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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2021年
164/201

8月1日   猫鷺真

『アイラ! まこ! 忘れ物ない?! 荷物ちゃんと持ってる?! 大丈夫?!』


『お前よりかは大丈夫だろ』


 そう言ったアリアお姉さんと朔那さくなお兄さんに見送られて、僕とアイラお姉さんはイギリスに来た。

 陽陰おういん町の外に出て、陽陰町じゃない世界が見たい。そう思うようになったのは、僕が《コネコ隊》のリーダーになってから。同じ人工半妖はんようのアリアお姉さんといぬいお姉さんが外の世界を知っているからだった。


 そんな話をアイラお姉さんにしたら、アイラお姉さんがイギリスに行きたいと言った。イギリスはアリアお姉さんの出身地で、アイラお姉さんの家族がいるから一度だけ行ってみたかったらしい。

 僕も、二人と縁があるその世界を見てみたかった。だからアイラお姉さんに賛成して──辿り着いたイギリスは、当たり前だけど陽陰町と違う匂いがした。


 行き交う人たちも陽陰町にはいない人たちばかりで、嫌でも違う世界に来たのだと理解する。


「来たか」


 アイラお姉さんは、誰に会えばいいのかはロンドンの空港に着いたらわかると言われたらしい。僕たちの目の前に立っていたのは、《カラス隊》とはまた違った軍服を着た綺麗なお姉さんだった。


「私はティアナ。来い、案内してやる」


 ティアナお姉さんは、上手な日本語でそう声をかけてくれた。

 ティアナお姉さんはイギリスでも珍しい服装をしているけれど、僕とアイラお姉さんはティアナお姉さんについて行く。ティアナお姉さんを信じることができたのは珍しい服装を陽陰町で見慣れたからだろうか。他の人とは違うことが当たり前だから、アイラお姉さんの家族の仲間だと言われても違和感がなかったから──。そういうところは、違う世界だとは思わなかった。


 ロンドンの空港から少し離れた人気のない場所で知ったのは、ティアナお姉さんが魔女ということで。軍帽の上から被っている魔女の帽子はそういうことだったのかと納得する。


「お前たちは小さいからな。多分、一緒に乗れるだろ」


 そう言ってティアナお姉さんが何もないところから出したのは木でできた箒で、僕とアイラお姉さんの想像通りそれに跨って空を飛んだ。


「うわぁ……!」


「すごい……!」


 言葉が漏れる。不思議なことは陽陰町でたくさん見てきたけれど、魔女はまだ物語の中の存在だった。これは陽陰町にいたままだったら一生見ることがなかった光景だろう。


 これからそれが当たり前の世界にたくさん触れることができるんだ。そう思ったら久しぶりにわくわくした。

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