4月24日 芦屋多翼
『五道さん? ……あぁ、うん。そうだね。綿之瀬五道さんはどこにいるのかな?』
『今よんできます。ちょっとだけまって……アイラお姉さん? どうしたの?』
そんな声が聞こえてきたから、「五道ならいるよ!」って僕は言った。そうしたら、真もアイラね〜ちゃんも驚いた顔で僕を見た。
「五道! お客さーん!」
その意味がよくわからなかった。五道に用があるあのおじちゃんは悪い人じゃない。だから、教えないっていう意地悪をすることはできなかった。
「連れてきたよ、おじちゃん!」
五道を引きずっておじちゃんの前に出す。
「……誰だね、君は」
「私の名は雅臣です」
「そんなことは聞いていない」
「あぁ、そうなんですか? なら、陰陽師と名乗った方がわかりやすかったですね。謝罪します」
やっぱりそうだ。
「いきなりで申し訳ないのですが、私も急いでいるので単刀直入に言いますね」
おじちゃんは僕やモモと同じ陰陽師の人。
「多翼とモモを私にください」
だから僕たちの仲間。悪い人じゃない。そんな人が今僕とモモになんて言った?
「多翼、モモ」
おじちゃんはしゃがんでいて、僕と食堂から引っ張られてきたモモの瞳をじっと見つめている。
「私が君たちの次の父親でも……いいかな?」
モモにもわかるようにゆっくりと聞いてきて、僕は、ぽかんと口を開くモモの代わりに──お母さんとお父さんがいなくなって寂しそうに泣いている小さな小さなモモの代わりに「いいよ!」って言った。
モモの手を引いて、おじちゃんのところまで走る。おじちゃんは僕たちの手を引いて、外に出て、一緒に坂道を下りる。電車に乗って、トンネルの中を通って、電車から下りて、坂道を上がる。
「今日からここが二人の家だよ」
大きな家の外で僕たちを待っていたのは、たくさんのに〜ちゃんとね〜ちゃんだった。
「この子が真菊で、この子たちが春と紫苑で、この子が美歩だよ」
みんなみんな陰陽師。僕たちの仲間。僕たちの、に〜ちゃんとね〜ちゃん。それで、僕はモモのに〜ちゃん。
「それで、この子たちが多翼とモモ。みんなの弟と妹だよ」
嬉しそうに笑っているおじちゃんのことが大好きなんだなって。そう思うくらいに、まったく笑わないけれど雰囲気は冷たくないに〜ちゃんとね〜ちゃんが優しく僕たちのことを受け入れてくれた。
僕たちのほとんどが血が繋がっていない。
それでも家族になれるんだって知った。
寂しさが少しだけ消えたことを知った。
笑っていていいんだと思った。