12月31日 百妖仁壱
明日、百妖家に《十八名家》の重鎮たちが来る。
我が家の庭に建っている家屋で数時間後に行われるのは新年会で、今まで新年会に来なかった百妖の姓を名乗る半妖たちが出ることを知っている俺は、布団の中に入ってもなかなか眠ることができなかった。
俺はずっと、彼女たちのことが許せなかったから。
半妖としてこの世界に産まれてきたことに関してどうこう言うつもりはない。誰だって産まれてくる家は選べない。俺がうっかり百妖家の本家の嫡子として産まれてきてしまったように、彼女たちの血を憎んでも彼女たち自身を憎むことは理不尽なことだとわかっていたから。彼女たちが百妖の姓を名乗ることも、それが彼女たちの意思ではなく彼女たちの養母を務めていた者の意思だと聞かされていたから。
──ただ、彼女たちが二十歳になって百妖家から出ていき、《十八名家》の現頭首になっていないならば話は別だった。
それは絶対に理不尽じゃない。彼女たちの意思でそうしているんだから、俺は絶対に怒っていい。
百妖の姓を名乗られて、彼女たちが百妖家の人間だと思われている時点で、俺はかなりの迷惑を被っているのだ。彼女たちの中に俺よりも年上の人間がいるせいで、俺の学生時代はずっと彼女たちの親族としてあることないこと言われて続けていたのだ。怨嗟することは多々あっても、感謝することは一つもなかった。
二十歳を過ぎて各家の現頭首にならなければならない彼女たちがその責任から逃げていることに対する俺たちへの怨嗟も憎い。
彼女たちを返せ、彼女たちの意思で百妖家に残っているならば説得して引きずり出してこい、百妖家の人間がそうしないのは無責任だ──俺はずっとそう言われている父様を見てきて、今は俺がそう言われる立場になってしまったから、その憎しみは増えていく一方だった。だから、俺自身が壊れる前に彼女たちに会いに行った。
無駄だということはわかっていた。だが、彼女たちは各家に戻って現頭首になってくれた。
俺はずっと、彼女たちのことを許せないと思っていたが──自ら近づいて彼女たちに触れたことによりわかったことがいくつかある。彼女たちは俺なんかよりも戦っているのだ。誰よりも。その命を懸けて。
父様は多分、そんな彼女たちを知っていたから彼女たちに触れずに好きにさせていたのだろう。ならば、自分のことしか考えていなかった自分が恥ずかしい。もう、彼女たちを許せないと思う気持ちはなくなっていた。