鹿角宮乙羽のイマカレ記録
こんな出会いの恋愛が見たい!
そんな欲望に流されるまま書きました。
文章力なくてごめんなさい。
『好きな人ができた』
彼氏から一方的に別れを告げられた。
高校時代から約10年。長く続いていた私たちの関係は、それはそれは呆気なく終わってしまった。
好きだった。ずっとずっと好きだった。今まで彼以外にその思慕を向けることはなかった。ただ一人、彼だけを愛していた。
それなのに、想いを向ける相手はもういない。自分を拒絶して、違う女の元へ行ってしまった。
『私たち、来月に結婚するんです』
結婚する。それ以外に、彼女は余計なこともたくさん話した。相性が抜群にイイだとか、あなたじゃできないことも私なら彼にしてあげられるとか。主に、カラダの関係の話をしてくる彼女に、嫌でも彼を寝取られたのだと理解させられた。
幸せそうに、わざわざ彼の携帯から電話をかけて報告してきた“新しいカノジョ”の言葉の数々に、ついに頭はパンクした。
抱えていた分だけ重く伸し掛る感情に押し潰される。私はとうとう耐えられなくなったのだ。
「…もう駄目だ」
限界だった。死ぬしかないと思った。だから。
「………」
欄干を乗り越えて、淵に立つ。
散々泣いて真っ赤になった目から性懲りもなく、また一筋零れていく。
真夜中の橋の上。通る車はない。眼下を流れる夜色の川は、荒む私の心とは違って穏やかそうに見えた。
重心を傾けて前へと進んだ。景色が逆さまになって、私の体は落下を始める。あと数秒もすればきっと。
「―――オイッ!」
誰かの怒鳴り声が聞こえた。それと同時に、落下が止まる。
「……えっ?」
何が、起こったの。
◇◆◇◆◇
「ねぇちょっと何してくれてんの?」
「え、と」
「この仕掛け作るのにどれだけ手間かけたと思ってんの?材料費だって馬鹿になんないんだよ?」
「す、すみません」
「死ぬならさ、もうちょっと人の迷惑にならないところでしてよね」
「………」
「ねぇ聞いてんの?」
私の体は空中で止まっていた。
なぜか?
―――今、目の前で私を見下ろして憤慨している男が仕掛けたらしいネットに、私の体が引っかかってしまったから。
なんて悪運が強いのか。
「ごめんなさい…」
ネットに引っかかったまま、消え入りそうな声で謝る。
男はそんな私の様子に溜息を吐き、ネットに手をかけた。
「落とすけど、いい?」
この場から早くいなくなりたくて、私はすぐにコクリと頷いた。次の瞬間ネットが揺れ、私の体は再び川へと向かって落ちていった。
「…まあ、この高さじゃ落ちても死ねないけどさ」
そう呟いた男の声は届かなかった。
水面に叩きつけられた衝撃は思っていたよりも弱かったけれど、私の意識は簡単に飛んでいった。
◇◆◇◆◇
どうして?ねぇどうして?
私が何かした?気に食わないことでもあったの?
悪いとこがあるなら言ってよ。ちゃんとするから。
あなたの為なら何だってするから。
欲しいものがあれば、頑張って用意してあげるから。
だから。お願い。
『帰ってきてよ』
私の傍から、離れないでよ。
◇◆◇◆◇
「あ、起きた?」
目を開けると、あの男がいた。
「………!」
慌てて起き上がって周りを見渡せば、そこは橋の下だった。
体はびしょ濡れだった。夜風が当たってひどく寒い。
川に落ちたんだから、濡れているのは当然の結果。だけど、私が求めていた結果はこんなものじゃない。
私を川から引き上げたのは、間違いなく今目の前にいる男だ。私が非難の目を彼に向けると、当の本人は心外だと言いたげに眉間に皺を寄せた。
「言っとくけど、別に助けたワケじゃないから。聞きたいことがあったんだよ。ていうかさ、あんな中途半端な高さから落ちて死ねるワケないじゃん」
それから男は淡々と質問してきた。
「アンタ、名前は?」
「……鹿角宮、乙羽です」
「家族は?」
「いません…」
「家はこの近く?」
「そこの…団地に住んでます」
「歳は?」
「に、26です」
「近所付き合いは?」
「あまり…」
「よしよし上出来。じゃあ最後の質問。アンタさ、やっぱり死にたい?」
そう言って私の首を掴んだ。
「っ…!」
息を呑んだ私に、男はにっこりと笑った。
「俺さぁ、人の目に触れちゃいけないようなアブナイ仕事してんだよね。で、アンタは俺の仕事の一端を見ちゃったってワケ。つまり、俺にとってアンタは邪魔な存在なんだよね」
笑っているのに、目は凍てついた氷のようだった。
「でもアンタ、死ぬためにここまで来たんだろ?俺でよければ殺してあげるけど、どうよ?」
―――ああ、嫌だと思った。
彼以外の男に触られているこの状況が、たまらなく嫌だった。
すっと頭が冷えていき、自分が冷静になっていくのを感じる。
せめて。どうせ死ぬのなら。
「…じぶんで」
「は?」
「…じぶんで、しに、ますから…はなして、ください」
途切れ途切れに訴えると、少しだけ手の力を緩めてくれた。
「……そんなこと言って逃げようとしてんでしょ?騙されないからね」
「じゃあ…何か、首吊り用のロープとか」
「………」
男が手を離し、私の顔をまじまじと見つめた。
「…なんで自分で死にたいの?」
「……?」
「死ぬことに変わりはないんだからさ、俺が殺したって別にいいじゃん。なんで俺じゃダメなんだよ」
何を言ってるんだろう、この人は。
「それは…」
正直に言おうと思った。彼以外に触れられたくないからと。
だけど言葉の代わりに出たのは、いい加減枯れたと思っていた涙だった。
「……っ」
彼を思い出しただけで、心が軋む。あの女と幸せそうに歩く姿を思い浮かべてしまう。
男に泣き顔を見られたくなくて、すぐに袖で涙を拭ったけれど、涙は止まらなかった。ポロポロと留めなく零れてくる。
「いや…!」
際限なく溢れ出る涙に悪態をつき、私は立ち上がった。
「ちょっと、どこ行く気……っ」
引き止めようとした男の手を振り払い、私は川へ向かって駆け出した。
「オイこら待て!」
でも、すぐに追いつかれて、羽交い絞めにされた。
「離して!」
「だーかーらー!質問に答えろよこのバカ女!」
「ほっといてよ!あなたには関係ないでしょ!」
「ないけど気になんだろうが!」
「何それ意味わかんない!」
どれだけ暴れても、男の拘束からは逃れられなかった。
次第に力が抜けていき、それでも私は弱々しく訴えた。
「……お願いします、死なせてください」
「ああもう、埒があかないなぁ!」
どさりと地面へ押し倒され、再び首に手がかかる。
「言え。言わないと殺す」
「………」
勘弁して欲しい。私は死にたいだけなのに。
「…彼氏を寝取られたんです」
「は?」
それはもう、ヤケだった。
彼以外の男に触られたまま死ぬくらいなら、今まであったことをぶちまけて、それから自分で命を絶つ方がよっぽどマシだと思った。
「彼だけを、ずっと好きでいたのに…裏切られて。結婚するって聞いて、もう耐えられなくなって……だから」
「…それがなんで俺じゃダメな理由になんの?」
「……彼以外の男のひとに触られたまま、死にたくないから」
男の手が離れた。
「…なんだよ、それ」
「え…?」
「むかつく」
男の顔が、不機嫌そうに歪んでいる。
「オトハ、だっけ」
「え?」
「アンタの名前」
「…そうですけど」
「俺はヒロト。ねぇオトハ、アンタの家に俺を匿ってよ」
「え」
「俺この間ミスっちゃってさぁ、前に住んでた家に戻れないんだよね。だからさ、住まわせてよ」
「な、なんで私が…!」
「つべこべ言わない。従わないと殺すよ?」
そうしてこの男、ヒロトは私の家に居候することになった。
後にヒロトの自己紹介を聞いて、私は愕然とすることになる。
八上優人。私と同じ26歳。
彼の仕事は―――人殺しだった。
◇◆◇◆◇
「………」
郵便受けに入っていた1葉のハガキ。
裏返して確認すると、結婚披露宴への招待状だった。
送り主は、元カレとその新しいカノジョ。
「………バカみたい」
涙は出なかった。悲しくもなければ怒りも沸かない。
もうあれから1ヶ月が経とうとしている。私にとっては今更過ぎて、もはや笑い話だ。
あれだけ執着していたのが、嘘だったかのように。
「オトハー、帰ったの?」
玄関を通り抜けてリビングへ向かうと、ソファーに寝転がるヒロトを見つけた。何やらタブレットをいじっている。
「…ただいま、です」
「おかえりー」
ヒロトはこちらをチラリとも見ない。彼から目を逸らし、私は買ってきた食材を冷蔵庫へ入れることにした。
「今日の晩ご飯なに?」
すぐ後ろから聞こえた声に、持っていた卵を落としそうになる。
恐る恐る振り向けば、不機嫌そうなヒロトが立っていた。
「いい加減、慣れてくれたってよくない?」
「む、無理です…」
ワープしたのかって言いたいくらい、足音はしなかった。
誰だって、いきなり後ろから気配もなく現れたらビックリすると思う。
「で、今日の晩ご飯は?」
コロコロと機嫌が変わる。
ヒロトはいつもこんな感じだ。とてもマイペースに行動する。
「…オムライスです」
「お、いいじゃん!オトハは料理のレパートリー多くていいねぇ」
「ど、どうも…」
買ったものを全て冷蔵庫に入れ終えて、キッチンに立つ。
「…あれ?」
「どうしたの?」
「どうしたもこうしたも…」
私は唖然として、流し台を見た。
「…食器、洗ってくれたんですね」
「え、なにその意外ですみたいな顔!失礼だな!」
「だ、だって…」
「俺だって洗い物くらいするっての!」
「ご、ごめんなさい」
「なんで謝んの!?」
買い物に出かける前に放置してしまっていた食器が、綺麗に片付いている。この様子だと、ちゃんと拭いて食器棚に戻してくれたらしい。
「…ヒロト、ありがとうございます」
「…!」
あまりに珍し過ぎて、ひとまずお礼を言ってみた。
するとなぜか彼の表情が固まった。
「…ヒロト?」
「……あのさ、そろそろ敬語やめてくんない?もう1ヶ月になるんだからさ」
「え?」
いきなり何を言うのだろう。
「…それは、命令?」
「命令に聞こえる?」
「だって…」
「あーもう!オトハってホント『だって』ばっかだなぁ!俺が良いって言ってんだから大人しく甘えてよ!」
「あ、甘え?」
時々、ヒロトが何を言ってるのか分からなくなる。
「………ねぇ、ヒロト」
「なに?」
「ヒロトは…まだ私のこと殺したいって、思ってる?」
元カレ以外に触られたまま死にたくない。
それだけのために自殺を強行しようとする私を引き止めた彼は、何度も殺すと脅してきた。
いちばん初めはヒロトに殺されたくない理由を聞き出すために。その次は、私の家へ居候するために。
料理は作れるか。携帯のアドレスを教えろ。元カレとはどこまで進んだのか。なぜ家族がいないのか。仕事はしていないのか。
それから先は、完全にプライベートな質問や要求ばかりだった。いつまでも続く不可解なヒロトとの問答のなか、いつの間にか“殺す”という脅し文句は無くなっていた。
「…じゃあ逆に聞くけど。オトハは死にたいの?」
「分かんない…」
「俺もだよ」
「え?」
「俺も分かんないんだ。オトハのことを殺してやりたいとか、死なせてやりたいとか、全然分かんなくなった。でも」
ヒロトが近づいて、ずいっと顔を寄せてきた。
それにビックリして、思わず後ろへ逃げそうになった私の後頭部を、ヒロトの右手が掴んで阻止した。もう一方の左手は腰に回されて、私の逃げ場はどこにもない。
「オトハの近くに居るのは心地が良いんだ。俺はここから動きたくない。だから、まだ傍に居させてよ」
―――お願いだからさ。
耳元で小さくそう言ったヒロトの声は、どこか弱々しかった。
オムライスの出来はまあまあだった。
とは言っても、ヒロトは目をキラキラさせて平らげる。
美味しい美味しいって、ベタ褒めする。
それがなんだかこそばゆい。でも、嫌じゃなかった。
「オトハ、明日はハンバーグにしてよ」
蕩けるような笑みを浮かべて、ヒロトは私に“お願い”する。
「うん」
私はしっかりと頷いて、その“お願い”を聞き入れるのだった。
◇◆◇◆◇
私は現在、定職に就いていない。
でも、一応収入はある。手先の器用さを活かして小物を作り、それをネット通販へ売りに出している。
それなりに売れているため、生活に苦労はしていない。最近ではオーダーメイドを頼まれて作成することも増えてきた。特定のお客さんがいると、それはそれで楽しいものだ。
「オトハってすごい器用だね」
「そうかな」
「そうだよ!」
私が作ったスマートフォンカバーを手に、ヒロトが身を乗り出す。
「もうなんなの、このプロの犯行!こことかどうやって刺繍したの?細すぎだろ!」
カバーの隅にある小さな花の刺繍を指差す。
「そんなに難しくないよ。ヒロトもやってみる?」
「むりむりむり!目が痛くなる!」
ぶんぶんと頭を振って否定する。
「ねぇ、俺にも何か作ってよ」
「いいよ。何がいい?」
「えー、何にしよう」
ゴロゴロとカーペットの上を転がって、ヒロトは唸りながら考え始めた。
「いつも使ってるタブレットのカバーとか…」
「やだ。今作ってるのと違うやつがいい」
「えっと…」
作業台のすぐそばに置いていたパソコンを操作して、私は今まで作った作品の一覧をデータから引き出した。
「アクセサリーは?」
「身に付けるやつはパス」
「ストラップ」
「音鳴るのは仕事に支障出るからダメ」
「…お、」
「お?」
「お守り…とか」
急に口篭り始めた私を、怪訝そうにヒロトが見る。
「……もしかして元カレに作ってあげてたとか?」
「…っ」
図星。誰が見たってバレバレな私の反応に、瞬く間にヒロトは不機嫌になっていった。
「元カレと同じもん、俺に作る気なの?」
「そ、そんなつもり、は…」
「じゃあなんでお守りだなんて言い出したのさ!」
ヒロトの上げた大声に、身を竦めて俯く。
「ねぇ聞いてる!?」
「きゃっ…!」
黙っている私に苛立ったのか、ヒロトが押し倒してきた。
両手首を掴まれて、床に縫い付けられる。
「俺って、オトハにとっての何なの…?」
「え…?」
「元カレの代わりなの?そんなのイヤなんだけど、俺」
「え、え?」
ヒロトの様子がおかしい。
目が潤んでいて、まるで熱に浮かされたように頬が赤い。
「ヒロト…?」
「ね、オトハ」
ゆっくりと覆いかぶさって、顔の距離が目と鼻の先ほどになり、そしてそっと囁かれる。
「俺とイイこと、する?」
「………!?」
ガンッ!
「いってぇ!」
「いっ……」
驚きのあまり起き上がろうとして、思い切り頭をぶつけた。飛び上がって離れたヒロトと同時に、私もあまりの痛みに頭を押さえてうずくまる。
「何すんの!」
「だって…!」
回復の早いヒロトはまたすぐに私を捕まえて、さっきと同じ体勢をとった。
でも、さっきよりは拘束が緩い気がする。
「……まだ元カレ以外に触られるのは嫌なの?」
顔色を伺うように聞いてくる。
「それは、ない…」
「は?」
「もう、あの人のことは…どうでもいい、というか。なんというか…」
「はぁ〜?」
なにそれ意味わかんない。
ヒロトの顔がそう言っている。
「私……元カレのこと大好きだったって、ずっと思ってたんだけど。そうじゃなかったみたいなの」
「そうじゃなかった?」
「うん。……あのね、ヒロトに会ってしばらくして、あんなに苦しかったのが嘘みたいに、胸の痛みが消えたの。それでね、元カレの使ってた日用品を見て、『ああ、もう要らないから捨てなきゃ』って自然にそう思って……そこでやっと気づいたんだ」
私は“彼”を愛してなんていなかった。
「私は、拠り所に依存してただけだったんだ」
「拠り所?」
「誰でも良かったの。傍に居てくれるなら、誰でも」
“彼”だから好きになったんじゃない。
傍に居てくれるから。ただそれだけで、愛していたつもりになっていたんだ。
「ヒロトはあの日からずっと私の傍に居てくれたでしょ?たぶんだけれど、今の私にとっての依存の対象は、あの人じゃなくてヒロトになっているんだと思う」
いたたまれなくなって、目を逸らす。
「…私、気持ち悪いよね。ごめん」
「………」
やっぱり、怒ってるのかな。
何も言ってこないヒロトに、ますます居心地が悪くなる。
「……じゃあ、さ」
長い沈黙を破ったのは、ヒロトによって呟かれた声だった。
「俺が、オトハの彼氏になって、いい?」
予想外の言葉に、思わず背けていた視線を上げた。
「…!」
「ね、いいでしょ?」
ほんのりと赤みがかったヒロトの頬が、私にも熱を誘発する。
きっと彼と同じように、私の頬も赤くなっているに違いない。ひどく顔が熱い。
こんなにドキドキするのは元カレ以来かもしれない。
振られた時とは、確実に違う胸の痛みが私を襲う。
「オトハ、返事は?」
「……は、はい…」
そんな状態でいたものだから、流されるようにあっさりと了承してしまった。
もはや撤回はできない。けれども嬉しそうなヒロトの顔に、後悔よりも先に胸が高鳴るのを感じた。
「………ところで、なんでお守りって言い出したの?」
起き上がって、改めてそう聞かれた私は躊躇いながらも答えた。
「…だってヒロトの仕事、危険なんだもの」
「え?」
「…人を殺す仕事なんでしょう?…返り討ちとか、逆に命を狙われたりとか……いつ死ぬか分からないじゃない。今の私の拠り所はヒロトなんだよ?また居なくなったら、私は…!」
ひと月前のあの押し潰される感覚を思い出して、涙が出そうになる。
もう二度と、あんな思いをするのは嫌だった。
「―――」
目を見開いて、呆然とヒロトは泣きそうな私を見つめた。
「…それで、俺にお守り作ろうって、思ってくれてたの?」
「……ごめんね」
「なんで謝るのさ」
「だって、こんな…気持ち悪いじゃない。ウザいでしょう?」
「気持ち悪くないし、ウザくもない。もしかして、俺にウザがられると思ってあんな怯えてたの?」
私は黙って頷いた。
以前、元カレに作っていたお守り。同じように渡せば、ヒロトは私を気持ち悪がって離れていくかもしれない。
それが怖くて、たまらない。
「…俺はいなくならないよ」
「…本当に?」
「うん。俺、オトハのこと好きだし」
「でも、私は…」
「依存の対象ってだけで好きになるワケじゃない、って言いたいんだろ?」
「……ヒロトはそれで良いの?」
「良くないね。どうせならオトハに好かれたいし。だからさ、思い知らせてあげるよ」
ヒロトの手が伸びて、私の頬を包んだ。
「元カレより、うんと愛を囁いてあげる。俺の好きでオトハを満たしてあげる。甘やかして、ドロドロに溶かして―――」
顔が近づいて、声を上げる間もなく、自然に唇が重なった。
「―――俺以外に、依存できないようにしてあげる」




