二卵性の双子の片割れ、愛果。一卵性の双子、月夜と幸茶羽。阿狐家は没落していて、頼は半妖でもある娘の亜紅里と共に姿を消している。鴉貴家の半妖は、まだ、産まれていない。
麻露は蒼生と同い年だ。乙梅や他の現頭首に先を越されないように早く産んだのは、最年長者として次世代を率いてほしいという私の劣等感が理由。なのに、とんでもない世代に産んでしまったこと──乙梅より数倍もの負担が彼女の双肩にのしかかってしまったこと。心から申し訳なく思っている。
麻露。強く生きて。今はまだ会えないけれど、いつかまた会えたら私は少しでも貴方の力になりたい。最年長者の失敗は、誰であろうと許されないから。




