表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2005年
38/201

3月11日  三善京子

「えー、あたしが新しくこの家の養母になった三善京子みよしきょうこだ。よろしく」


 挨拶するが、誰からも歓迎されていないのがよくわかった。本当に厄介なものを引き受けてしまった、だが、厄介だから断れなかった。


 この家が半妖はんようの養護施設のままだったらまだ受け入れられたのかもしれないが、百妖ひゃくおう家という〝家〟になってしまった楽園の養母なんて誰にも務まらない。

 出産をする為に辞任した朝日あさひさんじゃないと無理だと思うくらい、百妖義姉妹の反応は冷たかった。


「別にいなくても大丈夫だ。早くその子を返してくれないか」


 まだ小学生のはずなのに、麻露ましろが発した言葉も凍えるくらいに冷たい。あたしは引き攣った笑みを浮かべたまま、腕の中で眠る赤ん坊の和夏わかなを麻露の腕の中に返した。


「わかってると思うけど、こっちもそういうわけにはいかないからね。あんたたちの世話はちゃんとさせてもらうよ」


「要らないって言っているだろう。私一人で充分だ」


「充分なわけないだろう」


「そうかもしれないけど、私は京子さんのこと認めないよ」


 麻露の後ろから抗議してくる依檻いおりも、依檻の後ろから睨んでくる歌七星かなせも、あたしのことを歓迎していない。

 ただ一人だけ、何も言わずに三つ子の面倒を見ている真璃絵まりえは何も言わなかった。


「認めなくてもいい。なんと言われようと、あたしはここで暮らして、あんたたちの親代わりを勤め上げるからね」


 それをあたし以外の陰陽師おんみょうじみんなが嫌がった。

 この子たちを守れるのはあたしだけだと思っているから、なんと言われようと独り立ちできるまではこの家にいようと決意した。


「絶対追い出す」


「辞めときな。死んでしま──」


 瞬間に冷気が百妖家のリビングを支配する。あたしはそれがなんなのかに一瞬気づけず、襲いかかる吹雪を受けて咄嗟に九字くじを切った。


「はぁっ、はぁっ……」


 ずっと自分の正面にいた麻露が、自らの体を抱き締める。寒さに震えているようだ。赤ん坊の和夏が目を覚まして大泣きするが、麻露には和夏を気にかける余裕がなかった。


「麻露! 和夏!」


 遅れてあたしは動き出す。麻露の腕から和夏を受け取り、彼女の容態を確認しながらたった今〝力〟に目覚めた麻露へと視線を戻した。


「……わ、私」


 怯えている。当たり前だ。この中で初めて力が発現したのが麻露なのだから。


「落ち着きな。だからあたしがいるんだよ」


 陰陽師の力で麻露の力を抑える。すると、全員が堰を切ったように泣き出した。


 全員を、あたしだけが抱き締めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ