4月22日 綿之瀬乙梅
来日した二人を駅前で出迎え、綿之瀬家が所有する養護施設へと連れていく。
車から下りたアラン・カートライトは、生後一年のステラ・カートライトを抱いて綿之瀬家の現頭首である私についてきた。
「例のものは持ってきましたね?」
「はい」
勉強してきたのだろう。流暢な日本語で返事をし、アランは私の弟でこの施設の施設長を任された五道に出逢う。
「初めまして、アラン。私が五道だ」
「初めまして、ゴドウ。彼女がステラです」
アランはステラの顔を五道に見せる。ステラの髪色はアランに似ていたが、ステラはアランの娘ではなくアランの妹の〝クローン人間〟だった。
私はアランからステラを受け取り、彼女を預かってくれる陰陽師へと連絡を取るように傍にいた親族へと合図を出す。
私の仕事はもうほとんど終わったと言っても過言ではなかった。現頭首としてこのやり取りを見ることが私の仕事であり、その間ステラを預かることも私の仕事だった。
「ゴドウ。これがダンカン家が開発したクローン人間の作成方法です」
「あぁ。ありがとう」
ダンカン家とは言うけれど、これを開発したのは私の叔父とその妻だと聞く。要は身内だ。カートライト家はダンカン家に居候しているだけで身内とは言えないけれど、クローン人間を作成することに協力したという点では共犯者かもしれない。
「確かに受け取ったよ。我々が新しいクローン人間を生み出すまで少し待たせることになるけれど、その間よろしく頼む」
「はい。よろしくお願いします」
事情を考慮してここで暮らすことになった彼は柔和に微笑み、私へと視線を移す。そして、私の腕の中にいるステラへと手を伸ばした。
「貴方!」
「落ち着きなさい」
警戒心の高い親族を窘め、綺麗な紺青色を見開くアランに「すみませんね」とだけ謝罪をする。
「私は《十八名家》の現頭首。一族中の人間が私のことを守るのです」
「なるほど。すみません、知らなくて」
「いいえ、知らなくて当然です。むしろ言ってやってください、過保護ですよと」
「かほごですよ? すみません、意味がわかりません」
あまりにも流暢だったから失念していた。彼は日本人でもなければ日本語を知り尽くしているわけでもない。
「おほほっ。そんなに謝らくても良くのですよ」
「なるほど。はい、わかりました」
「乙梅様が……笑った……?」
「明日は槍が降るかもしれないな」
私たちの周りにいる親族は、皆そう言って笑っていた。釣られてアランも笑っていた。




