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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2016年
101/201

4月19日  百妖熾夏

 私は百目ひゃくめと九尾の妖狐の半分妖怪。千里眼を持つ幻術使い。強過ぎる力を持っているせいで、普段は封印していないとみんなと同じになることができない最悪の化け物。


 だから私が、誰よりも多くの妖怪を屠らなければ。私が、誰よりも強くて誰よりも悪い化け物だから。


熾夏しいか! 何か──何か視えますか?! 姉さんと妹たちは無事ですか?!」


 かなねぇが縋るように尋ねてきた。珍しい。けれど、私に頼らないといけないほどに状況は最悪だった。


「みんな無事!」


「危険な目に遭っている家族はいませんか?!」


 かな姉は家族のことばっかりだなぁ。即答できる私も常に家族の様子を千里眼で見ているのだから、人のことを言えないけれど。


「いない! けど……あいちゃんたちはまだ避難できてない!」


「そんな……! あの放送からどれほど時間が経っていると……!」


「死んでるんだよ避難誘導する《十八名家じゅうはちめいか》が! 私たちが妖怪狩りしかしないから!」


「──ッ!」


 かな姉だけでなく、朱亜しゅあるい先輩も息を呑んだ。


「でもそれが正しい!」


 私は言い切る。《十八名家》が避難誘導の際に命を落とすことは正しいと。言い切るのは、私が最低最悪の化け物だから。


「避難誘導で誰も死なないように! 私たちが少しでも多くの妖怪をここで殺す! 私たちがやっていることは間違ってないし! 私たちは全力で戦ってる! シロねぇもいおねぇもまりねぇも! 私たちもわかちゃんも死ぬ気で戦ってる! 《十八名家》も死ぬ気で戦ってる! それで命を落としただけ! 《十八名家》を救う為に避難誘導に加わりたいなら──私を置いてさっさと行って!」


 置いて行け、と言いたかった。


 私が誰よりも多くの妖怪を屠るから。私が、誰よりも強くて誰よりも悪い化け物だから。

 置いて行って、《十八名家》のみんなを救って──みんなは心優しい人だから、ここまで言われたら行くでしょう?


「行くわけないでしょう!」


「──ッ?!」


 かな姉は、今、なんて言った? 《十八名家》のみんなを見捨てるって?


「大切な妹を置き去りにするなんてことは、わたくしにはできません!」


 どうして──私が、誰よりも強くて誰よりも悪い化け物だって知ってるくせに。


「わたくしが共に手をとって生きて行きたいのは貴方です! 貴方たちです! 《十八名家》の人々に妖怪が向かわないように──わたくしはこのままここで、殺し続けます!」


 かな姉からは嫌われていると思っていた。愛されているなんて、思ったことはなかった。


 私も、愛してるよ。

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