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俺の可愛い幼馴染のメンタル強度は絹ごし豆腐以下 前編

初視点、前編です。

俺、小鳥遊初には幼馴染がいる。

名前は片桐伊月。

顔はキツい感じで猫のようなツリ目。顔だけ見ると気の強そうな印象を受けるが、実際は泣き虫で、俺に全幅の信頼を置くちょっとお馬鹿な奴だ。

とても可愛い。本当に可愛い。

俺の後ろをカルガモの雛のようにちょこちょこ歩いたり、知らない人がいると俺の背中に隠れて不安そうに俺を見上げたり。


特に可愛かったのは、保育園の頃に「ういちゃんのおよめしゃんになゆ!」って言った時だな!

一番は決められない。伊月はどんな時でも可愛いからな。


伊月が中学の頃、告白された時は気が気じゃなかった。 悪い虫がつかないように目を光らせていたが、油断した。 幸い伊月は断ったが。

全く、うちの可愛い伊月をそう簡単にやってたまるか!

とりあえず、告白してきた奴とはちょっと話し合っておいた。

その後、伊月に告白するヤツはいなかったので安心した。



高校に入ってからもそれは変わらず、伊月に構っていると、保護者扱いされるようになった。

保護者っちゃ保護者だが、何だろうな、モヤモヤする。


ところで、俺たちが入学した私立彩原学園には、ファンクラブを持つ生徒がいる。生徒会の連中がそれだ。他にも人気のある生徒にはファンクラブが設立されることもあるらしい。と言っても、生徒会のと比べれば小規模だけどな。

入学してすぐ、一通り調べたが、あろがちな制裁とかは無いらしく、伊月に害を及ぼさないだろうと判断した。

ただ、生徒会の連中はあまり良い評判を聞かなかったので、伊月には近づくなと言っておいた。



入学して半年ほど経った頃、俺は一人の女子生徒に呼び出された。

告白だったらいつもの通り「俺の一番は伊月だから」と言って断ろう。


そう思いながら指定された場所に行ったんだが、そこで言われたのは予想外の言葉だった。



「小鳥遊君、あなたのファンクラブを作らせてください!」


「遠慮する」



その申し込みは予想外だが、即答するに決まってんだろ。


そんなもんができて、伊月が距離を置いたらどうしてくれる。我慢しなきゃと思って我慢するけど我慢できなくてどうしていいか分からなくて泣くに決まってる。アイツの絹ごし豆腐以下のメンタル舐めんなよ。

泣いてる伊月も可愛いけどな!

そうなったら目一杯頭を撫でて抱き締めよう。後はお菓子だな。何が良いか……。


そんなことを考えつつ、女子生徒に背を向ける。



「じゃ、俺伊月迎えに行かなきゃ行けないから」


「そう!それです!」



びしっと指を突きつけられる。

何がそれなんだ?

訳が分からない俺に女子生徒……そういや名前知らねぇな。まぁ良いや、女子生徒が説明を始める。



「私たちが見たいのは、過保護な小鳥遊君とちょっとお馬鹿で可愛い泣き虫な片桐さんのじゃれ合いなんです!

不良っぽい小鳥遊君と気の強そうな見た目の片桐さんがくっついてるのが良いんです!

むしろ一緒にいてください!!」



ふむ。コイツ、なかなか見る目があるらしい。俺と伊月が一緒にいるのを邪魔したりする気は無いらしいし。


高校だと、クラスが離れて伊月といられる時間が減っている。幸い、一番危険な体育は合同授業だから安心していたが、それでも心配だ。

ちなみに、この前の体育で伊月が盛大にコケそうになったので慌てて受け止めた。その後、田宮やクラスメートの古賀に「何でかなり距離が離れてたのに間に合ったんだ……」と言われた。


それはさておき、この女子生徒が言ってるファンクラブは、俺の目の届かないところを見るのに役に立つだろう。

だが、理念はファンクラブでは無いだろう。



「俺のファンクラブじゃないならいいぞ」



そう言うと、すぐに意図を理解したらしく、目を輝かせた。

頭の回転が早いらしい。



「小鳥遊様と片桐さんを見守る会とします!」


「それでいい」



こうして、俺のファンクラブ、もとい俺と伊月を見守る会が発足した。

体制が整ってから伊月に伝えるつもりだったのだが、早々に伊月の耳に入って距離を取られた。


まぁ、すぐに代表が説明してくれて、元通りになったんだが。

会の連中とも仲良くなったらしく、楽しそうに話ながら貰ったお菓子を頬張っている伊月はすこぶる可愛い。食べかすは綺麗に拭ってやる。



◆◇◆◇◆



高校三年生の中途半端な時期に転入してきた転入生のお陰で、学園が荒れている。どうも生徒会の連中がこぞってお熱らしい。

何か俺に近づいてきたこともあったが、俺は伊月を世話するので忙しい!

伊月には、ヤツらに絶対近づくなと言い含め、見守る会とも警戒に当たった。



で、その転入生、越前VS生徒会ファンクラブが終わって少しして、こんな噂が流れ始めた。



片桐伊月が、越前美亜をいじめている。



と。


それを聞いた瞬間、ブチ切れた俺を古賀を始めとするクラスメートは必死に止めた。



「落ち着け、小鳥遊!」


「離せこんなアホな噂流した奴探し出して畳む!」


「お前ならできそうで怖い!てか何をだよ!?」


「くそ、誰か片桐呼んでこい!俺らじゃ止められない!」


「伊月なら風邪で休みだ。今までからして一週間は休む」


「ホントお前よく覚えてんな!」


「そうだ、帰りにリンゴを買っていこう」



リンゴうさぎはダメだ。前に作ったら可愛すぎて食べられないと言ったからな。

しかしこの噂、どうしてくれよう。会を動かして調べるか……。

伊月が休んでるのは幸いだったな。休んでる間に出所を調べて潰そう。



「あぁ、そうだ。このこと、伊月には言うなよ。アイツが聞いたら、一週間追加で寝込む」


「言ったら畳むんだろ?」


「いや、折る」


「折る!?」



何をだ!?と叫ぶ古賀は無視だ。


さて、まずは伊月の風邪が治るまでに犯人を探し出すか。

まぁ、犯人の目星はついてるんだが。



◆◇◆◇◆



犯人を特定できた。案の定、越前美亜の自作自演。ついでに生徒会役員による生徒会室や予算の私物化が判明した。

こちらの証拠は教師にも渡した。何かリコール騒ぎになるらしい。行いが行いだしな。折角なので署名集めを手伝った。

その交換条件として越前の退学を求めた。伊月のこともそうだが、色々と変な噂を聞くんだよな。「逆ハールート」とか「シナリオ」って言ってるらしい。ゲームの話なのか?何か生徒会の連中や俺の名前を呟いてる時もあるっぽい。


最初は渋っていたが、証拠をマスコミに流すと言ったら飲んでくれた。

大体、アンタらが動かないからここまで悪化したっつーのもあるだろ。


あぁ、面白半分でうわさ流した馬鹿どももいたから、そっちとも話をつけておいた。その後学校に来てないらしいが、自業自得だ。



◆◇◆◇◆



で、一週間後。

思った通り伊月の体調は回復した。

本当なら一緒に登校したかったのだが、教師に呼び出されてしまってできなかった。

伊月のクラスのヤツが呼びに来た時は慌てたよ……。

とにかく、泣いている伊月を落ち着かせる。マドレーヌを所望されたので全部終わったら作ってやろう。あぁ、後で持ってきたクッキーもやるか。


泣き止んだ伊月に俺か田宮と一緒にいるよう言っておいた。

生徒会の連中が越前に傾倒してる今、もうアイツら何してくるか分からないからな。

それに、越前が伊月に虐められたって言っても、アリバイが出来てるわけだし。


リコールの準備のせいでなかなか一緒にいられないのが心配だ。

いっそ古賀辺りに押しつけてしまおうか……。



「準備、頑張ってね!」



よし、頑張ろう。

古賀には雑用をやらせる。



その後、持ってきたクッキーを頬る伊月を眺めながら、俺は古賀にどんな仕事を押しつけてやろうか思案していた。

初(さて、何をやらせるか……)


古賀「何だろう、急に悪寒が……」

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