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プロローグ

久しぶり過ぎる執筆ですので誤字脱字などあるかもしれませんがどうぞ生温い目で冷たい視線をお送りください


「ふぁ~、いい天気ですねぇ………」


澄み渡った空を見上げながら欠伸をして呟く。

気持ちの良い青空を少々憎く思いながらゆっくりと伸びをすると大きく育った胸がゆさりと震えた。

昔のパーティーの仲間から貰った少々丈の短いフリル付きの白と青のコントラストが特徴的なワンピースの裾がヒラヒラと風に揺れるのを心地よく感じる。

このまま専用の鎧が身に纏える私のお気に入りの服装である。


「この世に生まれ落ちてすでに1万程の月日を越えましたが………気持ちの良い朝はやっぱり良いものですよ」


ふと下を見ると街の者達は忙しそうに働いている。

街の中心部に天高くそびえる石でできた塔 冒険者ギルドの塔の最上階からの眺めはいつも通りに素晴らしい景色を見せてくれるのだが、代わり映えのしないその風景はこの心に退屈しかもたらさない。


「そろそろ降りるとしますか、今日も新米冒険者達の教官として頑張らないといけませんし………」


背中の真ん中まで伸びた桃色に近いプラチナブロンドの長髪をポニーテールにリボンで纏め上げるとゆっくりと階段まで歩く。

人前に出るのでしっかりと身嗜みを整えようと手のひらに収まるコンパクトな鏡を魔法で呼び出すとそのまま覗き込むが、まつげの長いぱっちりとした大きな青色の瞳の下に黒い隈が出ていたり肌や唇の色に変調は見られない。

若干幼く見られがちな自分の顔をしっかりと見ながら頷いて


「うんうん、大丈夫だね」


そう呟いて魔法で鏡を消し吹き抜けとなっている螺旋階段を降りながら自分の身体が健康であることに満足して鼻歌を歌っていると


「ネルシリア様!!どちらに居られますか!!」


下の階から大声で私を呼ぶ声が塔に響く。

どうやら今日のお供は冒険者ギルドの次期副長のラシルド・ガバーナ君のようだ。

かれこれもう15年程の付き合いで、彼が冒険者として新米だった頃から教官として鍛えたのだが、なかなか出世したものだ。

SSS~Eまである冒険者ランクで超一流とまで言えるSSランクまで上り詰めた彼を見てると 感慨深いモノがある。

最初なんて小石よりも少し大きい位のスライム相手に泣きながら剣を振ってなんとか勝っていたのに今じゃ神性を持たないとはいえ強大なドラゴン相手に単独で一歩も引かない戦いをするほどだ。


「ネルシリア様!!ここに居たのですか………って!?ネルシリア様!?」


思い出に浸りながらゆっくりと階段を降りていた私を見付けたラシルド君が急に真っ赤になりながら下を向く。

しかも鼻を抑えながら壁に背中を預けて前屈みになり動かなくなってしまった。

いったいどうしたのだろうか?


「ネルシリア様、申し訳ありません………ですが、ですが言わせて下さい」


前屈みの体制からいきなり姿勢を正すと右手で握り拳を作り親指を立てて清々しさまで感じる良い笑顔で


「眼福です、白と青のシマシマの下着が良くお似合いですよ」


鼻から赤い液体を滴らせながら言い放った。

私は一瞬ラシルド君が何を言ったのか理解できなかったけれども現在の自分の立ち位置的に丈の短いこのワンピースでは乙女の秘密を覗かれてしまうことに気が付いた瞬間………


「きゃああああああああああああ!!」


悲鳴と共に転移魔法で自宅に帰って冒険者用の上着とズボンに着替えて教官となった為に仕舞い込んでいた愛剣と盾を引っ張り出して新米冒険者達いる訓練所でラシルド君をボコボコにしたのは悪くないと思う。


「はぁ………最悪だよ、新米君達に引かれるなんてさぁ………」


ラシルド君への制裁が終わった後に新米君達に教練をしたのだけど、正直みんな怯えてて教練は捗らなかった。

それどころか指導しようと近づくと身を強張らせて練習にならないのだ。

これでは身に付くものも身に付かなくなってしまう。

仕方なく早い内に切り上げて自宅に帰り入浴して汗にまみれた身体を洗っているのだけど………


「あんなに怖がられたのはいつぶりかな?もう二千年か前のことだっけ?………まぁあの頃はドラゴンとして本性が出せたし嘗められるのは嫌っていうか反抗期みたいな頃だったし………」


新米君達の表情につい昔の、それこそ終わってしまった自分の物語を思い出す。

勇者と戦って負けて仲間となって一緒に冒険して仲間と共に魔王を倒したあの頃を………


「彼等の子孫はまだ続いてるかな?勇者は異世界から招かれた人だったけど………元の世界で頑張ってるかな?」


魔法の無い"かがく"というモノが発展した異世界からやって来た勇者は元の世界に帰る瞬間に


「また会おう」


そう言って手を振りながら消えていったのだ。

それから二千年会うことは叶わず、また勇者を必要とするような災いも起きることなく、しかも勇者召喚の儀式を伝えていた王国も王位継承する王族が途絶え滅亡して儀式自体も失われてしまったのだ。


「会いたいです………孝人(たかと)


不意に涙が溢れる。

二千年も前にお別れを済ませた筈なのに止まらない涙を何度も拭いながらしゃくりあげそうな喉を抑え込む。

ウサギは寂しいと死んでしまうそうだが今なら私も分かる気がする。

かつて孤高の龍神とまで呼ばれた私の心に暖かな光と優しさをくれた勇者に無性に会いたくなった。


「駄目です………こんなんじゃ孝人に笑われます」


涙をしっかりと拭いて気合いを入れ直そうと頬を両手で叩く。

孝人は居なくても彼が守った世界は平和を保っているのだから………


「頑張れ私!!こんな所でくよくよしてては良くないのです!!」


気合いを入れ直した私は勢い良く立ち上がる。

そして暖かいお湯の張った湯船に向かって入ろうと勇み足で早歩きして………転けた。


「っ!?ゴボッ!?」


転けた位置が良かったのかそのまま湯船に落っこちる私、最近貯まったお金で広いお風呂に改築したのが良かったのかどこにも身体をぶつける事は無かった。


「ぷはぁ!!少し失敗しました………」


湯船から顔を出して大きく息を吸いながらもう少し落ち着いて行動するべきだったと反省する。

落ち込みながら改めて湯船の中で座りやすい体制になろうとして端を掴もうとするとなんだか掴み心地が違う。

良く見ると木製だった湯船が白くてツルツルした物に変わっており、かなり狭くなっている。

周りを見ると明らかに自分の家のお風呂とは違い、固そうな細かいでこぼこの付いた壁に天井には丸い明かりを灯した魔法具のような物があってとても明るい。

極めつけは細長いロープのような物と壁に鑑が張り付けてあるのだ。


「こ、ここは………いったい………」


困惑しながらも現状を把握する為に立ち上がった私を他所に………不透明なガラスの扉が勢い良く開いた。


「はぁ!?」


開いた扉の先から男の声が聞こえる。

とても困惑しているようだ。

私もその声に釣られて扉を見ると全裸の孝人がいた。

そして立派な象徴が隠されずに揺れている。

孝人が驚愕の表情のまま視線をゆっくりと下げていくのが見えた。

それに合わせるかのように私も自分の姿を確認すると………私も全裸だった。


「………ひっく」


ゆっくり湯船にしゃがみながら私は涙を溢す。

何もこんな再会じゃなくても良いじゃないか………だいたい一万年生きていたとしても羞恥心が無いわけでは無いのだ。

確かに会いたいと言ったのは自分だけど、いきなり全裸の姿で再会なんて酷すぎる。


「いや!ちょっ!?ごめん!マジごめんなさい!!」


孝人は孝人でガラスの扉に隠れながら謝っているが涙が止まることはない。

こんなの………こんなのって………あんまりだよ………

ガラスの扉の向こう側で土下座という謝り方をする孝人を見ながら色々な感情に翻弄される私は


「うえええええええん!!孝人に裸見られたあああああああ!!」


大声で泣きわめく事となった。





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