12月5日 綿之瀬イト
英国に優秀な科学者がいる。その噂を聞きつけた私たち兄弟は、セシル・ダンカンという名の女性が住む森の中の古城を訪れていた。
「いらっしゃい、ワタノセ」
見慣れない金色の髪が風に揺れる。年は私よりも一つ下の二十歳だと聞いていたが、英国の方は日本の女性よりも大人びて見えた。
「貴方がセシル・ダンカンさんですか?」
「えぇ、私がセシル。貴方たちはどっちがシキでどっちがイトなの?」
セシルさんに尋ねられて私は兄のシキを見上げる。兄さんは彼女に笑顔で応え、「私がシキで彼がイトです」と挨拶をした。
「わかったわ。初めましてシキとイト。貴方たちの訪れを歓迎します」
「ありがとうございます、セシルさん」
「そんなに畏まらなくてもいいわ。気軽にセシルって呼んでちょうだい」
「わかった、セシル。今日はよろしく」
セシルと兄さんが握手を交わす。セシルはその手で私にも握手を求め、私もセシルと握手を交わす。
「よろしく、セシル」
「えぇ。貴方もね、イト。入って、研究に関するもの以外はほとんどないけれど」
「構わないよ。私たちは三度の飯より研究が好きだからね」
「知ってるわ。じゃないと貴方たちを受け入れないもの」
中へと進むセシルの後を追いかけた。ここの古城は、セシル一人が住むには大きすぎる。なのに掃除が行き届いており、それが逆に不気味でもあった。
「セシルはここで一人で暮らしているんだろう?」
「あら、違うわよ。科学者が私一人ってこと。部外者はいるけど、その部外者も一人だけだから。ねぇ? ジル」
ジル?
視線を移すと、ジルと呼ばれた女性が階段の手摺の上に座っていた。
今までまったく気配を感じさせなかった彼女は、恥ずかしそうに俯いて飛び下りる。
「もう、セシル! どうして私の名前を呼ぶの?」
「貴方が私の家族だからよ。シキとイトが仲良し兄弟なら、私はジルと仲良し姉妹ですってアピールしないと」
「もう……。私はずっと隠れていようと思ったのに」
「セシル、君に兄弟はいないって聞いていたけど?」
「彼女はジル。去年出逢った私の魂の双子なのよ」
「魂の……双子?」
「わからないならそれでいいわ。ちなみに、彼女は魔女なのよ」
「魔女?!」
何を言っているのか一瞬理解できなかった。魔女なんてこの世に存在しているわけがない。
なのに彼女は、自分の身を隠す魔法を本当に使っていた。
「セシル!」
「いいじゃない。彼らは私たちの同志になる人たちなんだから」
私は、この目で彼女の魔法を目撃した。




