12月25日 セオドリック・アレン
大切な人がいる。なんの役にも立たない自分なんかよりも、ずっと、ずっと。その人は、世界からも大切にされているから──俺の傍にいてほしくなかった。俺なんか放っておいて世界でもどこでも自分の好きなところに行ってほしかった。
「私も行くわ。貴方の傍にいる」
そう言ってほしくて俺はこうなったんじゃない。
「大丈夫、お母さん。彼はちょっと心が疲れちゃっただけなの。彼の傍にいさせて」
君が考えているほどに単純なことでもない。そう言うこともできなくて、俺は、君を巻き込んだ。こうなる前に君を遠ざけていれば良かったと後悔したくなかったのに。見捨ててほしかった、のに。
「……誰?」
村へと向かう道中で動いた茂みの中。
「きゃあぁあ?!」
飛び出してきた一匹の獣。
「セオドリック!」
俺を庇う為に覆い被さってきた君。
俺の目にはすべてがゆっくりと映って見えるのに、俺は、血を流して倒れた君を起こすこともできなかった。
俺はきっと、これから先何度でも悔いることになるだろう。
既に嫌というほど後悔している。君に出逢わなければ良かったと思う。
俺も殺されれば罰を受けたことになったかもしれないのに、獣は俺を殺さずに逃げた。月が沈み、日が昇り。一人で動くこともままらなかった俺の目の前に立ったのは、君だった。
「セオドリック……」
君は無事だった。生きていた。夢だと思ったが夢ではなかった、抱き締めてきた君の温もりは君が倒れる前と変わっていなかったから。
「……ッ」
もう二度と君のことを離したくない。一瞬でも君を失ったと絶望した俺だから、今の俺にとって君がどれほど大切でどれほど必要な人なのかを自覚してしまう。
「……えっと、その」
君が震える手を俺の体を離した。
「……私、多分、貴方の傍にいない方が……」
君が不安そうに瞳を揺らしている。そこに俺は映っていない。
「いてほしい」
映してほしかった。もう二度と後悔したくなかった。傍にいてほしくなったから、君の手首を掴む。
「でも、私」
見せられたのは、俺を庇った時にできた傷だった。それはもう塞がっており、噛み跡だけが残されている。
「どんな君でも愛してる」
君が俺の傍にいると言った理由がようやくわかった。君はこんな俺を愛してくれていたのだ。あの時君を突き放すことができたとしても、君はついて来ただろう。君は俺じゃなきゃ駄目で、俺も君じゃなきゃ駄目だから。
「……私も、愛してる」
涙を流した君を、今度は俺から抱き締めた。




