4月2日 鴉貴翡翠
「…………助けてくれ」
震えた声でそう言ったのは、私たち《コネコ隊》をここまで導いてくれた乾さんだった。
乾さんがそう言った相手は、《カラス隊》のアリアさんと朔那さん。私たちは乾さんならばなんでもできると思っていたし、弱音を吐くような状態でないとも思っていた。けれど、サトリの人工半妖の乾さんから見た私たちはそうではなかったらしい。
私たち《コネコ隊》は乾さん一人の力でかつての《グレン隊》や《カラス隊》に負けないくらいに大きな隊になった。
そんな乾さんが《コネコ隊》はもう無理だと言うなら本当に無理なのだろう。誰かの助けがないと成り立たないのだろう。
子供であることに不満を持っていたわけではないけれど、子供であることが嫌になった。人工半妖よりも大人になりたかった。
「真くん」
輝司お兄様が真に声をかける。
私はお母様がエリス様とエリカ様の従妹だったから、輝司お兄様のことは小さい頃から知っていた。百鬼夜行が起きるまで私も鴉貴家の人間として生きていたから、輝司お兄様の性格も知っていると思っていた。
「《コネコ隊》の件ですが」
辞めろ、と言うのだろう。昔、輝司お兄様が人工半妖の乾さんやアリアさんのことをバケモノと呼んだことを聞いたことがあるから。きっと、真や星乃のこともそう思っていて──私たちが《グレン隊》と同じことをしているから、目障りだって思っていて、それで。
「我々《カラス隊》と協力関係を結びませんか?」
輝司お兄様は私たちを否定しなかった。どうして、と思って視線を移すと真剣そうな輝司お兄様の表情が視界に入る。
輝司お兄様は、本気で私たち《コネコ隊》の力を必要としているようだった。輝司お兄様と最後に会ったのは四年前だ。その間に乾さんやアリアさんが《カラス隊》に入隊したから、輝司お兄様の中で何かが変わったらしい。
「え」
真も《カラス隊》の輝司お兄様にそう言われると思っていなかったみたいで私を見た。大丈夫、信じていい。そう思ったから強く頷く。
「どうして、ですか?」
「《グレン隊》も、この町にとっては必要な存在だったということですね。《コネコ隊》には貴方と星乃くんもいますから、ゆくゆくは《カラス隊》にとも思っていますよ」
輝司お兄様は自分の欲を隠さなかった。そういうところは私が知っている輝司お兄様だった。
「共にこの町の治安を守りましょう」
居場所が欲しい。そんな願いを叶えてくれた《コネコ隊》は私の宝物だった。