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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2022年
176/201

7月13日  綿之瀬風

「言っとくけど、僕に時間なんてないからね。長くて二時間だ、それを越すようだったら速攻で帰るよ」


 僕が釘を刺した相手は、分家の養女のアリアといぬいだった。この間の戦いの礼──自分たち《カラス隊》の代わりに結希ゆうきに力を貸したことと、日頃から妖怪や半妖はんように対する研究をしていることへの礼らしい。


 二人が僕を連れてきたのは、駅前にあるデパートだった。


 僕は《十八名家じゅうはちめいか》の本家の人間だから、駅前どころかデパートにも来たことがない。だが、僕と違って自由に生きてきた二人にとっては馴染みのある場所のようだ。


「ふうふうはどういう服好き?」


「は? 服?」


「どっからどう見てもサイズ合ってないだろ。通販で適当に買ってんのか誰かに目測で買ってもらってんのかのどっちかか?」


「……通販で適当にだが。いいだろう別に、上から白衣を着るんだから」


 そして、その白衣も気がついたら汚れてしまう。

 服に興味関心を持つことよりも先にしなければならないことがあったのだが、無関心であったことを二人に突っ込まれて初めて恥じた。


「何がモチベになるのかは人それぞれだと思うけど、ふうふう綺麗なんだからたまにはたくさんオシャレしようよ!」


「お前は本家なんだ。〝そういう場〟に行く時にだっせぇ格好されたら困るからな」


 アリアも乾もお洒落を好むようには見えないが、《カラス隊》の隊服を脱いでいる今でもそれなりに綺麗にしているような気がする。……二人は、僕よりも身嗜みに気を遣っているようだった。


 僕は、産まれた時から綿之瀬わたのせ家の本家一人娘だったから──。だが、乾は産まれた時から相豆院そうまいん家の分家一人娘で、アリアは〝クローン人間〟として産まれてきた。

 研究者として生きる道を決められていた僕と君たちとは違う、そう断言することはできなかった。


 物心ついた時から今日までずっと研究以外に目を向けて来なかったこと。それを、《グレン隊》やら《カラス隊》やらに所属して自分のやりたいことを自由にやっている二人に痛いくらいに思い知らされた。

 この道に進んだことを後悔することはない。綿之瀬家がやったことの罪は僕が償う。二人は被害者だから罪は償わなくていい、これは僕一人で背負うもの。二人の頼みならば聞く、結希の手助けなんて造作もないから。


 それでも、二人はこうして僕のことを気にかけてくれる。


 血が繋がっていないからと最初は二人のこと拒みもしたが──いてくれて良かったと泣くことになるとは思わなかった。

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