6月28日 結城千羽
「千羽様も、涙様も、おめでとうございます!」
「はい、ありがとうです。うれしいです。千羽、いっしょにお兄ちゃんがんばりましょう」
「うん! ぼく、お兄ちゃんがんばる!」
「千羽、涙くん。紅葉のことを頼むぞい」
パパがぼくを抱っこして、膝の上に乗せてくれる。涙くんは笑ってパパとぼくの近くに来て、襖の向こうをじっと見つめた。
さっきまで全然聞こえなかったけれど、赤ちゃんの鳴き声が聞こえてくる。あっち側に、ぼくの妹になった紅葉ちゃんがいた。
「ねぇパパ! 紅葉ちゃんに会いに行っていい?!」
「待て待て千羽。まだママが疲れているからな、もう少し待とう」
「えぇ〜! 早く会いたい〜!」
「千羽、兄ならもう少し待ちましょう」
涙くんはぼくの従兄だけど、ぼくのお兄ちゃんみたいな人だったからぼくよりもお兄ちゃんぽかった。
それがなんかちょっと嫌で、涙くんみたいに静かにしてみる。けれど、ずっとママと遊びたい気持ちを我慢して紅葉ちゃんを待っていたから、これ以上待つことはすごく難しかった。
「千秋様、千羽様、涙、中に」
襖が開いて、おばさんがぼくたちのことを呼んでくれる。すぐに出ていったぼくはおばさんが上げていた腕の下をくぐって、紅葉ちゃんと紅葉ちゃんを抱っこするママを抱き締めた。
「ママっ!」
「これ千羽! 朝羽、無事かのぅ?」
「うふふっ、大丈夫よ」
「ねぇママ、この子が紅葉ちゃん?!」
「えぇ。そして、あなたがお兄ちゃんよ」
「うん、わかってる! 初めまして、紅葉ちゃん!」
「ぼくも初めましてです、紅葉」
「うむ、我も初めましてじゃな。この子は……千羽よりもちっこいのぅ」
「えぇ。千羽は平均以上だったもの」
「ねぇ、紅葉ちゃん結希くんよりもちっちゃいね!」
ぼくには結希くんっていう従弟がいる。涙くんはぼくよりおっきくて、結希くんはぼくよりちっちゃくて、紅葉ちゃんはみんなの中で一番ちっちゃい。
「えぇそうよ。だから千羽、みんなで紅葉を守ってあげるの。あなたはお兄ちゃんだからできるわよね?」
「うん、できるよ!」
「ははっ。おっきくなったのぅ、千羽は」
「ぼくはおっきいよ!」
「うむ。平均以上だもんな」
「それは昔の話であって今はちゃんと平均よ? 千羽、おっきくならなくてもいいから……毎日健康でいてちょうだいね」
「……うむ。それが一番良い」
「やだ! ぼくはおっきいしおっきくなるよ!」
パパとママよりもおっきくなる。そうならなくちゃいけないってことを知っていた。




