2月11日 クレア・ダンカン
目の前のベッドの上に眠る二人の赤ちゃんの正体を、わたしは知っている。
普通の人間とほとんど同じに見えるその赤ちゃんは、わたしと、グランマの友人──ジル・シルヴェスターのクローン人間だった。
わたしのクローンにはコーデリア・ダンカンというその子に相応しすぎる名前が、ジルのクローンにはティアナ・シルヴェスターという名前がつけられる。
金色と銀色の美しい髪を持つ女の子たちは、まるで双子だったかのように同じ日に生まれてきた。クローンだけど、狙った日に産み落とされることはない。これは奇跡と言っても過言ではないってわたしのグランマが言っていた。
「クレア、いつまでそこにいるの?」
「マミー!」
金色が美しいマミーの髪。わたしと同じ金の色。それは、わたしのクローンのコーデリアにも言えることだった。
「マミー、どう? コーデリア、わたしにそっくり?」
「えぇ、小さい頃のクレアにそっくり。とっても可愛いわ。並んだら姉妹みたい」
「姉妹? ちがうよマミー、コーデリアはわたしのクローン。マミーのこどもはわたしだけだよ」
「うふふ、当たり前じゃない。私の娘はクレアだけ、コーデリアは私の子じゃないわ」
マミーがわたしのことを抱っこした。コーデリアのことは抱っこしなかった。
マミーが当たり前だと言ってくれたから、わたしはめいっぱいマミーからの愛情を受け取る。マミーが愛してくれるのはわたしだけ。コーデリアには、マミーの愛は絶対あげない。
「それは困るよ。コーデリアとティアナは我が子同然のように接してくれ」
「ッ、イト……」
「彼女たちにも愛をあげないと。クローンと言えど人間だからね、愛をあげずに狂われたら意味がない」
「……一理あるわね。わかったわ、イト」
グランパは、わたしにもマミーにもない真っ黒い髪を持っていた。顔の形もイギリス人じゃない。グランパはイトっていう珍しい名前で、日本人だった。
「息子にもそう言っておくように」
「あの子には先に伝えたわよ」
「セシル。さすが仕事が早いね」
「褒めるようなことではないわ。もっと凄いことをした時に褒めてちょうだいね」
グランパとグランマは仲が良い。マミーとダディも仲が良い。
ダンカン家は仲良し家族だ。けれど、わたしにとってコーデリアはダンカンの名を名乗っていても家族じゃない。
コーデリア・ダンカンはダンカン家の道具。
そう思っていないと、自分のクローン人間という異質な存在を受け入れることができなかった。




