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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2003年
37/201

7月14日  ハーパー・ヒル

 彼は目覚めたばかりの二人のことをわたしの妹と弟と言うだろうか。彼──イマニュエルはニコラとニコラスよりも先に造ったハリソンのことをわたしの弟だと言ったから。


「ニコラとニコラスはわたしの妹と弟じゃないわァ」


 先に言われる前にそう告げる。


「ハリソンもわたしの弟じゃないわァ」


 わたしに背中を見せているイマニュエルは、わたしが何を言っても動かなかった。

 隣に立っているハリソンも何も言わない。イマニュエルも口数が多い方ではないから、ニコラとニコラスが口数が多い子たちであれば少しは楽しい日々になるのだろうけれど。


 ニコラとニコラスは、わたしたちのことを呆然とした表情で眺めていた。目覚めたばかりだから言葉を知らないのは仕方がない。二人は、わたしたちのことさえ知らない。


「ニコラ、ニコラス、おはよう。わたしはハーパー・ヒルよォ。で、こっちはハリソン・ヒル」


 ニコラとニコラスは双子を元にしているらしく、わたしとハリソンと違ってよく似ている。そんな二人がヒルの姓を名乗ると、わたしとハリソンの似ていなさが際立ってしまうような気がした。


「あなたたちの名前は、ニコラ・ヒルとニコラス・ヒル──」


「違う」


 名前を教えようとした瞬間、イマニュエルが遮ってきた。何が違うと言うのだろう、わたしとハリソンには同じ姓を与えたのに。


「二人は、ニコラ・ベネットとニコラス・ベネットだ」


「え……」


 その姓は、イマニュエルの姓だった。わたしにもハリソンにも与えなかったその姓を、何故ニコラとニコラスに与えるのだろう。


「……イマニュエル、どうして」


「二人は私の子供だ」


 心から溢れてきたこの感情を、言葉にすることができなかった。


 わたしもハリソンもイマニュエルの手によって造られた人造人間だ。イマニュエルの子供と言われても受け入れる、過言ではない。


「ハリソンは、ハーパーの弟だ」


 また、イマニュエルはわたしにそう言った。わたしはハリソンの姉じゃないって、そう言って──イマニュエルの子供だって、そう言ってほしくて。


 けれど、イマニュエルはわたしとハリソンにベネットの姓を与えなかった。それが答えなのだと理解した。


「…………」


 本当に? わたしは本当にハリソンの姉なの? イマニュエルの子供じゃないのにわたしのことを造ってくれたの?


「……わかったわァ、イマニュエル」


 イマニュエルにとって、わたしとハリソンはどうでもいい人間ではないらしい。それは少しだけ嬉しかった。

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