(一)はじめに
▼はじめに
ファンタジーで、ちょっとした神話の断片や予言が擬似古文で書かれていたりすると、すごく雰囲気があって素敵だと思いませんか。個人的には、中二病っぽい呪文、誓約文、契約文、檄文あたりも大好物です。
しかし残念なことに、日本語的におかしな擬似古文があまりに多すぎるんですよ……。せっかくの萌える場面が台無しではないですか(涙)
これは作者の方々だけの問題ではありません。普段、誤字・脱字・衍字をチェックすることに熱心な読者の方々も、おかしな擬似古文についてはスルーしておられるようです。
というわけで、失敗例が一番目につく過去・完了の助動詞について、簡単な使い方の目安を書いてみることにしました。ファンタジーに特化して絞り込んだ内容となっておりますが、歴史小説や架空戦記でも多少はご参考になるかもしれません。
▼対象レベル
現代語と古語の活用について、何となく知識がある方が対象です。
ちなみに、この文章を書いている私は文法が嫌いです。ええ、大っ嫌いですとも。←ココ重要。
よって、そんなに難しい内容には発展することはありませんので、ご安心ください。
念のために、このページのあとがきに必要になりそうな用語や知識を書き出しておきます。自信のない方や復習しておきたい方はどうぞ。
▼例文と仮名遣いについて
自作の例文は、口語体はもちろん文語体も新仮名遣いで統一させていただきます。「文語体×新仮名遣い」に抵抗がある方もおられるかと存じますが、読みやすさ優先ということでご理解ください。
自作ではなく他から引用した例文の場合は、原文の仮名遣いに従います。
▼参考資料
このページのあとがきに掲載しています。
以降、基本的に、面倒くさい内容は注釈としてあとがきに放り込むようにしておきますので、さらっと読み流したい方はあとがきを飛ばしてください。
★このエッセイに必要な基礎知識
次の内容を見て意味が分かる方を想定しています。丸暗記していなくても構いません(特に品詞と口語文法)。
多分、中学三年か高校一年までには習っている内容ではないかと思うんですが……
【品詞について】
一、自立語
ア、活用がある「用言」……動詞・形容詞・形容動詞
イ、活用がない
├ 主語になる「体言」……名詞・代名詞
└ 主語にならない……副詞・連体詞・接続詞・感動詞
二、付属語
ア、活用がある……助動詞
イ、活用がない……助詞
【口語文法】
一、活用形……未然形・連用形・終止形・連体形・仮定形・命令形
(五つ目の仮定形だけ文語と違う)
二、動詞の活用の種類
├ 五段活用
├ 上一段活用
├ 下一段活用
├ カ行変格活用「来る」
└ サ行変格活用「する」
【文語文法】
一、活用形……未然形・連用形・終止形・連体形・已然形・命令形
(五つ目の已然形だけ口語と違う)
二、動詞の活用の種類
├ 四段活用
├ 上二段活用
├ 上一段活用
├ 下一段活用「蹴る」
├ 下二段活用
├ カ行変格活用「来」
├ サ行変格活用「す」「おはす(*)」
├ ナ行変格活用「死ぬ」「往ぬ(去ぬ)」
└ ラ行変格活用「有り」「居り(*)」「侍り」「いますかり(**)」
*多分使わないと思いますが、自作例文で「おはす」「居り」を使う時は、新仮名遣いで「おわす」「おり」とさせていただきます。
**「いますかり」は「いますがり」「いまそかり」「いまそがり」「いましかり」「いましがり」と千変万化しますし、入試以外では使い道もなさそうなので、個人的には覚える必要性を感じないんですよね。でも一応出てくるので書いておきます。
三、係り結びの法則……係助詞「ぞ」「なむ」「や」「か」を使う時は、文末が連体形になる。係助詞「こそ」を使う時は、文末が已然形になる。
★参考資料
文法嫌いだからフィーリングだけで書いたぜ!
というのはさすがにまずいと思いましたので、一応、複数の辞書で語義などを確認いたしました。
・メインで使用
『日本国語大辞典 第二版』(小学館)※オンライン版@ジャパンナレッジ(http://japanknowledge.com/)
・比較参照用
『新潮国語辞典 ―現代語・古語― 第二版』(新潮社)
『新選国語辞典 第八版』(小学館)
『全訳古語例解辞典 第三版』(小学館)
『デジタル大辞泉』(小学館)※オンライン版@ジャパンナレッジ(http://japanknowledge.com/)
『スーパー大辞林』(三省堂)※オンライン版@三省堂 Web Dictionary(http://www.sanseido.net/)
きっちり読み込んだのはここに挙げた分だけですが、他にもいろいろと本屋さんで立ち読みしました。一応図書館にも三か所ほど足を運んでおります。
個人的には、『日本国語大辞典』の解説が唯一の正解だと感じています。他は全部説明が微妙だったり、物足りなかったりしますね。
比較用としては、『新潮国語辞典』がお勧め。それほど大きな辞書ではないのに、古文領域もしっかりカバーしている上、例文の選び方がうまいと思います。『日国』と出版社が違うため、解説を比較参照するという点でも最適でした。