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11章

 沖嶋一家を襲っていたビックバンも醒めた翌日。今日は怜の家に行くことになった。たった昨日に志を改めたばかりだというのに、忙しくて仕方がない。というのも全ては怜が悪い。

 どうやら、この学校の6年生の奴らはクラス全員の家を見学することが趣味のようだ。家の住所、家の構造など、いろいろと調査するらしい。あの珍趣味を持つ穂乃花がそうするわけでもなしに、クラスの人それぞれがそうしたいようである。今までにも数々の家を巡ってきているようで、ゲームのダウンロード特典が更新された場合にチェックするのと同じように、転校生が来ると多勢に無勢な感じにその転校生の家にお邪魔するらしい。

 今回はその一環として転校生である怜の家に目をつけたようだが、別に介がそれに誘われたわけではない。穂乃花は珍しく介を誘わなかった。

 が、代わりに怜が誘ってきたのだ。最初は男子ばかりが来ると聞いていたらしいが、あとになって女子(穂乃花)が来るということを耳にして、介に緊急要請を出した。

 結果的に「今日、怜の家行っていいか?」と男子の初発の声から始まり、「私も行っていい?」と穂乃花の言葉が続き、「介、今日俺ん家来てくれねえ?」と頼み込まれ、「あ、あぁ」と承諾し、「穂乃花、今日あたしも行くことになった」に終わる。穂乃花が怜に言って、怜が介に言って、介が穂乃花に言う。見事な三角関係が成立している。

 そんなこんなで怜の家に行くわけだが、正直転校してきてから怜の家に行くのはこれが初である。どんな家なのか微妙にドキドキしながら、怜の向かう。

 美咲の隣には言うまでもなく、穂乃花が付き添っている。俺が穂乃花について行っているのか……それとも、穂乃花が俺について行っているのか……。怜の家に着いたとしても絶対に答えの出ない不思議な事柄に頭を使いつつ、美咲は左隣の穂乃花を瞥見する。

「穂乃花、何で今回は誘ってくれなかったの?」

「え? あぁ、忘れてた、っていうか、美咲は怜君の家に行ったことあると思ってたから」

「あたしはいつでも行けると思ったから行かなかっただけ」

「そうなの」

 もうすぐ怜の家だよな。女になって短くなった足のせいで、たった数百メートルという距離もやたらと長く思える。久美という介的に憎たらしい女との真剣勝負を思い出してしまいそうになった。女になったからな……。鬱が溜まりそう――いやいや、俺は俺でいいんだ。

「そういえば、美咲と怜君って結構仲良かったの?」

「そ、そりゃあ、結構遊んだ仲だけど」

 穂乃花が目で笑った。

「へぇ~。何して遊んだの?」

 不味い! 何して遊んだって、正直に言えばテレビゲームとか外でサッカーしたりとかだけさ、さすがに女子が男子とそんなことして遊ぶか? そもそも、怜とよく遊ぶ仲って言った時点で失敗だった。頭を抱えたくなる妄想を一拍の間に、巡らせまくって言葉を整理する。

「なーんてね。いいよ、別に」

 何だ、そこまでは食らいつかないか。安心した。



 怜の家に着いた。

 ずいぶんご立派な新築住居だぜ、と文句を飛ばしたくなる。外見からして見てみると、介の家よりも若干大きいようだ。別に羨ましくも思わず、介は穂乃花の背中について行った。

「これが怜君の家か~」なんて初見の感想を述べつつ、穂乃花は玄関に取り付けられていたボタンを押した。ピーンポーンと恒例ともいえる音が鳴り響くと、ごたごたと中で音がして、暫しすると怜が顔を覗かせた。

「怜君、入っていい?」

「いいよ、みんな来て、る」

 最後の一音は何だったのか。その瞬間に介が穂乃花の背後から顔を覗かせたために安心して行き詰ったのかもしれない。俺がいなかったら、今の一言さえ言えなかっただろうにな。介が関与していないと女と話すことさえできない怜の習性は、どうにかならないものか。将来絶対直さないといけない、と本人も分かっているはずなのに。

「お邪魔しまーす」

 元気よく駆け込んだ穂乃花に続いて、介も――。

「お邪魔しまーす」

 と平凡な俗人たる声で普通に怜の家に入った。

 一目見て、やはりいい新居だと感じた。自分の家を思い出して、新鮮な木々の香りに嗅覚が反応した。まだまだ建ってから日が経っていない証拠でもある。

「ほんとに助かったよ。女子が来るって聞いたからどうしようかと」

「あんたもいい加減に慣れなさいよ」

「あ?」

 急に女口調してもダメか……。美咲は怜に耳打ちを要求した。

「だから、穂乃花が地獄耳だから男口調では喋れないの」

 怜は頷き、言う。

「あいつ地獄耳なん?」

「まぁね。常に警戒してなくちゃいけないから」

「じゃあ、み、美咲だっけ?」

「いい加減、脳味噌に叩き込め」

「はいはい」

 美咲と怜は2階へと上がった。ぐるっと周回するように上がる階段を上ると、いくつかの部屋があった。「こっち」と言って、怜は介を誘導する。

 階段上がって、右の方に見えたドアを開けると、そこには数人のクラスメートが集まっていた。

 悠斗、浩介。2人とも新たに結成された怜の男子グループの一員である。介も正直その中に入りたかったのだが、女の姿ではどうしても入ることを拒むこととなった。

 春華、冬華。双子である。元々穂乃花と仲がいいらしく、その関係で今後仲が睦まじいものとなりそうな予感のする2人である。よくよく無意味なことを考えてみると、はる「か」、ふゆ「か」、ほの「か」となかなか良好な流れのある名前でグループが成り立っているが、介(美咲)はそうでもなく、空しいというか仲間外れ的というか。ずれている感じを味わう。他の友達も作ればいいか、と思いつつ、何故姉は語尾が「か」の名前を付けてくれなかったのだろう、となんの同意も反論もすることなく決まってしまった自分の女バージョンの名前を悔やんだ。(実際には千加が考え出したのだが)

 怜の部屋は引っ越してきて早々、独自のコーディネートが施されていた。男らしい私物がぞろぞろと。逆に気持ち悪くなりそうなほどに男気溢れた部屋だ。絨毯もベッドもカーテンも。女環境で過ごしてきた介も一応は男であって、そうしたい気持ちは変わらなくもない。が、未だ真白な壁に包まれている介の部屋は怜の部屋に比べれば、地味極まりなかった。第一、今の姿では男風な部屋か女風の部屋かどうするか優柔不断だ。

「ま、適当に」

「そうする」

 悠斗、浩介、春華、冬華、穂乃花の他にも4名ほどいるが、それはETC.として考えてもらって構わない者たちだ。説明は無用。

 美咲は当たり前のように女子グループの中に入っていく。さっきから最新の格闘ゲームに夢中になっている男子グループに参加したい気を満々に出しつつ、女子グループに入るしかなくなる哀れな介がそこにいた。入ればいいのに……。天からお言葉が降ってきた気がした。

「美咲ちゃんって何で男っぽいの?」

 率直な質問。女たらしな話題よりもまずはそう言う疑問を紐解きたいのか。

「うち3姉妹だから、あたしが男らしくして雰囲気だしてるだけだよ」

 本当は怜悧な千加の考案だったが、真実の隠蔽のために使わせてもらうことにしている。それらの語彙をさも作り話と思わせない工夫を施して文として構成するのだ。

「そうなんだぁ。でもほんとにすごいよね。この前だって、怜君と洋平君の喧嘩止めちゃってたもん」

「ま、まぁあれぐらいは前の学校でも普通に」

 時折、専門用語的なゲームの内容に関与した説明を口走りながら、テレビの画面に釘付けになっていた怜が、チラッと介を一瞥する。やはり気になるのだろうか。ゲームやるか? 半分見えた眼球がそう言っているような気がした。

「そういえば、美咲って好きな人いたの?」

 話題が急に転換するから大変。って、好きな人? 何で女子という生命体はこういう場になると必ず恒例のように恋愛の話をしだすのかな。一体どんな脳をしているのだろうか。一回脳細胞を徹底的に検査してみたいものだ。

「そんなのいないよ」

「このクラスのいい人いる?」

 いるかも。穂乃花という五感最強女もよくよく見てみれば結構は美人であるのに間違いはない。春華、冬華もそれなりの可愛らしさを放出し、クラスの代表的愛嬌女子が周囲に結集していることを象徴していた。

 こういう場合は好きな女子を答えるべきなのか? いやいや、男子だろ。

 自分と同じ性別で好きな人はだれかと言われても、気色悪くてそう答えられるものではない。仮に怜を好きな人に挙げたとしても、事情を知っている怜が嬉しがるのか嬉しがらないのか。さておき、普通に――。

「解んない」

「あの中では?」

 穂乃花がゲームに熱中している男子勢を指差す。

「そんなに」

「浩介とかは?」

 女子っていうのは男子よりもずばりと言うことが多い。

 名前を呼ばれた時は人間は反射的にそっちを向いてしまうものだ。ゲームに熱中していた浩介とやらも、「あ?」と面倒くさそうながら顔だけを女子勢の方へ向ける。

「いや、なんでもない」

 よくあること。呼んでおいて用なしで断る。

 今の一瞬で顔がよく観察できたが、男の目から見てもそれほどいい男だとは思えなかった。言うならば、怜と同等、またはそれ以下というぐらいか。恋愛基準は小学6年生の男子にはよく解らん。

「普通」とりあえずそう言うしかない。

「そっかぁ」

 それから穂乃花が他の女子と話し始めたので、美咲は話の輪から一時離れた。背後では男子たちがゲームで嗜んでいる。やっているゲームはそれほど最近の物ではなく、1年ぐらい前に流行っていた4人制大乱闘系の格闘ゲームである。美咲も前作は持っているのだが、何せ兄弟に男がいなかったせいで一緒にプレイする、という機会がそうなかった。千加にやらせても、すこぶるゲーム感がないのか、準ゲーマーである介の相手にもならなくて正直つまらなさでいっぱいだった。都合を合わせて集まれるタイミングを見計らったところで怜と愉快な仲間たちを家に招き入れて、みんなでゲームをやるときほど快楽を得る時はなかった。

 現在、美咲の眼中に入っているゲームは、美咲の持っているゲームの次回作に当たるものなのだが、ゲーム会社がどこに力を入れて改良を加えたのか解らないほどに美咲の持っているゲームとそっくりだった。怜が力強く押しているコントローラーを凝視していると、まるで自分の持っている格ゲーと同じような操作をするのだ。まぁ、同じ会社、シリーズ作ならそれもそうか。

 やりたいなー。何となく、本当に何となくだがそう思っていたその時、怜が変わってくれるんじゃないかという予感がよぎったわけでもなく、ましてや実現したわけでもなく、穂乃花に呼ばれていることによって我心を封印した。

「そういえば、美咲の家ってどんな感じなの?」

 俺の家……。5LDKのごく普通の大きさを誇る家で、玄関を入ってすぐ左には和室があって、対してその反対側にはリビングとダイニングとキッチンが隣接している。玄関正面には階段があって、それを右回りに折り返しに登れば2階へと上がれる。2階に上がってすぐ正面が介の部屋で左手が千加の部屋で、右手は倉庫などのほか、である。風呂場やトイレも一応説明しておくと、階段の横を通り過ぎた先にある。

 それが介の家の概要である。

 って、俺の家? まさか。

「お、あ、あたしの家はその……って、来るの?」

「もちろん」

 これはまずいのでは? 予知していなかったというと噓になってしまうのだが、本当のことを言うと、何事もすれずに済んでいけばよかったという具合だった。転校生の家巡り。そう、怜の家を尋ねて、介の家を尋ねないということはありえなかったのだ。しかし、クラス全員の家を回っているという話を聞いたのはつい最近のことである。だからなんだ。そう言いたいはずだ。だが、最近聞いたというのが介にとってみれば大問題だったのだよ。

 介の家は現在どうなっているかというと――介の男物と見なされた私物はすべて2階の物置の中に封じ込められてしまい、代わりに女の私物を置くとしても介の所持している女の私物は唯一のシャツしかなく、置くというよりかは放っておくようなものだ。そんなこんなで介の部屋はいまだに女子らしきものが皆無で、それ以外にはベッドと机とガラクタしか置いていないのだ。しかも壁は純粋に真っ白。

 そんな光景を穂乃花が見たらどうなる。やっぱりそうなるよな、と「男っぽい」または「純粋」みたいなことを言われるに決まっている。

 万が一、介の部屋を出て右斜めの方向にある物置を覗かれた日には、どう対処すればいいのか。男のいない家に男物の服が存在していたら、疑問に思われるだろう。あ~実はお兄ちゃんが当たんだけど、去年事故で亡くなっちゃって――とかも言えないだろう。穂乃花のことだ。和室を覗いて、「お兄さんの遺影ないね」とか知的に見抜かれるのが落ちだ。何で、噓吐いたの? ――あぁ、どうしようか。

「あたしの家は――」

「女子、ゲームやんない?」

 美咲の言葉の隙間に唐突に怜が闖入してきた。

 何故? 怜が。あの怜が? 女子に格闘系ゲームを? どんな意図を? 

 なんか怜の目から「かばってやる」という言語光線を発している気がした。怜が話を錯乱させるために我が身を張って言っているというのか。親友として、気を遣ってくれていることにしみじみとなる。

「美咲はこれ得意じゃなかってっけ?」

 結局、男っぽい女として扱いのか。女子がこんなゲームするかアホ、と介は唾吐きたくなった。

「えっ、美咲ゲームやるの?」

 穂乃花が興味を持ち出してきた。こうなったらやるしかない。怜とコントローラーを交代し、でも怜はやりたいようで悠斗や浩介に「貸せ」と言い張るのだが、そこから発展したジャンケンの中で耳した「レディファースト」という言葉に介は耳を疑いつつ、ジャンケンを見届けた。

 怜が勝利し、悠斗が負けた。

 1983年に発売されたファミコンは今や雑魚扱い。プレイステーションでもコードがあったのに、こいつはコントローラーからコードすら伸びていないと、すごい進歩を遂げたね現代。ファミコン時代、いやプレイステーション2すら経験していない介にとってみれば、驚くような革新ではない。日常茶飯事に過ぎず、家中にあるとまで思えばあっさり。

 それを手に構える介。足の構えはどうしようか。内股で座るというのは、女になってから男だった時ほど行為に現しても馬鹿にされる目では見られなくなったが、自分自身が嫌だったためにできず、胡坐掻いても構わなかったが、それも傍目を気にすると自然とできなくなっていた。じゃあどうするかというと、媒介である正座しかない。そんなゲームには全く無関係のことを挿みつつ、長閑にゲームは始まっていく。

 怜が適当にゲームの設定を済ませると、テレビの画面はキャラクター選択の画面に映りかわった。多種多様なキャラたちが名を連ねるかのごとく出揃っている。さすが続編。場面の通りだが、介は新しいゲームを買ってもらった子供そのままの目をしてゲームの世界に溶け込んだ。

 穂乃花は何故か絶句している。ゲームなど無縁の写真撮影馬鹿には当然の表情である。

 他の男子勢女子勢共に穂乃花同様の呆然を誇っている。なんちゅう静かな雰囲気だろう。ムードを壊してしまったことを申し訳なく思いながら、介は自分の得意なキャラを選ぶ。

 それでもってゲームスタートである。

 試合開始と共に怜の部屋の空間上が数秒前の時間に戻ったようだ。白熱、と言い表せるだろうよ。介も体は女であっても心は男のままだ。男としては負けるわけにはいかなかった。が、そう男らしくはできないことは念頭に置く。「うらぁ!」とか「くそがぁ!」とか「死ねぇ!」とかいう残酷な言葉は慎まなければ男子勢の中にいる女子のキャラとしてはどうにも活気がありすぎる。元々怜みたいに純粋に男浸った野郎とは違って、何事にも無口に取り組むタイプだった介が肝魂絞るまでのことしなくても結構だった。

 口は安全でも、手先はそうもいかない。怜の手を動きを見ると、あ~こいつは人間ではないんじゃないかって思えてしまうほど、まさにプロなのではないだろうか、と思えるほどに汗ぐっしょりになったコントローラーを叩いているのだ。そこから連動される技の数々は、介もよく知っているものとどうになものだ。対抗するには介もとにかく押してるしかない。カチカチカチカチカチ…………

「美咲すごい……」

「怜と結構やったことあるの」

 平然と余裕の形相をテレビ越しに置きながら、言い訳を挿む。

 画面の中では、人間を疑似したキャラクターが、常人離れした跳躍を見せ、空中で葛藤を繰り広げる。そんなことを無心にやり続けている間に、怜と介以外の男子勢は戦闘不能になってしまい、あえなくコントローラーを手放した。

 残った怜と介の攻防戦が続く。怜はともかく、介の方には皆目を向けるはな。女子が男子勢次々に倒れていった中で生き残っているのだ。第二次世界大戦中に、少しでも子供を産もうと必死に生き延びてきた女達の底力と同類のものを介に感じているはずだ。

 最後はお決まりともいえる必殺技同市のぶつかり合い、と行きたいところであったが、その前に言っておくと、何故「必」ず「殺」すと表記される「技」が存在するのか。誰が大技に必殺技などという意味合いの悪いネーミングをしたのだろうか。最初から必殺って言った場合、一呼吸する前にし合い終わりますよ?

 っと、それはどうでもよく、ようやく決着がついた。熾烈な戦いの最後は驚異の連打により終わりを迎えた。か細い女子の腕でよくこの長時間コントローラー打ち続けていられたな、と皆思っているだろうし、当の本人も久々に握ったコントローラーを感覚と共に指にじんわりと沁みるボタンの硬さを感じていることだ。

 画面に『1P WIN!』という文字がデカデカと現れている。1Pは怜である。介は負けたのである。たかだか俗人がやる遊戯機械だ。それほど悔しがる必要性はない。拍手に同乗して「スゴイね~」とかいう言葉を素直に受け止めてみると、遺憾は湧き上がらなかった。

「やっぱり強いわ、お前」

「怜もなかなかだったよ」

 一応、現在の介は女――美咲である。女たらしく、ゲームが終わったら即座に女子群の元へ帰還するのが安心だ。にこやかなる笑みを見せながら、美咲は穂乃花の足にすがりつくように女子たちの輪の中へ戻った。

「すごいね。あんなの見たことない」などの言葉を直に受けて介は、少し照れる。あの動き……男子でさえも驚愕するような動きらしいが、女子の目からすれば凄絶極まりないことに疑問は生じない。これだけ尊敬されるようなこと言われるのも珍しい気がした。

 羨ましい、とでも言いたい目をしていた怜は我心に戻って、TV画面を眺めた。キャラクターごとに対戦評価がなされていて、それをパチパチとボタンを押して進めていく。

「よーし、もう一回やろうぜ」

 と浩介が誘う。早く次の試合がやりたい興奮を抑えながら、怜が最後の一押し。その時だった。

 ザアアアアアァァァァァ!

 突然、怜のテレビに砂嵐が巻き起こった。

 怜の部屋は忽ち騒然となった。美咲は驚きのあまりに絶句してしまっていたが、他の女子たちは「えっ、何? 何が起きたの?」「何で急に?」とか状況を理解できないために疑問を口走っていた。それに比べて男子勢はみんな硬直。絶句した美咲も一応は男子勢の仲間入りだ。

 プツンッ……。

 一瞬画面が消え、再びスイッチが入った。テレビ画面には、キャラクターの選択画面が表示されていた。途中の砂嵐状態を除けば、普通にゲームは進んでいたはず。

 怜の部屋は、ただならぬ沈黙が張り詰めきっていた……。



 しかしながら、怜が気遣ってくれて、さらには妙な砂嵐まで発生してくれて、途中で話題が途切れたはいいが、それで穂乃花が事柄を忘却するはずがない。あの五感発達女だ。どうせ記憶力や洞察力も相当なものなのだろう。

 家に来るということは免れなかった。穂乃花が来るとなると、うずうずが止まらなかった。しかし、ラッキーなことに来るのは穂乃花1人らしい。奇蹟的な確率でみんな事情があってこれなくなったのか、よっほどすけには興味がないかだ。初期設定、『静穏』にしというてよかった、と介は思っている。それとも、昨日の砂嵐が異常なほど脳裏に染み付いていて、介の家に訪れても同じような目に遭うのではないだろうか、とびくびくしているのではないだろうか。まぁ、存在自体が奇妙になってしまった介には奇妙な現象に対する免疫はあるものの、逆に言えば恐ろしい実態を知る人物でもあるわけで、昨日最も気を失いかけていたのは介だったのかもしれない。

 男らしくはなくとも、一応が活発的――か、度胸がある穂乃花とは対照的な男子たちは、さすがに女子の家に入るというのは抵抗があるらしく、拒絶反応を起こして誰も来る気配を見せなかった。言うまでもないが、怜もそのうちの1人だ。介が関与していれば、女子にも関与できるという妙な習性をもつ怜も、男子が誰も行かないと言ったら已むをえなくても諦めるようだ。

 さてさてどうするかな、と悩んでいるうちに穂乃花が玄関に上がってきてしまうではないか。

「お姉ちゃん、穂乃花ちゃんだよ~」

 何も諭してはいないのに、千加は自然に口調を変えてくれるから感心。

 仕方なく、上がらせるしかなく、とりあえずは1階を見回らせた。とはいっても、1階もそう大して広いわけではなく、見まわると言えるのか言えないのかのぎりぎりのライン上にいるかもしれない。

 そしてらこう言われる他ない。

「2階見てもいい?」

 嫌だ、とは言えない。ここで断れば、「何で?」と返ってくるのは案の定。そうなった場合には、「見せれないものがあるから」と口実付ける。蓋然、「えぇ~ナニナニ~?」と穂乃花の高いソプラノボイスが栄えることになる。無理やりにも押しかけられ、介の部屋の横っちょにある物置を覗かれたら最後、どう言い訳すればいいか。それを防ぐためには、最善を尽くして物置を覗かせないようにするしかない。自分の部屋はこの際どうでもよかった。引っ越して来てからも大して時間も立ってないし、男っぽいという口実もできれば、時間がなくて華やかにはできないと口実もできる。

 穂乃花は介の純粋な真白な部屋を見るなり、「へぇ、真っ白~おもしろーい」と予想通りの反応を見せてくれた。言い訳する必要もなく、平然と物事が進んでいった。

 その後、やっぱり気になる。千加の部屋を覗き、姉の部屋を覗き、流れでは物置を覗くということになってしまうが、ここさっき覗いたよね、みたいな雰囲気を漂わせながら何事もなかったように見過ごすことにした。

「案外、小さいんだね」

「お金ないらしいから。や、あるかもしれないけど、お姉ちゃんが使わないだけ」

「だから美咲の部屋も真っ白なの?」

「そういうこと」

 そこらで1つ、話題が入った。

「そういえばさぁ、昨日のヤツってんだったの?」

 怜のテレビの砂嵐事件。介はそう呼んでいる。

「さあ。でも変だったよね。急に砂嵐になるなんて滅多にないことだよ」

「でも、なんか面白そうじゃない? スゴイ驚いたけど、ああいうこと好きだよ」

 俺の正体教えてやろうか? そうすれば、あまりの面白さに逆上して狂うかもしれないぞ、と介は思った。男が急に女になるなんてことほど、この世に存在する不思議の中でもトップに君臨する事柄はない。

 しかし今ここでそんな大事は口にはできなかった。たとえ穂乃花が不思議好きでも言うことは絶滅危惧種を絶滅させるぐらい勇気がいることだった。

「やっぱり、幽霊とかっていないと思う?」

「いないと思う」

 幽霊は存在しない。テレビとかで心霊写真の情報や心霊スポットの探索などというバカバカしい大人げないことをしているが、正直なところあれらはすべて視聴者を楽しませるための噓であり、実際には物理法則に則れば、実在しないことは証明できる。介もたった11年の人生でそれを知覚した。

 それなら自分の身に起きている紛れもなく誠の現象は何なのだ、と思うとそれは介にもさっぱり解らない。いつ(夜に)どこで(家で)誰が(知らない)何を(性転換)どうやって(知らない)と、この「知らない」部分が謎なのである。小学生の介には理解不能な物理法則を解読しても、絶対に明らかにならない永遠の闇に消えていくだろう謎、それが介自身だった。

「やっぱりね~。あたしも見たことないもん。結構写真撮ってきたけど、心霊写真なんて一枚もないし、幽霊自体の写真も取れたことないよ」

「じゃあ穂乃花は怪奇現象とかは信じてないの?」

 聞いた瞬間、少し考え、

「あんまりね。でも本当はあってほしいな。不思議なこと。そうしたらもっとこの世界って楽しくなると思うのに」

「例えば?」

 話を長くするべく繫げていく。

「たとえばー……」

 穂乃花がさっきよりも時間をかけて考え始めた。怪奇現象について「例えば?」なんて訊いても即座に浮かんでくるはずもない。宇宙からの交信がやってくるとか、急に町に魔獣が召喚されるとか。咄嗟に出てくるとしてもそんな範囲だろう、と介は思っていた。

 穂乃花は美咲の頬をつついてこう言った。

「もしかしたら、美咲が本当は男だったりとか?」

 ドキッという効果音では点で物足りないぐらいの衝撃が介の脳裏を直撃した。

 な、何故。何故、穂乃花が俺の真相を知っているのだ。まさかこの数週間で気づいてしまっていたというのか。例え天と地がひっくり返ったとしてもありえない。驚天動地とはこのことだ。俺は確かにばれないように隠匿してきたはず。なのにそれはすべて穂乃花に見抜かれていたというのか。五感総体を働かせて、俺の心情までも読んでいたというのか――。

 いや、まだ確定したわけでは……。

「なーんてね。美咲が男なわけないよね。美咲はただ男勝りなだけだよね」

 やっぱり。介は安堵した。男じゃなくて、男勝りなだけで十分だった。

 そして時はやってきた。

 普通に時が過ぎていけばいいのに、全ての者には必然というものが存在していて、未来は定まっている。あと一つ残っていた、穂乃花からすれば好奇心をくすぐるような奇妙な部屋の存在に気が付かれた。(気がつかれないわけがないのだが)

 で、こう言うことも定められていることなのか。

「この部屋は?」

 開けてもいい。開けたとしてどうなる。中には己の私服とかゲームとか、とにかく男物がぎっしり詰まっているのだ。この家に男がいないことは穂乃花も十分承知のつもりらしいが、この部屋の内部に確かに存じているそれらを見て如何な反応を見せるのかは必然とやってくる未来の自分に訊ねる他ない。

 それでもできる限りは言い訳に尽くしたいのか、本能的“別に精神”を働かせたのか、介は少し慌てた顔して、

「そこはただの倉庫だから、別に何でもないの」

「倉庫? 何が入ってるの?」

 穂乃花っていうのはそういう性格。まぁ、本当に純粋に周囲に興味を持たない鈍感野郎を除けば、大体の人間が反応するよ、「何でもないよ」と言われたら。人は何かを匿おうする時、必ず否定的な言葉を口にするが、それはただ単に言い訳に過ぎず、その言い訳に興味を持つのかは人それぞれだけれども、大抵言い訳の王道『何でもないよ』と言われれば、本能的にも気にかかるよな。

 なら、何の言い訳もなく、素直に――八面玲瓏に接してやれば、大丈夫かっていうと、そうでもないのは考えてみればフッツウに解ること。本音吐いた時点で実行されるのは必然。隠蔽したいことがある者は誰しもが言い訳をするんだから、その言い訳っぷりが平然であろうと、慌てていようと、必死に隠蔽しようとしている姿に嚙り付くのはやはり人間的な本能にあるのではないだろうか。

「だから、何も入ってないの」

「何でー気になるじゃんか~」

「あっ、そうそう、あるんだけど、結構ぐちゃぐちゃだから穂乃花に見せるにはあまりにもアレ、っていうか……」

 アレの定義は何だ。と言われそうだった。が、まだ小学6年生の、しかも女子が「定義」などという理数的な用語を知っているのかは疑問だ。

「アレってなにー?」 

 言いかえればそうなる。定義などという語彙は不必要。

 必死で見たがる穂乃花の体重の大半は美咲にかかっていて、鬱陶しく感じていた。こんな溌剌な好奇心を持つ女……これこそを男勝りというのではないだろうか。活気よく穂乃花は言う。

「ぐちゃぐちゃでもいいよ、見たい~」

「どうせ見たって何の得にもならないから」

「それでもいいの。美咲の家は全部見たいの」

 どれだけ俺に興味懐いてんだよ。逆に気持ち悪いぐらいだ。これだけ女子にもたれかかられるのも珍しいことじゃないけど、これはあまりにもしつこすぎる。このままずっと引かないつもりなのか。穂乃花はこうしてるわりには結構素直だからなぁ……昨日のこととか、すぐに諦めてくれたし。だからさ――。

「ダメ」

「見たいの!」

 ダァ! 解ったよ! 見せてやろうぞホトトギス。

「解った。ちょっとだけ」

 先のことなど介の知ったことではない。穂乃花の反応がどうであろうと、未来の自分がどうにかしてくれると信じて、介は穂乃花の入室を許可した。

 美咲は、自分の私物が置いてある物置の戸を開けた。そして――。

 美咲は目を疑った。介の見ている光景、それは美咲が見覚えのない部屋だった。なのに、穂乃花はてっきり物置だと思って同じく目を疑っている。部屋の造り、大きさなんかは通常とほとんど変わらない。

 だが、明らかに違っている。陽光が差し込んでいるにもかかわらず、ぼんやりとした雰囲気を漂わせている室内。右には黒色の名が簿沿いテーブルが置いてあって、妙なCDがいくつか散乱している。奥の方では、と閉じられたノートパソコンが一台と、電源の切られているデスクトップ型のパソコンが一台置いてあった。他にも、床には訳の分からないものがいろいろと放ってある。

 が、それすべてが美咲の見覚えのないもの。今まで倉庫には自分の私物が収められていると思っていた。なのに今は、誰かの仕事部屋みたいな質素な感じの部屋だった。物置はイズコに!?

「え、全然ぐちゃぐちゃじゃないじゃん」

 穂乃花は完全に信じ込んでいる。それはそれで良かったが、はてさてこの部屋は何なんだ。美咲は誰かの部屋だということを慮って、そぉ~っと部屋の中へと足を踏み入れると、窓際に迫った。

「なんじゃそれは」と言いたい気分を部屋の中に叩き込んだ。外は何の変哲もなかった。内部だけがごっそりと変化している。姉が何か細工したのかとも考えたが、そんな労働にへまをかけるほど馬鹿な姉ではないことは介にも解っていたし、それではここにあった物はどこに行ったのか、と疑問を募らせれば、それは今の介には解釈できる領域を超えていた。

 とにかく物置がそのままどこかへ行ってしまった、または別の誰かの部屋と入れ替わってしまった。と言うことになるが、それでは入れ替えられた相手がかわいそうだろう。よし、仕事するか、と入った部屋にいろいろと引っ越しで運ばれてきた山積みの荷物が保管されていたら、背筋が凍りつくに決まっている。介も正直凍りそうだった。

「どういうこと?」

 感付かれたとでも?

「何が?」

「物置じゃなかったの?」

「え、えっと、その……多分、この前お姉ちゃんが片付けたんだと思う。だからこんなに」

 姉ちゃんが片付けるわけねえよ。穂乃花には嘘を吐き、それを信じ込んでもらうしかない。今ここで自分しか知らない真実を訴えてしまったら、それはまた大問題。火に油を注ぐようなもんだ。一体全体どうなってるんだ。昨日のテレビのことと言い、現状と言い、変なことばかりが起こっている。介は混乱しつつある。

「そのパソコンは?」

「姉ちゃんが仕事で使ってるんだと思う」

「つけてもいい?」

 絶対拒否。これは他人のパソコンである。姉の物でもなんでもない。もしも起動してしまった場合、相手のプライバシーにも関与することになりかねないし、そんなことした日には穂乃花の疑いが頂点を極め、奇妙な世界に入り込んでしまった子供のような顔をして問いに問いまくってくるに違いない。そもそも、何故起動したがるのか理解不能だ。

 とりあえず、姉に訊いてくる、と言い訳して状況を報告しに行くことにした。話で解ってもらえるようなほど甘い事件ではない。実物を見てもらうしか方法がないのだが、その前に邪魔者――と言うのも悪いが――穂乃花を家から出さなければらない。

「穂乃花、ここで待ってて」

 リビングの外で待っていてもらうことにして、美咲はソファーに腰かけて雑誌を黙読していた姉に歩み寄った。幸いなことに千加は友達の家に遊びに行っていて不在だった。万が一2階に上がって物置を覗いた場合、大声を出すほかに手段を見つけられないだろう。

「お姉ちゃん」

「何?」

 姉は雑誌から目を離さずに言った。

「ちょっと耳貸して」

 ほとんどカスカスに近い声で介は姉に求める。穂乃花対策だ。地獄耳が非常に厄介な穂乃花が約半径5メートル以内の位置にいるとなると、どんな声で囁いても聞かれてしまうような気がして畏怖を感じてしまう。

 耳の近くまで口を寄せた美咲が姉に事情を話す。……

 しばらくして……。

「美咲、いいの~? でも、やけに静かねぇ」

 リビングの戸は閉められていて、さすが視力がいいと言っても遠し見することは不可能な穂乃花は、美咲の状況を気にして言いつけをしっかりと遵守して、沈黙している。と、

「あそこは私の仕事する部屋なんだから勝手に入らないでって言ったでしょ!」

 沈黙の中に飛び込んできた怒声。暗黙の宇宙空間で突如として起きた大爆発が比喩として挙げられるのではないか(宇宙空間で音は皆無だけど)。ビクッとして穂乃花は中の様子を気にし出した。

「もしかして、ダメなことしちゃった?」

 小声で呟く。美咲があれだけは言ってはだめだと言っていたのは、姉の仕事部屋だと解っていたから。ごちゃごちゃしているというのはすべて嘘で、本当は絶対に入らせないための言い訳。それでも入りたがった挙句に観念させてしまって内部に侵入してしまった。そして今、自分のせいで友達は怒られている。

「あたしのせいだったのかな」



 中では……。

「ナイス演技、姉ちゃん」

 介は微笑んでいた。

「これでいいの? ちょっと気の毒じゃない?」

「大丈夫だって。そんな動揺しないと思うから」

 そう言い、介はリビングのドアを開けた。外では穂乃花が微妙な表情を浮かべて待っていた。介も演技だということがばれないように伏し目にして、暗鬱っぽい印象を出す。動揺してるのだろうか、と考慮して介は相手よりも先に口を開く。

「ダメだって」

「そっか。ごめんね。入っちゃダメって言われてたのに」

「いいの。あたしもあそこがお姉ちゃんの部屋になってたなんて気が付かなかったから」

 お互いに言いたいことを言い合い、微笑を浮かべる。「じゃあ、帰るね」と、ついに観念したのか、美咲の家を出て行こうとする。勿論、それを止めることはせず、美咲は穂乃花を背中を押して玄関を出る。

「じゃあね」

 互いに別れの挨拶をして、美咲と穂乃花は別れた。美咲は穂乃花が見えなくなるまで見送った……。そう、いつまでも…………

 と、ここで終わるわけがない!

 穂乃花が視界に入らなくなったのを見計らって、介は自分の家に駆けこんだ。

「姉ちゃん、穂乃花帰ったから、早く2階に」

 急かせる介の後を追って、姉も2階へと上がっていく。

 姉が階段を上り、2階へ着くと、介はさっきまでパソコンが置かれていた妙な部屋のドアの前に立っていた。その表情は、俄然啞然としていた。

「どうしたの?」

 姉は介の傍らに立った。『2階の物置がなんか変な仕事部屋みたいな部屋になってるんだけど』と、さっき介から受けた伝言を思い出して、介と同じ場所を見る。介の証言によれば、パソコンが2台置いてある仕事部屋みたいになっているようだったのだが、

「戻ってる」

 介が啞然とした表情をした意味はこれだ。伴って、姉は期待を裏切られたような顔をする。変革が起きていると思っていたのに、結局目の当たりにできたのは元通りの物置だけだった。引っ越しして運んできた数々の余分な物。介の私物があちらこちらに散乱しているぐちゃぐちゃ級の物置――。

「何にも変わってないじゃないの」

「え、だってさっきは変な部屋だったのに」

「本当に見たの?」

「本当だって。穂乃花に訊いてみれば解るよ」

「でも、どうして部屋ごと変わるわけ?」

「解るわけないよ」

 もしかしたら、穂乃花に男だということがばれないように神様が気を遣ってきれたのかもしれない。そう考えると、神様は介が本当は男だということを周囲に流出しないように協力してくれているのかもしれない、と介は憶測した。一体、神様は何をしたいのか。

 そのことは心の片隅に置いておいた。しかし、さっき目撃した部屋は何だったのか。昨日の現象もなんだったのか。未来永劫の果てに消えてしまいそうな真相であるのか、はてさて近未来に巡り会うことができる真相なのか、それは今の介には解らなかった。

 ただ、元に戻った物置を見つめているしかなかった。

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