1月2日 マクシーン
ここは地獄で一番楽しいところ。ここは地獄で一番素敵なところ。
『い〜こと思いついた!』
ご主人様が指を鳴らす。だから、わたしやマクシミリアン、他にもたくさんの下位悪魔たちがご主人様の元へと集う。
『おまえらぁ! 毎日毎日つまんねぇよなぁ!』
ご主人様はいつも〝面白いこと〟を考えている。だから悪魔の中でのご主人様の序列は高い。そんなご主人様だから、仕えている悪魔もとても多い。その中でご主人様に気に入られるのはごく一部。最も〝面白く〟て最も〝人間〟のような悪魔をご主人様は愛している。
悪魔は努力が嫌いだからそうなる為の努力はしない。けれど、わたしは面白いことが好きだから。悪魔らしくないことは〝面白い〟から、ご主人様に愛されるように努力する。
『おもしれぇことしてぇよなぁ!』
マクシミリアンと一緒に雄叫びを上げた。こうしているだけでも面白いけれど、ご主人様が今考えていることの方がもっともっと面白い。
「クフフフフッ! ご主人様ぁ! 何するのぉ!」
待ちきれなくて尋ねる悪魔もいた。騒ぐ悪魔を片腕一つで黙らせたご主人様は、舌で唇を舐めて告げる。
『──人間と亜人の戦争さ』
体中の細胞という細胞が震えた。人間と人間の戦争があったのはつい最近のことだが、今でも小さな戦争は行われている。
けれど、ご主人様の言う戦争はそれではない。もっともっと大きな──あの時の規模の戦争のことを差している。
もう二度と戦争は起こらないと思っていた。あったとしても、それは何百年も後の話だと思っていた。
それが、亜人相手ならば今すぐに再現することができる。ご主人様はそう言ったのだ。
ご主人様の住処が歓声で震えた。喜びすぎて死者が出るかと思うほどだ。
『これからは人間だけじゃねぇ。亜人も唆していく! できねぇって言う奴はいねぇよなぁ!』
「クママママッ! できる! できるぅ! やってやるぅ!」
『だよなぁ! だからマクシミリアン、マクシーン! まずはおまえらがやってくれ!』
「──っ」
わたしだって、喜びすぎて死にそう。だって、ご主人様に気に入られてるんだから。
「クカカカカッ! やる! やる! やる!」
「クヒヒヒヒッ! 素敵だよぉ! 嬉しいよぉ! 弾けちゃいそう!」
あぁ、ご主人様。わたしの大好きな人。
『おまえらも! シトリー様の名の下に暴れ狂え!』
あなたと狂えたらわたしは幸せ。世界がもっと面白くなったら、もっともっと幸せになる。
──だから、人間。亜人。わたしたちを楽しませて。