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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2021年
167/201

8月4日   シトリー

「人間と亜人が手を取り合って生きていけるとは言わないよ」


 人間と亜人の戦争を起こす為に動いていたシトリー様にそう言ったのは、イギリスで最も強い祓魔師ふつましを師に持ちながらも未だに最弱から抜け出せていない子供の祓魔師だった。


「思ってもいないから。けど──人間と亜人が戦争しないまま何年も何十年も生きていくことはできる。これは綺麗事じゃない」


 何もできないくせに。そう思ってはいるが、最弱が最強の悪魔のシトリー様に何か言ってるのはおもしれぇから放っておく。


『綺麗事だぜぇ! シトリー様が何もしなくても、戦争は──』


「始まらない。互いが互いの命を思い合っていれば」


 放っておいたのが間違いだった。そいつのその目はあまりにも真っ直ぐで、澄んでいる──シトリー様を一切恐れていない目だったから。

 どんな奴でも上位悪魔を見たら尻尾を巻いて逃げ出していく。シトリー様はその姿を見るのが大好きだ。だから、最弱の祓魔師がシトリー様に逆らったことを一瞬でも面白がったら駄目だったのだ。


 その、恐れを知らない強烈な光は悪魔が最も恐れる光だから。


『────』


 思わず身を引く。


「だから、消えて」


 こいつは何者だ。誰だこいつを最弱の祓魔師だと言った奴は。こいつは、イギリスだけではなく──いつかきっと世界で最も強い祓魔師となるだろう。そんな予感がする。そんな奴に負けるのは仕方がない、そう、仕方がない。


「ご主人、様……」


 マクシミリアン。マクシーン。シトリー様たちは、とんでもねぇ祓魔師を目覚めさせてしまったのかもしれねぇ。

 からからと笑いながら地獄へと帰る。本当に警戒しなければならない相手はイギリス最強の祓魔師でも世界唯一の魔女でもなかった。イギリス最弱の祓魔師だった。


『はぁ〜あぁ。そっかそっかぁ、なるほどなぁ』


 腕を回して寝床に帰る。そうしてじっくりと考える。


『うん。おもしれぇ!』


 人間と亜人を戦わせなくても、シトリー様がおもしれぇと思うことはこの世界にごまんと存在している。戦争が起きなかったのは残念だが、これは結構な収穫だ。シトリー様は負けちまったが、そういう意味では負けてねぇ。


『あの男が女だったらなぁ〜。召喚されてやってもいいんだけどなぁ〜』


 女みたいな見た目をしていたが、あの祓魔師は男だった。それが残念で仕方ないが、それはそれで別の面白さがある。

 あの祓魔師が師のように女だったら。シトリー様と契約して魔女になったあいつも見てみたかった。

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