9月2日 ギルバート・ローウェル
「ギルバート!」
呑気な声が聞こえてくる。ぼくはそんな呑気な声が大好きだ。
「エヴァ!」
駆け出して、窓の外に顔を出す。やっぱりぼくの家の前には笑顔のエヴァが立っていた。
明るいグレーの髪は狼みたいで、青い瞳は鳥みたい。たくさん手を振ってくれるエヴァは「来たよー! 行こー!」って言っていて、ずっとエヴァが来るのを待っていたぼくもニコニコと笑った。
「うん! すぐ行く!」
窓から外に出たいくらいにすぐにエヴァのところに行きたかったけど、危ないことをするとママが怒るから玄関に行く。
「お待たせ!」
扉を開けると、すぐにエヴァが持ってるお菓子のいい匂いがした。
「いい匂い! ねぇ、今日のお菓子は何にしたの?」
「今日は、クランペット! わたしが作ったんだよ!」
エヴァがえっへんってしてる。すごいなぁ、エヴァ。お菓子も作れるんだ。かっこいいなぁ。
「食べたい!」
「まだダメー!」
「えー、じゃあいつー?」
「今日はねぇ、川に行くの! 川についてねぇ、たくさん遊んでからならいいんだよ!」
エヴァはエヴァのママが見ていないところでもママの言うことをちゃんと聞く。ぼくは早くお菓子を食べたかったけど、ぼくのママが「エヴァの言うことをちゃんと聞きなさい」って言うから「わかった!」って言った。
「うん! ギルバートはいい子! 手ぇつなご!」
エヴァが手を伸ばすから、いつもみたいに手を繋いで一緒に川まで歩いていく。エヴァはぼくよりもお姉ちゃんでぼくよりも大きいから全然疲れてるようには見えなかったけど、ぼくはへとへとになってきた。
エヴァは本当にすごいなぁ。ぼくもエヴァみたいになりたいなぁ。そうしたらエヴァと一緒にもっと遠くにも行けるのに。
どうやったらエヴァのようになれるんだろう。どうやったらエヴァに追いつけるんだろう。いつもそればかり考えている。エヴァの近くにいたいのに、エヴァはいつもぼくの遠くにいるような気がした。
「ギルバートギルバート! クランペット食べよう!」
エヴァがぼくに見せてくれたのは焼きたてのクランペット。
「あれ? まだ川じゃないよ……? いいの……?」
「いいよ! だって、川に着いた時に食べたら冷めちゃうもん! 今食べちゃお?」
エヴァは笑っている。ぼくも嬉しくなって笑う。ぼくとエヴァにもおんなじところもあるんだってわかったから。嬉しかったから。エヴァと一緒にクランペットを食べる。
その日食べたクランペットは、すっごくすっごく美味しかった。




