12.リゼと
この話の頃からさっさと次作を書きたくなったので、読み返すと粗が目立ちます。
更新の間が空いたのには、特に意味はないです。
Side イシュタル(リーゼロッテ)
今日はあの話を聞いてから初めて龍哉の家に行く日だ。
龍哉って何でもできそうだけど、鍵の事と言いたまにスゴク抜けてることがあるし、ボク達がしっかり支えてあげないとね…!
それにしても、龍哉と出会ってからは毎日彼のことを考えてる気がするなぁ。
エンマも変なこと言うし、余計に意識しちゃうじゃない…。
ユニも満更でもないみたいだったし、もし二人で龍哉を取り合うなんてことになっちゃったらどうしよう。
ユニとそんなことになるんだったら、三人で一緒にいられる方がいいよね…。
…って、まだ龍哉のこと好きかどうかも分からないのに、気が早いよ!
「?…どうしました、リゼ様?着きましたよ。」
「へ?あ…あぁ、うん。そうね、着いたわね!」
いけない、いつの間にか龍哉の家まで来てたみたい。
ハァ…ボクも随分と長く生きたけど、恋愛なんか興味もなかったからなぁ…。
こんなに考えさせられるなんて、まだまだ子供だったってことかな。
「ふふ…変なリゼ様ですね。
ごめんくださーい、龍哉さーん。」
今日は前もって連絡しておいたから、この間のようなことにはならない。
「おう、いらっしゃい。」
「こんにちは、龍哉。」
「龍哉さんこんにちは。」
「あい、こんちゃ。
何もないところですが、どうぞお入りくださいませませ。」
きょ、今日はまた一段とアレなキャラね…。
………。
……。
龍哉の家でしばらく他愛もない話をしていたボクらだったけど、そろそろあの話を切り出さなきゃいけないなぁ。
でもいざ話すとなると、いいタイミングが…。
「…あ、そうだ。後で鍛練に付き合ってくれない?
この間は攻撃を受けるだけだったしさ、神相手にどれだけ通用するか試しておきたいんだけど。」
「相変わらず鍛練ばっかねー。いいよ、今日こそコテンパンにしてあげる。」
「ありがとう。よろしく頼むよ。」
「あの、龍哉さんって…何でそこまで強さを求めているのですか?」
「生きている頃誰にも助けて貰えなかったし、死んでからもそうだろうと思ってな。
もしもの時に今の幸福を守るために、私は単純な武力だけではなくあらゆる分野で頂点に立ちたいんだよ。
今まで武力を重点的に鍛えていたのは、何かを守る際に最も必要とされるものだからだ。」
…ハッ!今しかない!これを逃したら言い出せなくなってしまう。
もう独りじゃないってこと、きちんと伝えなきゃ。
「そっか…でも今はボクたちがいる。
この間龍哉に言われた通り、エンマの所に行ってきたよ。あなたに何があったのかも見せてもらった。
…ボクもユニも、絶対に龍哉のこと裏切ったりしない。エンマたちだって同じはずだよ。
だからあなたの背負っているものを、ボクたちにも一緒に背負わせて。」
ユニも真剣な面持ちで龍哉を見つめている。
「うん、いいよ。」
「ありがとう…って、即答だったね。」
「まぁ基本的に来る者拒まずな人間だから。
だからと言って、二人の事を信じてないってわけじゃないから安心して。」
…もしかしたら、ボクたちが裏切っても彼は構わないのかも知れない。
内容にもよるけど、多分悲しむだけで、ボクたちを責めたりはしないだろう。
彼にとってはそれが普通だったから。
それに自分を傷つけた相手に対しても、報復なんて絶対にしなかった優しい人。
ま、ボクたちは裏切らないし、それはいいか。
時間はいくらでもあるんだし、本気で認めてもらえるように頑張ろう。
「そして了承したとは言え、鍛練をやめるわけじゃないから、俺に負けないように頑張ってね。
ん?別に勝つ必要はないか。100+50で150になればいい話だもんな。」
また一人で納得してるわね…。
「ま、具体的に何をするつもりなのかは知らんけど、改めてよろしく。」
う…ボクたちも別に具体的なことは考えてなかったなぁ。
……一緒に過ごしてるうちに見つかるよね、きっと!うん!
何はともあれ…
「よろしくね。」
「よろしくお願いします。」
Side out
Side 龍哉
リゼ達が妙な提案をしてきた。
なんでも、儂の背負っているものを一緒に背負いたいそうだ。
断る理由もなかったし了承しておいたが、どうなることやら。
ただ、ああやって言ってもらえるのはやっぱり嬉しいのかね。自分が喜んでいるような気がするよ。
この二人なら、裏切らないでいてくれるかもしれないな。
「さてと、そんじゃあ親睦バトルといきますか。」
もっと強くならないとな。
こうなったからには、二人の事も守らないといけないし…大変だなぁ。
あれ?儂の負担増えた?
うーん…こういう状況は確か、「仲間がいれば力は何倍にも跳ね上がる」とかそんな感じのヤツだったかねぇ。
ちょっと違うか、「仲間を守れば、仲間が守ってくれる」みたいな感じが近いかな?
まぁそういった話がホントかどうかは知らんけど、とりあえず儂のすることは、相変わらず自らを高めることだけだな。
「では、始め!」
そうこうしているうちに、始まっちまった。
「……一筋の光となりて 彼の者を撃ち抜け Ärger von Gott《神の怒り》!」
早速仕掛けてきたな。とりあえず気を満たして防がせてもらうか。
…今リゼとの距離は、40m程離れている。
恐らく向こうは魔法主体で遠距離から攻撃してくるだろうが、対するこちらは何の変哲もない棒切れ一本のみか。
いやあ…どうやって勝とうかねぇ。
とりあえず、突っ込んでみますか。
……。
…。
雷って…やっぱり速いんだな。
あんなんほとんど避けられねえよ。
持っている手札的に、結局は被弾覚悟の突撃戦法しかなくね?
しかも防御のみに集中しできない分、ダメージを負いやすいし…。
近接しかできないって、辛いな…。
これ終わったら鍛冶の勉強して、遠距離用の武器を作ろう。できたら魔法も覚えよう。体ももっと鍛えよう。
今のままじゃ、相手が二人以上きたら勝てねぇよ。
つーか、とりあえず目の前の勝負に勝たねぇとな…。
「さて、どうしますかね。」
リゼは最初のヤツよりも威力は落ちるが、その分連射の効く魔法を放ってきている。
まだ隠し玉もあるかも知れんし、このままここで防ぎ続けて魔力切れを待つ…なんてのは得策じゃねぇな。
そもそも、そんなんで勝っても、本当に勝ったとは言えねぇしな。何より自分の為にならん。
うーん………そういえば、気って放出とかできるんだったな。
何度かやってみたが、身に纏うのとは違って難しかったのを覚えている。
今まではとにかくコントロール重視に鍛えてきたから、できるかどうか…ん?コントロール重視に鍛えたなら、むしろできるんじゃねーか?
えっと、まずは武器に気を送ってと…振り下ろした軌跡が、そのまま飛んでいくイメージで振り抜くっ…!
「っ!…さすがだね、こんなこともできたなんて…!」
おお!きたきた!
ククク…これは…正直面白いぞ。
漫画やアニメでしか見たことのなかったことを、自分がやっている…アツいな!実にアツい!
おじさん調子に乗っちゃうゾ☆
「ちょ、多過ぎっ…だよっ!」
「とりゃっ!えい!そら!ほいっ!おらあっ!そーれっ!」
フハハハハハ!ニヤニヤが止まらないじゃないか!
しかし…威力はまだまだだな。
やはり練習しないと十分に使いこなせんようだ。
「チッ…こうなったら…!……天駆ける雷よ…」
…ん?
周りが暗くなってきたぞい。
「…数多の槍となりて降り注げ」
初めて聞く呪文だな…。
以前やった時にも唱えてなかったハズだ。
「!……リゼ様それは…ッ!」
「Das Urteil von Gott《神の裁き》!」
「…えっ?」
なにこれ…もしかしてヤバイんじゃね?
なんか降ってくるんですけど!雷っぽいのがたくさん降ってくるんですけど!
「ちょ、多過ぎっ…だよっ!」
マジで多いよ!つか痛ぇ!
この魔法はヤバイ。このまま受け続けてたら死んじゃう!
って、今のはさっきリゼが言ってた台詞じゃん!
「これは…屈辱だな、うん。」
俺は劣勢を巻き返すために、意識を集中して体に残っている気の大半を武器に込め、リゼに突っ込んだ。
防御力が落ちたために、雷が当たった部分が黒く焼け焦げていく。
「やっぱり、最後にはこんな形になってしまうのかなぁ。」
なんて呟きつつ、被弾覚悟の突撃。
先程と違うのは、受けるダメージの多寡と、避けること、当てることへの集中力。
大魔法を使った反動か、リゼには次の魔法を放とうとする様子はない。
詰まる所、ここが勝負時。
出来る限り雷を避けつつ、リゼに気をぶつける。
それができれば、恐らく勝ちだ。
リゼも迫る俺から離れようとしているが、幸いなことに移動スピードは肉体的な鍛練を長く積んでいる、俺の方に分がある。
全身に傷を負いつつも、攻撃が確実に当たる距離まで詰めていった。
「…ここだろ。っ…らあっ!」
俺の放った斬撃は、当たった雷を吹き飛ばしつつリゼの足元へと一直線に向かい…
「きゃあっ!」
地面に当たった瞬間に弾け、足元が揺らいだリゼをその衝撃で以て数メートル先まで飛ばした。
「よしきた。」
起き上がろうとするリゼが次の手を打ってくる前に、距離を詰める。
「ふぅ…俺の勝ちだな。」
そして彼女の首元に棒を突き付け、勝利を宣言した――
Side out
Side ユニ
「おーいユニたーん。終わったからリゼの怪我治してやってくれィ。」
「はーい!」
神や天使はこの世界で“生きて”います。
龍哉さんたち人間とは違い、お腹も空けば眠くもなる。
要するに、怪我は治さなくてはならないのです。
龍哉さんは、前にわたしが治癒魔法が得意だと言っていたのを覚えてくれていたようです。
「お疲れ様です。大丈夫ですか、リゼ様?」
二人のところへ駆け寄ったわたしは、倒れているリゼ様に問い掛けつつ、自分でも確認をします。
龍哉さんのことですから、それほど大した怪我は負わせていないと思うのですが…。
「…っと、この程度ならすぐに治りますね。
……Heal wind 《癒しの風》!」
リゼ様の怪我は想像以上に軽く、倒れた時に肘を擦りむいた程度でした。
わたしが呪文を唱えると、瞬く間に傷が治っていきます。
「ありがと、ユニ。」
「ま、女の子なんだし小さくても痕が残ったら嫌だろう。
完璧に治してやってくれい。」
「大丈夫です龍哉さん。
既に完治しています…って、そう言えば龍哉さんはなんで無傷なのですか?」
「あぁ、心臓潰して再生した。この方が手っ取り早いんだよねぇ。」
い、いつの間に…。
わたしだったら、怖くてそんなことできませんよ…。
「龍哉…いくら死なないと言っても、普通そんな治し方はしないよ…。」
Side out
治療も終わり、三人は現在反省会の最中だ。
「…しかし、俺も魔法使えるようにならんかね。
正直ギリギリだったぞ、今回は。」
やはり魔法使い相手に、近接特化である今の状態は辛いようだ。
「あー…気は誰しもが1は持ってるけど、魔力は逆にほとんどの人が0だからねぇ。
で、ボク達じゃそれは判別できない。神なら無条件で魔法を使えるから、基本的に見分ける必要がないんだよね。」
「マジかー…。なんかいい方法ないの?魔力感知とか。」
例えば簡単な魔法を唱えてみて、発動しない=魔力がない…とは限らない。
その系統に適性がないだけかも知れないし、或いは単に練習不足かも知れない。
そのためこういった時に魔力感知ができる者がいると、一発で判別できてよいのでは…と言う考えの龍哉。
「あの…アヌ様でしたら、それも可能かと…。」
「あーそう言えば、パパはそんな能力持ってたっけ…。
うん、じゃあ帰ったら伝えておくよ。それで今度家に招待するから、その時に見て貰おう♪」
「え、いいのか?神の家なんて、人間は入っちゃいけないようなイメージなんだが…。」
「それについては問題ありません。
聞いた話によると、何千年か前にこっちの世界で戦争があり、それが終わってからは割と寛容になったそうです。」
「ふーん…じゃあお願いしようかな。」
「りょーかい♪」
こうして龍哉はリゼの父であるアヌ神に、魔力を持っているか見てもらうこととなった。
たまたま知り合った者の父がそういった能力を持っていて、何の障害もなく調べてもらえるなど、龍哉にしてみれば生前では考えられぬ幸運であった――
Das Urteil von Gott《神の裁き》――天より降り注ぐ雷の雨…詠唱通りですね。広範囲高威力。やっべえ強い。
Heal wind《癒しの風》――まんま治癒系。骨折未満くらいの怪我を治す。威力が低い代わりに範囲が広い。
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魔法やらの日本語じゃない部分は割と適当です。
ドイツ語やラテン語の文法…どころか、単語の意味すら知らないので、翻訳サイトやら辞典やらを参考に、恐らくこんな感じなんじゃないかなぁ…と。
雰囲気だけでいいんですよ、隣に日本語が書いてあるんですから。
一応調べるのは多少頑張っているので、褒めてくれてもいいですよ。
魔力に関してはこんな感じの設定で。
まぁ結局、神やら悪魔やらはみんな持っているので、ここではあまり関係はないです。
次作のための伏線みたいなもんです。
そう言えば前話で、ようやく龍哉の口調の話が出せました。
これで心置きなく口調を変えられます。
読み辛く感じるかもしれませんが、長年染みついた彼の癖らしいので仕方ないですね。