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天国と地獄と一人の男(仮)  作者: 末広 ガリ
地獄編~調教~
17/20

16.私は帰ってきた!

Side 龍哉


あれから180年…ルーシーも鍛練には精力的に取り組んでくれている。

途中からは親バカサタンも加わり、俺と一緒になって教えていた。

やはりルシファーの名は伊達じゃないらしく、こと戦闘に関してはかなりの才能を見せつけてくれた。

まぁ名付けたのは私だが…これは予想外だったよ。

誰に似たんだか本人の真面目で頑張り屋さんな性格もあって、将来的にはサタンよりも強くなりそうな気がする。

ちなみにいつの間にかポチも混ざっていて、こちらもこのままいけば相当な実力者になれるだろう。


「さて…誕生日おめでとう、ルーシー、ポチ。」


そう言って、彼女たちにプレゼントを渡す。

本当の誕生日など知らないから、一応拾った日ということにしておいた。

そして今日がその日というわけだ。


「ありがとな、兄さん。」

「「わん!」」「ばう!」


最近銀細工にハマっているのもあって、ルーシーにはネックレスを贈った。

ポチたちには、首輪に付ける骨型のマスコットだ。


「ほれ、つけてやるよポチィ。」


「「わん!」」「ばう!」


「わんわんばうー…っと、できたぞ。」


うん、いい出来だ。


「おー…ようできとるなぁ。俺にはこういう細かいのは無理そうやわ。」


「あぁ、そうだな。途中で嫌になって放り出しそうだ。」


「あぐっ…ハッキリ言いよるなぁ…。

まぁええわ、いつものことやし。…つーことで、俺からはコレや。」


「ほう…これはまた中々の逸品だな。」


「あぁ、そろそろルーシーも自分の武器をある程度決めておいた方がええと思うてな。

ちょうど200歳で節目やし、コレにしたわ。」


そう言ってサタンが出したのは、美しい装飾が施された大鎌だ。

鎌は扱いが難しいが、ルーシーなら上手く使うことができるだろう。


「これはいいものだ。良かったなぁルーシー。」


「うん!ありがと、おとん!」


「…つーか、宝石とか紐とか色々付いててマジ凄ェなこれ。かっけぇ…。」


「宝物庫から持ってきたからな。」


「なにそれいいなぁ…。なんか持ってこっかなぁ。」


「あかんで。あれは全部ルーシーにあげるんやから!」


「サタンのケチィ……いいもん。そのうち自分で宝物集めて、宝物庫らしきもの作っちゃうもん。

世界三大秘宝とか入れちゃうからな!」


「…そんなモンあるんか?」


「………なければ自分で作ればいいと思う!」


「知らんのかい!」


「フッフッフ…待っていろ、未だ見ぬ我が財宝たちよ!うははははははー!!」


「あかんでこいつ、早うなんとかせんと…。」




「さて、ということで、天界帰りまーす。」


「…ええっ!なんでや?宝か!?おとん、兄さんにもなんか贈ったって!」


「あかん!あれは全部ルーシーのや!」


「もうっ!おとんの分からず屋!」


「いや、違うからね。200年経ったし、そろそろ…もとい、いい加減一旦帰ろうと思っただけだからね。」


「そうか…そういや龍哉って、天界から修行に来たんやったな。」


「うむ。あとサタンに会うためな。

…魔法も大分使えるようになったし、気になることもいくつかできたから、そろそろかなと。」


「…また来るよね?」


「もちろんだよぉ。俺がいなくても頑張って修行しとけよ?」


「分かった、兄さん目指して頑張る。」


「大丈夫やでルーシー、おとんが龍哉より強い子に鍛えたるからな。」


「おとん強いけど、兄さんよりは弱いやん。」


「あぐっ…。」


「ハハハ…今日も楽しいなぁ。」



Side out








Side イシュタル(リーゼロッテ)



龍哉がHELLに行ってから、もう200か…。

ハァ…いつ帰ってくるんだろう。


「ユーニー、龍哉がいないとホントにつまんなーい。」


「そうですねぇ…いい加減帰ってきてもいいと思うんですが…。」


4000年以上も生きてると、200年なんて大したことない…大したことないんだけど…。


「それでもやっぱり、長いよなぁ…。」


「ええ…わたしなんか936「ちわー。ちわー。痴話喧嘩―。」…こ、この声はまさか…。」


「おーい。息子ォ、孫ォ、天使ィ、いるかー?いないかー?半分だけいるかー?」


「…間違いなく、龍哉だね。」


あんなこと言いながら神殿に入ってくるのは、龍哉しかいない。

やっと…帰ってきたんだ…。

遅すぎだよ。出会い頭に飛び蹴りかましてやる!


「いくよ、ユニ。」


「はいっ!」






「お?いたいた。たらいまぁ。」


「おっそーーい!」


ボクの華麗な飛び蹴りは、龍哉の鳩尾にクリーンヒット!…なんだけど


「んー久々の再会が嬉しくて胸へダイブ、なんてのはよく見るが、足からくる奴がいたとはなぁ。」


龍哉はビクともしなかった。

代わりに地面と水平のまま落下しそうだったボクを、彼が支えてくれた。


「くっ…たつぅ、また硬くなったんじゃない?今の本気だったんだけど…。」


「まぁそりゃそうだろ。そうでなければ行った意味がない。」


「龍哉の事だから、どうせまたとんでもない無茶な修行とかやってたんでしょ。」


「してないよ。俺はちゃんと自分の実力に見合った方法をだな…。」


「ボク達からしたら、無茶以外の何物でもないけどね。」


「それはそうだな。余裕で死ねるから、良い子は真似しちゃダメだぞ。

まぁそんなことより、二人とも久しぶりだな。待たせてごめんよ、ただいま。」


「ううん…おかえり。」「おかえりなさいです。」




挨拶を終えて、今ボクたちはパパがいる部屋へと移動中。


「――ところで、この200年で何か変わったことはあるか?」


「特にないですね。あ、でもリゼ様が鍛練を始めまして…。」


…あ、ちょっとユニそれは…!


「ほほう?それはまた興味深いな。」


「龍哉さんを手助けするんだって言って、色々努力していましたから。」


「もー恥ずかしいからそれは言っちゃダメでしょ!…ユニの方こそ、色々やってたみたいだけど…?」


「あわ、わたしは…その、戦闘面ではあまり役に立てなそうなので、他のことでご助力できたらな、と。」


「…?どうしたの、龍哉?」


龍哉を見るとキョトンとした顔をしていた。

何かあったのかな?


「…いや、こういうのってなかなか無いな、とね。」


「どゆこと?」


「こうやって誰かが力になろうとしてくれるのって、嬉しいもんだなぁと。

特に二人とは200年も離れてたのに、その間も俺の為に頑張ってくれていたなんてなぁ…ありがとう。」


「何言ってんのよ、言ったでしょ?力になるって。

それとも、ボクたちは200年離れたくらいで忘れるような薄情者だと思ってんの?」


「いや、そういうわけじゃないけどな。」


まだ不安…なんでしょうね。

龍哉の“もしも癖”は、裏切られ続けたことで安心できなくなってしまったからついたのかも知れないなぁ。


「とにかく、ボクたちはいつでも龍哉の味方だから、それを忘れないこと。分かった?」


「あぁ、分かったよ。」


まったく、ボクたちがあなたを裏切るわけがないんだから…。




Side out







「アヌ~おひさ~。」


さて、三人はアヌのいる部屋へと到着したようだ。


「…お父さん!戻られたんですね、お久しぶりです。お元気でしたか?」


久々の再会と言うことで、アヌも喜びを隠しきれない。


「あい、パパはいつも元気よ~。死なないからね~病気とかもないみたいだね~。」


「そういえばそうでしたね、どうでした?HELLは。」


「んー…暗かったよ。」


「…それだけですか?」


「…うん。」


一応考えてはみたものの、特に何も思い浮かばず、アヌの言葉を肯定した龍哉。

彼にとってHELLそのものは、ただ暗いだけ程度の印象だったようだ。


「あぁ…はい…。サタンさんの様子はどうでした?」


気を取り直して…。


「元気です。サタンはおとんになりました。」


「ええ!?サタンさんご結婚されたんですか!?」


一万年以上も独身を貫いたサタンが、今になってなぜ…そんな疑問が、アヌの頭にはあった。


「んーん、してない。たまたま捨て子を拾ったから、俺と二人で育てたの。なぜか俺は兄扱いだったけど。」


「ハハ…サタンさんと比べたら、年齢的にはかなり若いですしね。

見た目もお父さんは20代前半くらいですし…。」


「まぁ早死にだったし、まだ父親って感じの見た目じゃねーよな。

実年齢からすると、孫以下が何十人かいてもおかしくないけど。」


「ある意味では、いるんですけどね。」


龍哉が神のままであったなら、この天界には100を優に超える数の孫たちがいることになる。


「うん、そうね。それで、HELLにいる間にアヌに聞きたいことができたわけ。」


「?…なんでしょうか?子育ての事ですか?」


「違います。いくつかあるんだが…とりあえず一つ目な。

この世界…いや、お前の知っている世界の中に、どんな攻撃も効かない者は存在するのか?」


「えーと……いませんね。」


「そうか。他の神たちに聞いても、同じ答えか?」


「だと思いますよ。そんな存在、私たちの中ではありえないですからね。」


「ふむ…。ではこの天界についてだが、神たちは人間界を管理しているのかね?」


「そうですね、それが仕事です。と言っても、基本的には干渉はしませんけど。

実は世界はいくつもあって、お父さんがいた世界だけを見ているわけにはいかないんですよ。

所謂、並行世界というヤツですね。」


「だよなぁ。世界が一つなら、リゼ一人にあんなに仕事があるわけねえもんな。

…で、だ…人間界にとっての神のように、天界を管理しているヤツはいるのか?」


「それは…いないはずです。以前言った通り、天界でも大きな戦争がありましたから。」


「……なるほどな。

もしそんなヤツらがいるなら、人間界の緊急時に神が出向くように、先の大戦レベルの事態の時に動かないはずがない、と。」


「その通りです。

あの時は結局お父さんが鎮めましたが、それがなければ天界だけではなく人間界、冥界、地獄、その全てが崩壊していたでしょうから。」


「ふむ……じゃあ最後ね、その当時の俺自身が、天界管理人という可能性は?」


「…どうでしょう。ただ、私が昔お父さんに聞いた話では、お父さんは…と言うより、お父さんの世代の神や悪魔は皆『無』から生まれたそうです。」


「なるほど…分かった、ありがとう。」


「いえ。ところで、どうしてこんなことを?」


「いやーどこまで強くなればいいのか、とかまぁ色々思ってね。

“もしも”を考えたら正直キリがないからさ。」


「………正直、今世界で最も強いのはお父さんですよ。」


「ふーん………えっ?」


「私の見た限りでは、お父さんの魂はもう完全に修復されています。

それと共に神だった頃の本来の強さ…と言うより才能ですね。それが戻っています。

お父さんは地獄からこっち修行漬けでしたから、圧倒的な速さで成長したようですね。

まぁ今は天界も平和ですし、神にも強くなる意味があまりないんですよ。

もちろん邪神が出た時のために、ある程度は鍛えてありますが。」


「そうか…そうだったか…。

強くなることに集中しすぎて、周りを見ることを疎かにしすぎたのかな。

いつの間にかそこまで強くなっていたとは…。」


「たった1700年で私たちをごぼう抜きなんて、さすがですね、お父さん!」


「いや、『たった』なのか…?まぁ神の年齢にしてみればそんなもんか…。

つーか、俺って人生の99%を修行に費やしていたんだな。」


「これも偏にお父さんの並々ならぬ努力あってのものですよ!

いやー最強かぁ…ホント凄いなぁ。」


目を輝かせながら龍哉を見るアヌ。


「……お前も、男の子だったんだな。」


ちなみにその頃リゼとユニは…



「「あの……ハァ…。」」



空気であった。


最強なんて陳腐な言葉はあまり言わせたくありませんが、まぁ簡潔で分かりやすい表現ということで。

今更ですが、数字と漢数字が入り乱れているのは気にしないように。

残り二話(後書除

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