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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2002年
35/201

8月1日   百妖仁

 綿之瀬鈴歌わたのせれいかと、妖目熾夏おうましいかと、首御千朱亜しゅうおんぜんしゅあが生まれて二年が経った。


 ただ泣くことしかできなかった赤子を終え、幼児となった三人を我が家で監視する為に、現頭首から──母親から引き離されることが《十八名家じゅうはちめいか》の定例会議で承認された。


『……え? またなの?』


 百妖ひゃくおう家の別荘に電話をかけると、養母として派遣していた朝日あさひが戸惑った声を上げた。


「そうだ。綿之瀬鈴歌と、妖目熾夏と、首御千朱亜。同じ年度に三人生まれて君は大変だと思うが、よろしく頼むよ」


『しかも急に三人だなんて……そんなことは言ってないわ、育てるのは構わないのよ。けど、お願いだから少しは子供たちのことも考えてよ──じん


「そんなこと言われてもね」


 半妖はんようを一つの家に集めて監視をするのが、我ら百妖家の宿命だ。半妖を一つ屋根の下で育てることは、半妖たちの絆を育むことに直結している。半妖たちの力の発現した時、それを抑えることができる化け物たちは多いに越したことはない。

 そんなことを言われても、俺にはどうすることもできない。


『ねぇ仁、提案があるんだけれど』


 初めて朝日がイエスではない言葉を吐いた。驚いて、陽陰おういん学園の生徒会をしていた頃の朝日がじゃじゃ馬娘だったことを思い出す。


『半妖として生まれた子供たちを一つの家に集めて育てることに異論はないわ。けれどね、私は、彼女たちを隔離しているようなこの環境が嫌いなのよ』


 そんなことを考えたことはなかった。確かに、百妖家の別荘は人里離れた山の中にある。何かあっても人の目に触れないように計算されて建てられたのだろう。

 朝日は相変わらずよくモノを見ている。そして、よくお節介をする。


『だから、〝家族〟にしましょう。貴方が彼女たちを養子として引き受けて、私が養母として彼女たちを育てるのよ』


 俺は思わず口角を上げ、一昨年彼女と結婚した雅臣まさおみに無性に会いたくなった。


『その三人の生まれた日は違うけれど、〝三つ子〟ということにしてあげましょう。ちょっと無理矢理だけれど、きっとその方がいいに決まっているわ。じゃあそういうことだから、事後処理はよろしくね』


 一方的に電話を切られる。彼女はやはり馬鹿なんじゃないだろうか。


 〝道具〟を、人間として扱うなんて。


 道具はいつか壊れる。俺たちの代で唯一の半妖だったよりが壊れていたように。

 そんな彼女たち現頭首はこの件をどう思うんだろう。俺は、万が一承認されたら去年生まれた俺の息子に大勢の家族ができるのだと思った。

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