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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2019年
156/201

8月1日   ニコラ・ベネット

『君は他のニコラとニコラスとは違う』


 イマニュエルがわたしにそう言った。


『君は亜人を殺す為だけに造ったニコラだ』


 イマニュエルがわたしにそう言った。


 わたしの中にあるたくさんのデータはイマニュエルがくれたもの。イマニュエルが願ったこと。


 イマニュエルの願いは叶えなければならない。そう思っていたけれど、わたしが最初に出会ったわたしたち以外の〝誰か〟は人間ではなかった。けれど──亜人でもなかった。


「こ、こんにち……」


 この人は人間? それとも亜人? どちらなのかわからない。わたしを見て警戒したその人の気持ちもわからなかった。


 こういう時はどうすればいいのだろう。わからなくてじっとその人を見つめる。


「こんにちは」


 その人はそう声をかけてくれたけれど、データに存在していない人とどういう風に会話をすればいいのかわからなくてわたしの思考は止まっていた。


 わたしは、データに存在していなければ何もすることができないらしい。


 それでも何かを言わなければならないことはわかっていたから、「…………データが存在しません」とだけ答えた。

 わたしは何も間違っていない。何回確認しても目の前にいるその人の情報を取得することができないから──。


 吸血鬼。人狼。そして魔女。その人の仲間には亜人がいて、ニコラスが「それでも殺せ!」と言った理由を理解する。


「ニコラを一人にすることはできないよ」


 そう言ったニコラスは死んだけれど、わたしは生きていて。亜人を殺せと言われていたのに殺していなくて。


「ニコラはずっとたくさんの人に囲まれて生きてきて、ある日突然一人ぼっちになって、これからずっとこのお城で──この町のたった一人の人造人間として生きるならば、ニコラのお家を見つけてあげたい」


 わたしはなんの為に造られたのだろうって。そう思って。


「今のニコラはまだわからないかもしれないけど、ニコラの家族を奪ったのはぼくたちでもあるから……一緒に生き続けることは難しいと思う。けど、一緒に旅をしていたら、ニコラのお家を見つけることはできると思う」


 目の前にいる人間に生きろと言われているようで、止まっていた思考を動かそうとする。


「ニコラ。ぼくたちに、きみのお家を探すお手伝いをさせてほしい」


 わたしが造られた理由はわかっていた。けれどイマニュエルも死んだから、わたしが亜人を殺すことに意味はない。

 この人と一緒にいたら、わたしが造られた新しい理由が見つかるのだろうか。

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