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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
1990年
23/201

1月1日   阿狐頼

 嫌いな色は、星のような銀の色。みんなに好かれている銀の色が、わたしは本当にだぁいきらい。


 先生はクラスメイトのことを〝お友達〟だと言うけれど、大人たちは周りの半妖はんようのことを〝仲間〟だと言うけれど、みんなは《十八名家じゅうはちめいか》が〝平等〟だと言うけれど──わたしは全部ウソだって知ってる。


 今この瞬間もみんなの中心にいる銀の色が──《十八名家》白院はくいん家次期頭首、白院・えぬ万緑ばんりょくのことが、わたしは死ぬほど大嫌いだった。吐き気がするくらいに大嫌いだった。


 平等だと謳っているのに、みんながあの人をトクベツ扱いする。

 半妖の総大将として生まれてきたから、あの人はわたしたちの誰よりも偉くて、誰よりも大切に守られているのだ。わたしはあの人のことを総大将だって認めてないのに。血があの人をそうさせている。


より、どうしたのですか?」


「……おかあさま」


 一年ぶりに会ったおかあさまは、優しい笑顔を浮かべながらわたしの頭を優しく撫でた。

 トクベツ扱いされている。なのに、トクベツだと感じない。


「ねぇ、わたしはトクベツなんでしょ?」


「えぇ、そうですよ」


 それは万緑がいるからだ。だって、万緑もトクベツ扱いされているから。トクベツになれるのは一人だけで、わたしがそのトクベツなんだから。だから、万緑がトクベツ扱いされているのはおかしい。万緑は、要らないよね。

 おかあさまと話していると、そんなわたしに気づいた万緑がこっちに向かって歩いてきた。万緑の匂い。視線を移すと万緑がわたしを見下ろしている。


「頼、何故端にいるの? 貴方も阿狐あぎつね家の次期頭首ならば、皆様に新年の挨拶をしないと」


「ごめんね、万緑さん。ちょっとだけ気持ち悪くなっちゃって」


 ウソじゃなかった。本当に、わたしのことを見下して命令までしてくる万緑のことが気持ち悪くてウザくて仕方がなかった。

 もちろん、万緑だけじゃない。乙梅おとめも、燐火りんかも、エリスも、そうも。みんながみんな気持ち悪くて仕方がない。それぞれが半妖としてトクベツ扱いされていて、その度に、蹴散らしたくなる。


「そうなの? 気づかなくてごめんなさい、先に家に帰ってる?」


「ううん、大丈夫。おかあさまとここにいるから……万緑さんはみんなのところにいて」


 万緑はおかあさまに挨拶をして去っていった。けれど、同じ屋根の下で暮らしているからまた万緑と顔を合わせてしまう。最悪だ。反吐が出る。


「大丈夫ですか? 頼」


「おかあさまと一緒にいたら平気」


「……そう。あまり無理はしないようにね」


「うん。おかあさま、大好き」


 おかあさまに抱きついた。まだそれが許される年齢だから、おかあさまに精一杯甘えた。


「わたくしも頼が好きですよ」


「うん」


「あなたが半妖の力を引き継いでくれて本当に良かった。三人目を産まなくて済んだのですからね……阿狐家の次期頭首として、阿狐家の未来を頼みますよ」


「……うん」


 わたしは笑った。おかあさまに託された阿狐家を、今よりももっと、どの家よりも、より良くする為に。

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