プロローグ
ストックホルム症候群をご存知だろうか?
ストックホルムで人質を多数取り、犯人たちが銀行に立てこもった事件があった。
人質たちは犯人に同情し、同調し、警察に銃口を向けたという。
そして人質だった女性は犯人と獄中結婚したという。
その逆もまた存在する。
あまり知られていないが、犯人が人質に同情、同調するケースも存在する。
そういったケースを「リマ症候群」という。
リマで日本大使館に人質を取り立てこもった犯人は、人質たちに感銘を受け、日本語の勉強を始めた。機動隊が突入した時、人質を撃ち殺さなくてはいけない犯人は引き金を引けず射殺されたという。
こういったケースは決して少なくはない。
ストックホルム症候群はヘルシンキ症候群とも呼ばれ、ヘルシンキで起こったハイジャック事件で人質が犯人に協力したケースが語られる事もある。
こういったケースは発生しても隠される事が多い。
自分の精神の安定を守るためとは言え、人質は一時、犯罪行為に手を貸した事になる。彼らの名誉のために事件は秘匿されなければならないのだ。
また危険人物の考えを助長する可能性がある。
拉致監禁で誘拐した性行為目的の女性に対して「恐怖で考え方を支配出来る」などと思わせてはいけないのだ。
だが「ストックホルム症候群」を病気とするかどうかは心理学者、犯罪学者はもちろん、被害者の間でも意見が分かれている。
オーストラリアの拉致監禁の被害者であったナターシャカンプッシュは「犯人の考えに同調するのは生き残るための当たり前の戦略だ」と言っている。
人間の心などわかっているようでわかっていない物だ。「人間は恋のドキドキと恐怖のドキドキの区別がつかない」などと良く言われる。俗に言う「吊り橋効果」だ。
ここに東京の僻地、青梅よりもっと郊外で起きた「武蔵小金井事件」と呼ばれる事件がある。
この当事者たちの心情が恋愛であるのか、恐怖であるのか、勘違いであるのか。
それは専門家の間でも意見が分かれている。
あなたの意見をお聞きしたい。