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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2016年
134/201

12月15日 長谷部紫弦

 幼い頃から天才だと言われていた。見て、覚えて、なんでもやることができた俺はいわゆる飽き性だった。

 自分の心に当て嵌る何かをずっとずっと探していて、自分が子供であることを自覚して、大人になりたくて町を彷徨う。社会人になればあっという間に大人になれると思っていたが、町を動かしている職業にはすべてあの《十八名家じゅうはちめいか》が関わっていて。それらの職業に憧れてももう遅くて、視界に飛び込んできたのは《カラス隊》だった。


 鴉貴輝司からすぎこうしが王として君臨している警察の組織の一つらしいが、パトロールをしているように見える鴉色の軍服はあまりにも少なく。ただ眺めていただけの俺の耳に飛び込んできたのは《カラス隊》の求人情報だった。


 なんとなく覗いた陽陰おういん警察署のホームページで《カラス隊》の求人情報をなんとか見つけ、職歴も学歴も資格さえも問わない求める人材を知って手を止める。


 俺は、中卒だった。陽陰町の外の高校に行けるほどの偏差値はあったが、勉強に飽きてふらふらとしていたどうしようもない子供だった。


 求める人材が幅広いとはいえ、しょうもない人間を採用することはないだろう。

 受かるわけがない。ただ、少しだけ、藁に縋るような思いで履歴書を送った。そして、今日返送されたのがその結果だった。


 面接はしていない。落ちた、ということなのだろうと思って採用の文字に目を見張る。


 意味がわからなかった。しょうもない人間でも採用するのかと思って、鴉貴輝司直筆の手紙を読む。そこには「面白いので来てください」というわけのわからない採用理由が書かれていた。


 手元のスマホが電話を報せる。知らない番号だ、恐る恐る出ると知らない男の声が聞こえてくる。


『初めまして。私は鴉貴輝司です』


 柔らかそうな声色ではないが、取って食うような声色でもない。


『伝えなければならないことはほとんど紙に書いてあるのですが、漏れていたら困るので確認の電話しました。お時間をいただけますか?』


「はい……え、いや、なんで」


『おや。応募したのは貴方だというのに混乱しているのですか?』


「あ、その、面接とか」


『しましたよ? 素性調査とストーキングのみですが』


「?!」


『貴方には才能がなさそうでしたが、賞状と資格の数々があれば大丈夫だろうと判断しました。死なない程度に鍛えたいと思います』


「いやいやいや」


 本当に意味がわからない。怖すぎるとさえ思う。


『辞退しますか?』


 だが、その問いに頷こうとは思わなかった。

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