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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2010年
54/201

6月6日   芽童神与音

 第一子で半妖はんようを産むことができなかった。そういう現頭首は多いからあまり悩むことはなかったけれど、私の第二子は双子だった。


 相豆院そうまいん家の現頭首である咲把さわさんが六年前に産んだ第二子は、二卵生で男女の双子だった。片方が半妖の愛果あいかだったから《十八名家じゅうはちめいか》全体が前例がないと騒いだけれど──私がたった今産んだのは、一卵性の双子だった。


与音よね様……」


 黙り込む私を全員が励まそうとする。産まれた子供は第一子の八千代やちよとは違い二人とも女だったけれど、愛果と翔太しょうたという前例があっても、片方が半妖であったり両方が半妖であるなんて──誰一人として思わなかったらしい。

 私も、我が子のことなのに信じられなくて呆然としていた。二人とも必死になって産声を上げているのに、それを聞いても何かしなければと思わないほどに私は二人の半妖を眺めることしかできなかった。


「与音様はまだお若いので、第四子も作れます……! きっと、きっと、大丈夫ですから……!」


 産声に掻き消されるけれど、この場にいる一族全員が啜り泣いていた。

 第二子なのに半妖じゃないなんて。芽童神かいどうしん家はどうなるんだ、与音様が可哀想だ──そんな声が聞こえてくるようだった。


「半妖ですよ」


 遅れてその事実を伝える。産まれてきた子が半妖であるのかそうでないのか。それがわかるのは同じ家の半妖で母親である私のみ。だから、一族全員は信じていなかった。


 私が、半妖を産むことができなかったから嘘を吐いているのだと思っていた。


 私が嘘を吐いていないと証明することができるのは、ぬらりひょんの万緑ばんりょくさんだけ。双子を万緑さんの前に連れていかれても構わないとさえ思えるほどに、産まれてきた月夜つきよ幸茶羽ささはは確かに私の子供で半妖だった。


 名前の候補は幾つかあったけれど、この二人ならば月夜と幸茶羽だ。


 私たちは傷ついた者を癒して壊れた物を治す力を持っている。太陽ではない、表舞台に立つこともできない。夜中に浮かぶ月のように絶望の中で皆を照らす存在だ。茶を入れたら茶柱が立つように、青い鳥が幸せを運ぶように、皆を幸せにする存在だ。


「一卵性の双子、二人の半妖です」


 そんな前例のない二人がこれからどのように成長していくのか。翔太は体が弱いそうだけれど、この二人は半妖だ。愛果と翔太とは違う道であることは間違いない。


「そ、そんな……」


 戸惑う気持ちはよくわかる。二人が進んでいく道はまだわからないけれど、手を繋いで歩いている様はよく見えた。

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