表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2001年
33/201

2月11日  クレア・ダンカン

 目の前のベッドの上に眠る二人の赤ちゃんの正体を、わたしは知っている。

 普通の人間とほとんど同じに見えるその赤ちゃんは、わたしと、グランマの友人──ジル・シルヴェスターのクローン人間だった。


 わたしのクローンにはコーデリア・ダンカンというその子に相応しすぎる名前が、ジルのクローンにはティアナ・シルヴェスターという名前がつけられる。

 金色と銀色の美しい髪を持つ女の子たちは、まるで双子だったかのように同じ日に生まれてきた。クローンだけど、狙った日に産み落とされることはない。これは奇跡と言っても過言ではないってわたしのグランマが言っていた。


「クレア、いつまでそこにいるの?」


「マミー!」


 金色が美しいマミーの髪。わたしと同じ金の色。それは、わたしのクローンのコーデリアにも言えることだった。


「マミー、どう? コーデリア、わたしにそっくり?」


「えぇ、小さい頃のクレアにそっくり。とっても可愛いわ。並んだら姉妹みたい」


「姉妹? ちがうよマミー、コーデリアはわたしのクローン。マミーのこどもはわたしだけだよ」


「うふふ、当たり前じゃない。私の娘はクレアだけ、コーデリアは私の子じゃないわ」


 マミーがわたしのことを抱っこした。コーデリアのことは抱っこしなかった。


 マミーが当たり前だと言ってくれたから、わたしはめいっぱいマミーからの愛情を受け取る。マミーが愛してくれるのはわたしだけ。コーデリアには、マミーの愛は絶対あげない。


「それは困るよ。コーデリアとティアナは我が子同然のように接してくれ」


「ッ、イト……」


「彼女たちにも愛をあげないと。クローンと言えど人間だからね、愛をあげずに狂われたら意味がない」


「……一理あるわね。わかったわ、イト」


 グランパは、わたしにもマミーにもない真っ黒い髪を持っていた。顔の形もイギリス人じゃない。グランパはイトっていう珍しい名前で、日本人だった。


「息子にもそう言っておくように」


「あの子には先に伝えたわよ」


「セシル。さすが仕事が早いね」


「褒めるようなことではないわ。もっと凄いことをした時に褒めてちょうだいね」


 グランパとグランマは仲が良い。マミーとダディも仲が良い。

 ダンカン家は仲良し家族だ。けれど、わたしにとってコーデリアはダンカンの名を名乗っていても家族じゃない。


 コーデリア・ダンカンはダンカン家の道具。


 そう思っていないと、自分のクローン人間という異質な存在を受け入れることができなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ