7月14日 タマモ
生まれたという知らせをヤクモ姐さんから聞かされたから、みんなで揃って末森家へと駆けつけた。
末森家本家の長子になる子供たちは前々から双子だと言われており、産声を上げてみんなの前にお披露目されたのも、二人だった。
「はわわ〜! 可愛い! 可愛いのです! ですっ!」
双子の祖父にあたる陰陽師様の式神を務めているツクモがそんな声を上げる。確かに二人は可愛いけれど、そんな態度を軽々と見せるのは式神としてどうなのかと思う。
「いつかツクモがどちらかの式神になるんですねっ! 楽しみですっ!」
「ふふふっ。あっちのぬし様になってくれないのが残念でありんすなぁ」
ヤクモ姐さんが私の方へと視線を移した。その端正な顔に張りつけられている笑みは、二人の式神に私がなるということを指している笑みだった。
「…………」
私は、ツクモの主君の妹の式神だ。いや、だったと言った方が正しい。
数年前にあの方が亡くなったあの日からずっと、私は主君を持たない野良の式神だった。
「わかってるの? この二人の式神になるってことは、今の主君と別れるってことだって」
浮かれているツクモに冷水を浴びせるつもりで吐き出した。けれど、ツクモには毒が効かないらしい。
「はいっ! わかってますよ?」
なんでもなさそうな顔でそう吐かれた。ツクモにとって出逢いと別れというのはその程度のものなのだと思い知った。
「……そう」
いつかツクモの主君が死んだら、別れることの苦しみを嫌でも理解するだろうか。……いや、ツクモは既に何回も主君と別れている。私は前の主君との別れが初めてだったから、こんなにも苦しいと思うのだろう。
別れることに慣れたくはない。
けれど、また、出逢ってしまう。
ヤクモ姐さんの腕の中にいる双子の兄弟は、まだ陰陽師として覚醒していない。だから、主君だと言われても主君だとは思わない。だから、まだ、情が湧かない。だから、まだ、大丈夫。
「ヤクモ姐さん、早くご両親に返してあげて」
「タマモは冷酷でありんすなぁ」
くすくすと笑うヤクモ姐さんのことが好きではない。
へらへらと笑うツクモのことが、好きではない。
きっと、この二人のことも、好きになれない。そう思う。そう思う。そう思う。
「ヤクモ姐さん、ツクモも行きます! ですっ!」
二人をご両親に返す二人の後ろ姿を眺める。そんな二人のようにいつか主君を失った悲しみを忘れることができるのかもしれない。
けれど、それは──嫌だとそう思ってしまった。




