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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2016年
106/201

4月19日  間宮結希

 ぼくは、生まれた時から陰陽師おんみょうじ。死ぬまでずっと、陰陽師。


『将来の夢は?』


 だから、将来なんて考えたことなかった。


『えぇっと……ヒーローかな』


 ぼくはずっと、陰陽師のことをそう思っていた。


「ぁっ」


 がらがらと崩れてしまったのは、ぼくとスザクを庇った餓者髑髏がしゃどくろだった。なんで妖怪がぼくのことを守ってくれたんだろう。


「まりちゃぁあぁぁぁあぁぁあぁぁあん!!」


 大きな声を出したのは、女の人の声だった。女の人が呼んだのは、女の人の姿になったぐちゃぐちゃの餓者髑髏だった。

 骨もぐちゃぐちゃ。血もたくさん出た。真っ白な女の人の髪が真っ赤に染まっていく。


「ひゅっ」


 女の人の真っ赤な瞳は、濁っていた。


 これ以上百鬼夜行を続けたら、みんな死んじゃう。助けなきゃ。今すぐ行かなきゃ。町役場の屋上に。

 町役場の手前まで来ていたぼくは、中に入ってエスカレーターを駆け上がる。屋上に出た。町役場はとても高い建物だから、妖怪がたくさんいてみんなが戦っている景色がよく見えた。そこにも妖怪がいた。


「──飛んでっ!」


 言われたから真上に飛ぶと、炎が地面を走っていく。炎が妖怪を燃やしたから、ぼくは戦える。


「四神よ、我に力を貸したまえ! 我は力を欲する陰陽師である!」


 大好きな千羽せんばが死んじゃったから、千羽の分も戦わなくちゃ。千羽の分もみんなのことを守らなくちゃ。


 この町を闇に染めた百鬼夜行は全部を奪っていったけど、まだ希望は残っていた。ぼくは希望を集めて、ぼくの体の中に入れて、とても大きな力にする。そして、千羽と一緒に作った呪文を唱えた。


「あの者の魂を繋ぎ止め、この町を救いたまえ!」


 餓者髑髏の人がぼくのことを守ってくれたから、ぼくも餓者髑髏の人を守る。


「この地を守護する土地神、風之万流命カゼノマルノミコトよ、我に力を貸したまえっ! 我の名は、間宮結希まみやゆうき! 力を欲する陰陽師である……!」


 出てきてくれたカゼノマルノミコトは、ぼくにこう言った。


『間宮の子よ、其方の魂だけは奪えない。だが、其方の記憶のすべてであれば手を打とう』


 それでいい。けど、ぼくの記憶だけじゃ百鬼夜行を止めることはできないから。


「──私の寿命の四分の一! それで手を打ちなさい、カゼノマルノミコト!」


 そんなぼくを守る為に、命を出してくれた人がいた。その人が炎を出してぼくのことを守ってくれていた。


 ぼくはまた呪文を唱える。



「──生きて」



 死んじゃった人は帰ってこない。だから、今いる人たちに生きていてほしかった。

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