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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2021年
170/201

12月24日 相豆院翔太

 サンタさんなんて信じない。毎年プレゼントをくれるけれど、ボクが本当に欲しいと思っているものは絶対にくれない酷い人だから。


「ッ!」


 痛むのは全身だった。何も考えられない、考えたくない。ボクは昔から色んなところが悪かったけれど、今日はいつも以上に体の全部が痛くて涙が出てくる。


翔太しょうた様!」


 妖目おうま家の医者が周りにいる中、遠くの方から分家の人間の声が聞こえてきた。その人は、母さんでも、父さんでも、鬼一郎きいちろうでもない──ボクにとってはどうでもいい相豆院そうまいん家の中の誰かだった。


 どれほど欲しいと願っても、ボクの本当の家族は絶対に傍にいてくれない。


 悪いことをしていたつもりはなかった。いい子でいたと思うけれど、病気ばかりしてみんなに迷惑をかけていることが悪い子の証拠だって言われたら──ボクはもう何も言えない。

 どれだけいい子で大人しくしていても、病気になってしまうなら。ボクはもういい子じゃなくて悪い子になりたい。悪い子でいたら、父さんや鬼一郎がボクを叱る為に傍に……。ううん、それでも絶対に来てくれない。どれほどボクの体が悪くなっても、父さんも鬼一郎もほとんど来てくれなかったから。


 仕方のないことだって思いたくない。だってボクは、父さんと鬼一郎の家族だから。

 ボクは《十八名家じゅうはちめいか》相豆院家、現頭首の弟だ。鬼一郎が現頭首としての仕事や《風神ふうじん組》の仕事で忙しいことも、相豆院家や《風神組》に居場所がない父さんがボクのことを気にかけることがないことも、わかっているけれど──時々病院で見かける子供たちと見舞い客であるその家族を見ていると羨ましくて死にたくなる。


 生きている意味なんてない。ボクは生まれてきて良かったのかな。


 ボクが病院で独りぼっちでいるように、鬼一郎も父さんと一緒にいることはほとんどないらしいから鬼一郎も家や組では独りぼっちだった。

 ボクがもっともっと強かったら、鬼一郎を独りにはさせなかったしボクも独りにはならなかったのかな。ボクはずっと、産まれた時から鬼一郎の足を引っ張っていたと思う。


 その足を絶対に引っ張りたくない。現頭首は大変だって思うから。亡くなった母さんも鬼一郎も大変そうな姿をボクには絶対に見せないけれど、大変じゃないわけがないから現頭首の兄弟が現頭首を支える為に傍にいることを知っている。


 ボクは鬼一郎を独りにしたくない。これ以上の孤独は要らない。


 サンタさん。お願いだから、ボクの欲しいものを間違えないで。

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