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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2018年
147/201

4月18日  首御千千貴

 斎藤さいとうが施設に来てから、まこ星乃ほしのがいつも以上に楽しそうに笑っている。真と星乃は一番上だから、斎藤みたいなお兄ちゃんが欲しかったのかもしれない。


「斎藤お兄さん! これがさっき話したゲームです!」


「え……お、おう」


「え、どうかしましたか?」


「は? い、いやなんでもねぇよ」


 斎藤は、真が持ってるゲームを見て急に喋らなくなった。よくわからないけどやりたくないみたいだ。


「真! 斎藤がやらないならぼくがやる!」


「は?! やらねぇなんて言ってねぇぞ!」


「やる! やぁる!」


「ちょっ! 千貴ちきくんにはまだ早いからダメだよ!」


 真は今日もぼくを仲間外れにした。真と星乃ばっかりずるい、斎藤もずるい。


「あぁァ〜〜!」


「うるさいよ千貴。少しは翡翠ひすいを見習いな」


「いやぁア〜!」


「ったく。なんで同い年なのにこうも違うかな」


 奏雨かなめに抱っこされて食堂から引きずり出される。


「うぅ〜! 遊ぶ〜! 遊ぶ〜!」


 嫌だったから奏雨を叩いた。真と星乃に気づいてもらえるようにたくさん叩いたけど、真と星乃は来てくれなかった。


「……ぐぅう」


「チミたちは部屋で別の遊びをやりな」


 ぼくは遊びたいんじゃない。


「……違うぅ」


 真と星乃と遊びたいだけなのに。


「…………千貴」


 遊んでもらえないからすごく悲しかった。


『えぁーっ! 奏雨お兄さーん!』


 ぼくも奏雨も、初めて真の悲鳴を聞いた。奏雨はぼくを抱っこしたまま食堂まで走って戻って、テレビを指差す真を見る。


「さ、さ、斎藤お兄さんがテレビを壊したー!」


「壊してねぇよ! なぁ星乃!」


「こ、こ、壊しましたっ! 犯人は斎藤おにーちゃんです!」


「なんでだよぉ!」


 斎藤が泣きそうになっている。ぼくを下ろした奏雨はテレビのところまで行って、何かする。


「こ、こ、壊れてるのか……?」


 斎藤は奏雨の次におっきかったけど、真や星乃よりもちっちゃくなった。


「壊れてないよ」


 奏雨が何をしたのかわからないけど、真っ暗だったテレビにゲームが出てくる。

 斎藤は嬉しそうに笑っていて、真と星乃は「良かったぁ」って言った。


「ありがとうございます、奏雨お兄さん!」


「本当に壊したらこの家から追い出すからね」


「はい! わかりました!」


「斎藤に言ってるんだよ」


「俺ぇ?! や……えっと……わ、わかった……」


「まぁ、わざとじゃないだろうから許すけどね」


「……えっ」


「千貴、斎藤が変なことしないようにここにいな」


 奏雨に頭を撫でられた。なんでかはわからないけど、ここにいていいみたいだった。

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