5月2日 グロリア・カートライト
森の中の深いところには恐ろしい魔女が住んでいる。だからわたしたちは手を取り合って、森の中を走っていた。
「ッ、きゃあ!?」
「ッ、グロリア!」
驚いたアランは足を止め、わたしのことを心配する。枝で足を怪我したわたしは、痛くて痛くて涙を流した。
「ぐっ、グロリア?! 大丈夫か?!」
「うっ、うぅぅうぅ〜!」
「ごめんよグロリア! 俺がちゃんと見てなかったせいで……! 今すぐ血を止めるから!」
「いだいよアラン〜!」
耐えられない痛みだった。駄々をこねてアランの手を引っ張り、協会に帰ろうと泣き叫ぶ。
「できないよグロリア。俺たちはできるってシスターたちに証明しないと、俺たちは捨てられる。口減らしのせいで殺されるなんてごめんだからね」
「でっ、でも……」
「グロリア。生き残るのは俺たちカートライト兄妹だ。今こそ力を合わせる時なんだよ」
「……わたしは、もう、死にたい」
アランの気持ちは痛いくらいにわかっていた。けれどわたしは、もう限界だった。
「そんなこと……言わないでくれよ、グロリア」
気づいたらアランも涙を流していた。マミーもダディもいないわたしたち。シスターに引き取られたわたしたち。たくさんの子供たちに囲まれて育ったわたしたち。誰かを犠牲にしないと生き残れなくなった、わたしたち。
「生きようよ。生きてくれよ、生きてたらきっと、いいことあるから……」
それがアランの口癖だった。
「大丈夫〜? そこの人たち」
「ッ?!」
視線を向けると、金髪の女の子がわたしたちのことを見つめていた。わたしよりも年上で、アランよりも年下に見える。そんな女の子がたった一人で魔女の住む森にいた。
「ごっ、ゴースト?!」
「えっ? ち、違うよ! わたしはクレア! クレア・ダンカン!」
「クレア……? 危ないよきみ、一人でこんな森にいたら!」
「危なくないよ。だってここがわたしの家だもん。あなたたち怪我してるんでしょ? だったらおいでよ!」
笑顔でわたしたちに「おいで」と言うクレアは、本当にゴーストじゃないのかな。危ない人にも魔女にも見えなかったけれど、ついて行くのはなんとなく怖い。
アランにしがみつくと、アランはわたしをぎゅってした。クレアはそんなわたしたちを見て、「いいなぁ」と言った。
「ねぇ、おいでよ! ここから村まで遠いでしょ? 手当してあげる!」
そんなクレアの笑顔が好きだと思った。だからクレアについて行きたくなった。わたしたちは、クレアの手を取って歩き出した。




