4月19日 間宮結希
ぼくは、生まれた時から陰陽師。死ぬまでずっと、陰陽師。
『将来の夢は?』
だから、将来なんて考えたことなかった。
『えぇっと……ヒーローかな』
ぼくはずっと、陰陽師のことをそう思っていた。
「ぁっ」
がらがらと崩れてしまったのは、ぼくとスザクを庇った餓者髑髏だった。なんで妖怪がぼくのことを守ってくれたんだろう。
「まりちゃぁあぁぁぁあぁぁあぁぁあん!!」
大きな声を出したのは、女の人の声だった。女の人が呼んだのは、女の人の姿になったぐちゃぐちゃの餓者髑髏だった。
骨もぐちゃぐちゃ。血もたくさん出た。真っ白な女の人の髪が真っ赤に染まっていく。
「ひゅっ」
女の人の真っ赤な瞳は、濁っていた。
これ以上百鬼夜行を続けたら、みんな死んじゃう。助けなきゃ。今すぐ行かなきゃ。町役場の屋上に。
町役場の手前まで来ていたぼくは、中に入ってエスカレーターを駆け上がる。屋上に出た。町役場はとても高い建物だから、妖怪がたくさんいてみんなが戦っている景色がよく見えた。そこにも妖怪がいた。
「──飛んでっ!」
言われたから真上に飛ぶと、炎が地面を走っていく。炎が妖怪を燃やしたから、ぼくは戦える。
「四神よ、我に力を貸したまえ! 我は力を欲する陰陽師である!」
大好きな千羽が死んじゃったから、千羽の分も戦わなくちゃ。千羽の分もみんなのことを守らなくちゃ。
この町を闇に染めた百鬼夜行は全部を奪っていったけど、まだ希望は残っていた。ぼくは希望を集めて、ぼくの体の中に入れて、とても大きな力にする。そして、千羽と一緒に作った呪文を唱えた。
「あの者の魂を繋ぎ止め、この町を救いたまえ!」
餓者髑髏の人がぼくのことを守ってくれたから、ぼくも餓者髑髏の人を守る。
「この地を守護する土地神、風之万流命よ、我に力を貸したまえっ! 我の名は、間宮結希! 力を欲する陰陽師である……!」
出てきてくれたカゼノマルノミコトは、ぼくにこう言った。
『間宮の子よ、其方の魂だけは奪えない。だが、其方の記憶のすべてであれば手を打とう』
それでいい。けど、ぼくの記憶だけじゃ百鬼夜行を止めることはできないから。
「──私の寿命の四分の一! それで手を打ちなさい、カゼノマルノミコト!」
そんなぼくを守る為に、命を出してくれた人がいた。その人が炎を出してぼくのことを守ってくれていた。
ぼくはまた呪文を唱える。
「──生きて」
死んじゃった人は帰ってこない。だから、今いる人たちに生きていてほしかった。