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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2019年
154/201

7月22日  ハリソン・ヒル

 殺せと言われた。だから殺した。そうしたら、命じた本人であるイマニュエルよりもハーパーが喜んだ。


 どうしてハーパーが喜ぶのだろう。どうしてハーパーが喜ぶと俺は嬉しいのだろう。


 ハーパーにもっと喜んでほしくて、エルフとダークエルフの遺体を渡し続けた。

 ハーパーはエルフとダークエルフの遺体を使って人間に亜人の恐ろしさを説き続けた。人間は亜人を知り、亜人に怯え、ハーパーを称えた。


 ハーパーが認められるともっと嬉しい。俺は認められなくてもいいから。ハーパーが亜人を倒していると思われてもいいから。俺にたくさんのことを教えてくれる母のようなハーパーに光が降り注いでほしかった。


 俺はハーパーの為に。ハーパーはイマニュエルの為にこんなことをやっている。

 イマニュエルがどうして亜人を殺そうと思ったのかはわからない。考えることは俺の仕事じゃなくてハーパーの仕事だから、俺は今日もハーパーに遺体を渡す為に森の中に入る。


 エルフもダークエルフも群れる亜人だ。だから、群れを一つ見つけたら多くの亜人の遺体が手に入る。遺体が多ければ多いほどに喜ぶハーパーの役に立てることが俺が造られた意味だと思うから、俺は、何があっても全員殺す。


「ハリソン避けろ!」


 叫んだのはニコラスだった。ニコラスの気配がする、右に一歩移動するとニコラスの体が飛んできた。


「命中です」


 ニコラもいる。五人のニコラと六人のニコラスとで三十人以上もいるエルフの群れと戦うことは難しいことではない。

 反撃されても、傷を負っても、俺達には弱点や致命傷がないから何も効かない。人数では負けても有利なのは俺たちだから、逃がさないことを目標にすれば全員殺せる。



「ハルラス逃げろ!」



 そんなことは認めない。俺は一番若いハルラスと呼ばれた男のエルフを追いかける。

 逃げろと言われて素直に逃げる弱いエルフだ。恐れは最初からなかったが、だからこそ油断していた。


「──ッ」


 右足を何かが射抜く。弓を構えていたハルラスは俺が動かなくなったことを確認してすぐに逃げる。


「…………」


 俺は、すぐに動けた。この矢には毒が塗られていたらしいが、もう効いていない。ハルラスを追いかけるが、これ以上追うとニコラとニコラスと離れてしまう。

 戻ると、逃げ切れなかったエルフの遺体をニコラとニコラスが担いでいた。強いダークエルフは時々逃がすがエルフを逃したのは初めてだ。


 造られた意味を見失いたくなくて。俺は森の中で吠えた。

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