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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2023年
195/201

2月18日  小白鳥涼凪

 鬼を倒したのは、私たち半妖はんようの娘の半妖たち。十四人の半妖がいて、六年前の百鬼夜行で大勢死んで、七人が生き残って、その内の六人が鬼退治に出てしまったから──私は一人だけ生き残るという最悪の事態も想定していたのに。

 万緑ばんりょくさんも、燐火りんかさんも、乙梅おとめさんも、そうさんも、瑠璃るりさんも、茉莉花まりかもまだ生きている。娘たちは全員生きている。


 それだけでも充分過ぎるほどの奇跡なのに、枯れてしまった力がまた溢れてきたから涙が溢れた。


 私たち半妖は歳を重ねれば重ねるほどに半妖の力が衰えて、いつか人間と変わらない存在になる。

 ただ、小人の半妖は例外だということを私はずっとみんなに隠していた。小白鳥こしらとり家の秘密だから隠すことが当然だと思っていた。


 私たち小人は、土地神様や精霊がいる限りどれほど歳を重ねても力を使うことができる。だから、六年前の百鬼夜行で土地神様の力が衰えてこの一年の戦いで精霊の力まで衰えた今、私と娘の心春こはるは小白鳥家千年の歴史の中で初めて力を使うことができない小人になっていた。

 もう二度と力を使うことができないと思っていたのに力が溢れてきたから──土地神様が生き返ったことを他のどの半妖よりも実感していて。泣かずにはいられなかった。


 鬼を倒すことに貢献して、妖怪の瘴気を完全に吸い込んで土地神様を蘇られた英雄の陰陽師おんみょうじ結希ゆうきと《伝説の巫女》の明日菜あすなも泣いていた。

 二人の親友だという風丸かぜまるが力を失くした土地神様だったから──土地神様が生き返ったということは風丸の死を意味していたから、娘たちがそんな二人を囲んで、励まして、共に悲しんでいた。


 その輪の中に入る私ではない。私には、私の仲間がいる。


 言霊を使って空を走った私は、町役場の傍の図書館の屋上に下りる。そこに、幼い頃からずっと共に暮らしていた──今思えば家族よりも長い時を共に過ごした家族同然の仲間たちがいた。


涼凪すずな


 涼凪様でも涼凪さんでもなく涼凪と呼び捨てにしてくれる唯一と言っても過言ではない仲間たち。


「万緑さん!」


 多分全員怪我をしていたのだろうけど、月夜つきよ幸茶羽ささはのおかげなのか傷はないように見えた。


「これは……一体どういう状況なのですか」


「土地神様が生き返ったんです!」


 証拠と言えるのかわからないけれど、陽陰おういん町の桜がすべて咲いていた。妖怪から瘴気を吸い込むという桜を土地神様が贈ってくれた。これはすべて奇跡ではなくて、彼らの──次世代たちが戦ってもぎ取ってくれた未来だった。

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