4月18日 首御千千貴
斎藤が施設に来てから、真と星乃がいつも以上に楽しそうに笑っている。真と星乃は一番上だから、斎藤みたいなお兄ちゃんが欲しかったのかもしれない。
「斎藤お兄さん! これがさっき話したゲームです!」
「え……お、おう」
「え、どうかしましたか?」
「は? い、いやなんでもねぇよ」
斎藤は、真が持ってるゲームを見て急に喋らなくなった。よくわからないけどやりたくないみたいだ。
「真! 斎藤がやらないならぼくがやる!」
「は?! やらねぇなんて言ってねぇぞ!」
「やる! やぁる!」
「ちょっ! 千貴くんにはまだ早いからダメだよ!」
真は今日もぼくを仲間外れにした。真と星乃ばっかりずるい、斎藤もずるい。
「あぁァ〜〜!」
「うるさいよ千貴。少しは翡翠を見習いな」
「いやぁア〜!」
「ったく。なんで同い年なのにこうも違うかな」
奏雨に抱っこされて食堂から引きずり出される。
「うぅ〜! 遊ぶ〜! 遊ぶ〜!」
嫌だったから奏雨を叩いた。真と星乃に気づいてもらえるようにたくさん叩いたけど、真と星乃は来てくれなかった。
「……ぐぅう」
「チミたちは部屋で別の遊びをやりな」
ぼくは遊びたいんじゃない。
「……違うぅ」
真と星乃と遊びたいだけなのに。
「…………千貴」
遊んでもらえないからすごく悲しかった。
『えぁーっ! 奏雨お兄さーん!』
ぼくも奏雨も、初めて真の悲鳴を聞いた。奏雨はぼくを抱っこしたまま食堂まで走って戻って、テレビを指差す真を見る。
「さ、さ、斎藤お兄さんがテレビを壊したー!」
「壊してねぇよ! なぁ星乃!」
「こ、こ、壊しましたっ! 犯人は斎藤おにーちゃんです!」
「なんでだよぉ!」
斎藤が泣きそうになっている。ぼくを下ろした奏雨はテレビのところまで行って、何かする。
「こ、こ、壊れてるのか……?」
斎藤は奏雨の次におっきかったけど、真や星乃よりもちっちゃくなった。
「壊れてないよ」
奏雨が何をしたのかわからないけど、真っ暗だったテレビにゲームが出てくる。
斎藤は嬉しそうに笑っていて、真と星乃は「良かったぁ」って言った。
「ありがとうございます、奏雨お兄さん!」
「本当に壊したらこの家から追い出すからね」
「はい! わかりました!」
「斎藤に言ってるんだよ」
「俺ぇ?! や……えっと……わ、わかった……」
「まぁ、わざとじゃないだろうから許すけどね」
「……えっ」
「千貴、斎藤が変なことしないようにここにいな」
奏雨に頭を撫でられた。なんでかはわからないけど、ここにいていいみたいだった。