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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2022年
171/201

4月7日   雪之原白雪

《これは、遠い日の〝約束〟のお話です》


 その一文を視界に入れた瞬間に目を近づける。これこそが私が町役場でずっと探し求めていた文献だった。


陰陽師おんみょうじは、帝の命により奇妙な現象の原因として人々から忌み嫌われていた妖怪を国の端から順に駆逐していました。生き残った妖怪が陰陽師から逃れる為にとある町に集まったので、陰陽師は、その町に妖怪を閉じ込めて彼らを皆殺しにする為に巨大な結界を張りました。

 しかし、閉じ込めることに成功しても皆殺しにすることはできませんでした。


 その要因は二つありました。


 妖怪がその町に逃げた理由は、その町が彼らにとってとても生きやすい環境だったからでした。なので、その町に辿り着いた途端に姿を隠してしまったのです。

 もう一つは、とある陰陽師がとある妖怪を愛してしまったからでした。後に彼らの間には子供が誕生し、この世界に半妖バケモノが生まれてしまいました。


 町は数年経っても平和でした。ですがある日、力を蓄えた妖怪が百鬼夜行を引き起こして陰陽師のほとんどを殺してしまいました。


 生き残った陰陽師は絶望しました。そんな時に現れたのが、あの半妖の少女でした。

 彼女が陰陽師に力を貸した理由は、陰陽師が彼女の存在を許さなかったように妖怪も彼女の存在を許さなかったからでした。


 彼女が陰陽師と妖怪の力を駆使して戦ったので、陰陽師は百鬼夜行に打ち勝つことができました。

 彼女に感謝した陰陽師は、半分妖怪の血を引く彼女を殺すことはしませんでした。その代わり、陰陽師と彼女は〝約束〟を交わしました。


『この地に再び百鬼夜行が引き起こされる時。その時は必ず、互いが互いの力になる』


 幸運なことに、それ以来町に百鬼夜行が起こることはありませんでした。陰陽師と半妖は約束を忘れてしまいましたが、妖怪との戦いは、今でも続いているのです》


 文字はそこで終わっていた。私は長く息を吐き、千年も前の出来事に対して何を思えばいいのかわからなくて頭を抱える。

 知りたかったことを知ることはできた。千年前の百鬼夜行を知りたいと思ったのは、私の妹が半妖はんようの最年長者として命を賭して戦っているからだ。この文献に書かれている通り、妖怪との戦いは今でも続いている。だから──彼女の力に少しでもなりたかったのに。何も得ることができなかった。


《しかし、千年後に再び百鬼夜行が起こりました》


 代わりに追記する。母様が亡くなってしまった六年前の百鬼夜行を千年後に伝える為に。

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