表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2003年
36/201

5月2日   グロリア・カートライト

 森の中の深いところには恐ろしい魔女が住んでいる。だからわたしたちは手を取り合って、森の中を走っていた。


「ッ、きゃあ!?」


「ッ、グロリア!」


 驚いたアランは足を止め、わたしのことを心配する。枝で足を怪我したわたしは、痛くて痛くて涙を流した。


「ぐっ、グロリア?! 大丈夫か?!」


「うっ、うぅぅうぅ〜!」


「ごめんよグロリア! 俺がちゃんと見てなかったせいで……! 今すぐ血を止めるから!」


「いだいよアラン〜!」


 耐えられない痛みだった。駄々をこねてアランの手を引っ張り、協会に帰ろうと泣き叫ぶ。


「できないよグロリア。俺たちはできるってシスターたちに証明しないと、俺たちは捨てられる。口減らしのせいで殺されるなんてごめんだからね」


「でっ、でも……」


「グロリア。生き残るのは俺たちカートライト兄妹だ。今こそ力を合わせる時なんだよ」


「……わたしは、もう、死にたい」


 アランの気持ちは痛いくらいにわかっていた。けれどわたしは、もう限界だった。


「そんなこと……言わないでくれよ、グロリア」


 気づいたらアランも涙を流していた。マミーもダディもいないわたしたち。シスターに引き取られたわたしたち。たくさんの子供たちに囲まれて育ったわたしたち。誰かを犠牲にしないと生き残れなくなった、わたしたち。


「生きようよ。生きてくれよ、生きてたらきっと、いいことあるから……」


 それがアランの口癖だった。


「大丈夫〜? そこの人たち」


「ッ?!」


 視線を向けると、金髪の女の子がわたしたちのことを見つめていた。わたしよりも年上で、アランよりも年下に見える。そんな女の子がたった一人で魔女の住む森にいた。


「ごっ、ゴースト?!」


「えっ? ち、違うよ! わたしはクレア! クレア・ダンカン!」


「クレア……? 危ないよきみ、一人でこんな森にいたら!」


「危なくないよ。だってここがわたしの家だもん。あなたたち怪我してるんでしょ? だったらおいでよ!」


 笑顔でわたしたちに「おいで」と言うクレアは、本当にゴーストじゃないのかな。危ない人にも魔女にも見えなかったけれど、ついて行くのはなんとなく怖い。

 アランにしがみつくと、アランはわたしをぎゅってした。クレアはそんなわたしたちを見て、「いいなぁ」と言った。


「ねぇ、おいでよ! ここから村まで遠いでしょ? 手当してあげる!」


 そんなクレアの笑顔が好きだと思った。だからクレアについて行きたくなった。わたしたちは、クレアの手を取って歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ