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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
1005年
1/201

10月31日 オウリュウ

 遠い遠い地で、誰よりも偉大な陰陽師おんみょうじが死んだ。風が教えてくれた事実はそれだけじゃなくて、オーに戦争の幕開けを告げてくる。

 偉大なる陰陽師が食い止めていたその計画は、いつの間にかこの国全土に知れ渡っていた。そして、彼の死でたがが外れた。


「……殺されてるの?」


 風が吹く。からからと、赤い紅葉が地面を撫でた。


「……そうなんだ」


 誰が悪いのかわからなかった。悪意と善意が混在したのがこの世界だった。


「オウリュウ、精霊となんの話をしてるんだ?」


「……宗隆そうりゅう


 オーの主の宗隆は、間宮まみや家から出てきて腕を組む。楽しそうに笑みを浮かべているのはいつものことで、オーの話を聞きたくて聞きたくて堪らなさそうに近づいてきた。


「……〝あの人〟が死んだって」


「〝あの人〟が?」


 オーたちと交流があったわけじゃない。けれどやっぱり、〝あの人〟の死は陰陽師だったら衝撃的だったようで。宗隆は眉間に皺を寄せ、真っ赤な空をじっと見上げた。


「そうか」


「……あの計画も、始まってる」


「あの計画?」


「……星明せいめいから何も聞いてないの?」


「あぁ。怒られるだろうか?」


「……清行きよゆきの方が怒りそう」


「やめろよ。清行は本当に恐ろしいんだ」


「……宗隆がみんなの気持ちを考えないから。あの計画は、清行にとって大きな意味があるのに」


 この町の陰陽師は、宗隆と、星明と、清行だけ。間宮まみや家と、結城ゆうき家と、芦屋あしや家だけ。


「そうなのか? それで、その計画とは?」


「……妖怪を、みーんなみーんな殺しちゃう計画」


 言えば、宗隆は息を止めた。


「……国の北と南から、大きな結界を張って妖怪を追い詰める。真ん中の方へと、真ん中の方へとって。それで妖怪を全滅させるの」


「それは、あの人が死んだからか?」


「……計画自体は前からあった。でも、死んじゃったからみんな怯えた」


「清行はそれを良しとしているのか?」


「……してる。聞きたくないって」


「おれは聞いてみたいけどなぁ」


「……どうして?」


「話ができるなら、友になれるかもしれないだろ?」


 もう、宗隆の言葉で驚くようなオーじゃない。


「共に同じ娯楽を楽しめるかもしれない。共に、生きることができるかもしれない」


「……うん。宗隆は、ずっと宗隆だね」


 オーはそれ以上何かを言うことができなかった。けれど、オーは宗隆の式神しきがみだ。宗隆の気持ちは、誰よりもわかっているつもりだった。そう、思っていた。

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