10.新たな出会い
ようやく女の子が出せました。
キャラが固まってないのでちょっとふわふわした感じです。
Side ???
「フンフンフーン♪」
今日は久しぶりの休みの日ということで、現在お出かけ中。
目的地の湖は、もう目の前だ。
今日は何かイイコトがありそうな気がする。
「もう、リゼ様ったら、相変わらず歩くの早すぎですよぉ。
…仕事は遅いのに(ボソッ)」
お弁当を持ったユニが、少し小走りになりながらついてくる。
この姿が可愛くて、ついついいじめたくなっちゃうんだよね。
「ちょっとユニ?今何か聞こえた気がしたんだけど。」
「え?きき、気のせいですよ!」
まったくこの子は…最近遠慮しなくなってきたね…ボクが神だってこと、忘れてるのかな。
…いや、あの引っ込み思案がここまで話せるようになったんだから、これはこれでいいことか。
ま、ボク以外の人たちの前じゃ、未だにしどろもどろになっちゃうみたいだけど。
「…あー、やっと着いたぁ!」
ユニが一休みしたそうだし、一旦休憩しますか。
んーと、どこかいい場所は、っと…人がいるなんて珍しいね。何してるんだろう。
「何してるんですか?リゼ様。」
「ん、人を見つけたからちょっと話しに行こうかと思ってねー。」
「あわ、知らない人ですか?緊張してきました…。」
「あはは。別についてこなくてもいいんだよ?
ユニはここで休んでなって。」
「いえ、部下としてついていきます!
わたしの見ていないところで、リゼ様が誰かに迷惑をかけないか心配ですから。」
…この子の中で、ボクの評価はどうなってるんだろう。
そんなに周りに迷惑はかけてないつもりなんだけどなぁ…。
「大体リゼ様は自由すぎるんです。
この間も仕事をさぼったリゼ様を探してみれば、他の神のエリアに勝手に入ってるし…。」
訂正、それなりに迷惑はかけてたね。主にこの子に。
「あーハイハイ、以後気をつけまぁす。」
「もうっ。その台詞も、今までに何度聞いたことか…。」
「まぁまぁ、せっかくの休みなんだし、とりあえずその話はいいじゃン。
それより、早くあの人のとこに行ってみようよ!」
なーんか妙な感じなんだよね。
身に纏う空気が違う、みたいなさ。
ってことで…
「こーんにーちはっ!
何してるの?」
Side out
Side 龍哉
「こーんにーちはっ!
何してるの?」
天界に来てから35年が経った。
その間も体が鈍らぬように、そして更なる高みへいくために、毎日鍛練は積んでいる。
湖の側で瞑想をしていると、見知らぬ二人の少女――いや、こんな世界だ、見た目の年齢は当てにならんか――ともかく、その二人の内の活発そうな方の子が話しかけてきた。
「鍛練…の中の瞑想。」
「ふぅン。武人…ってヤツ?」
「いや、うーん…どうだろうね。一種の趣味かな。」
人間界に居た時に武道を嗜んでいたわけじゃないし、鍛えていたのは地獄でも生き抜くためと、念の為ってだけだし…。
「それにしては、一流のオーラ?みたいなのがあるよ。」
「あぁ、1000年以上鍛えてるから、それはあってもおかしくないかもな。
実際、その鍛練が認められてここ(天界)にきたわけだし。」
「1000年…!わたしより凄い年上だ…。」
「へぇー。そんなに続けて飽きないの?」
もう一人の大人しそうな少女が何やら言っていたのを華麗にスルーしつつ、興味津々とばかりに尋ねてくる女の子。
後ろの子が微妙に悄気てるぞ…。
「たまに飽きるね。もともと飽き性だし。
でも壁を乗り越えるのは楽しいし、必要なことだから続けてるよ。他にやることもないしな。
武術に限らず、趣味なんてものは大抵そうじゃないか?
最初から最後までずっと飽きないなんてのは珍しいだろ。」
「それは確かにそうだね…。
ところで、どのくらい強いの?」
「知らんがな。
…まぁ少なくとも、地獄の獄卒が全員でかかってきても、無傷で倒せるくらいの力はある。
こっちに来てからは試合を一度しただけだけど、その時は天使相手に簡単に勝利できたよ。」
「え゛…それで少なくともって…強すぎじゃない?
あなた人間だよね?」
「それ、前にも聞かれたよ。
俺の1135年前の記憶が正しければ、人間だ。
ただ、どうやら成長限界がないようで、鍛えれば鍛えるだけ強くなるんだな、これが。」
「うわ…ますますあり得ないでしょ。
今度アヌ父さんに聞いてみよっと…。」
アヌ…?変な名前だな。
外国人か或いは…神か。
「てゆーか地獄にいたんだね。
それで天界に来るっていうのも、聞いたことないなぁ…。」
グイグイくるなぁ、この子。
まぁ嫌な感じはしないけどさ。
「あぁ、色々事情があってな…。エンマが初めてのケースだって言ってたよ。」
「へぇー…あなたって、なんか面白い!ボクの真名を教えてあげる。」
「へ?ちょ…ちょっとリゼ様いいんですか?そんな簡単に真名を呼ばせて…。」
【真名】
神が神としての名とは別に、持っている名前で、神同士であっても簡単には呼ばせない。
自分でつけるか、親(のような関係の神)がつける場合がほとんど。
つけない者もいる。
信頼や愛情の証として、預けることが多い。
…確かイード氏がそんなことを言っていたな。
「他人の判断基準にとやかく言いたくはないけど、そっちの子の言う通り、俺に呼ばせるのは早計じゃあないかね?
つーか真名があるってことは、やっぱり神だったんだな。」
「バレてたか…そう、ボクはイシュタル。真名はリーゼロッテだよ。
…ふふっ、初めて男の人に真名を教えちゃった♪」
…言っちゃった。
「…言っちゃった。」
どうやら後ろの子も同じ思いを抱いたようだ。
つか初めてかよ…いいのかこんなんで…。
「あー…まぁ言っちゃったもんは仕方ねェな。
確かに預かったぞ、リーゼロッテ。
後ろの子はリゼって呼んでるみたいだし、基本的にはそう呼ぶことにするからな。
そんで俺の名前だが…神代 龍哉だ。」
「龍哉か…これからよろしくね。
あ、紹介しなきゃ…この子はユニ、天使だよ。」
メソポタミア神話の神がなんで天使といるんだ?
聞いた話によると、色んな神話がごっちゃになったような世界らしいし、そう考えるとアリ…か?
「え、えと…ユニって言います。
リゼ様の補佐をしています。よろしくお願いします、龍哉さん。」
「あぁ、よろしくな。」
「それであのえっと…もうお分かりかも知れませんが、リゼ様はとても自由奔放な方です。
色々と迷惑をかけることもあるかと思いますが、根はとっても優しい方ですので、あまり怒らないでくだしゃいっ。」
噛んだ。
こりゃあ自由な上司に色々と苦労していそうだな…。
「くっ…正面から反論できないのが悔しいっ。」
「どうせ自業自得だろ。
まあ、俺はそういうの気にしないから大丈夫だよ。酷くなければ。
さて、それはそうと…君達、火と氷以外の属性の攻撃手段は持ってるカネ?」
Side out
Side ユニ
リゼ様と来た湖で出会ったのは、龍哉さんという男の人でした。
離れて見ていた時は、かっこいいけど、おっきくてちょっと怖いなぁ…なんて思っていましたが、話してみるとなんだか安心するような雰囲気の方でした。
それに今は天使のわたしも、元は人間だからか、少し懐かしい感じもします。
ともかく自由なリゼ様と違って、常識を持った人でよかった…。
――そう思っていた時期が、わたしにもありました。
「…君達、火と氷以外の属性の攻撃手段は持ってるカネ?」
「へ?ボクは雷の魔法なら得意だけど…それがどうかしたの?」
「イヤ、それをちょっと私に向けて撃ってくれないカナ、と思ってネ。」
突然口調が変わったと思ったら、彼はおかしなことを言いだしたんです。
「困ってたんダヨ、なかなか魔法を使える神仏に会う機会がなくてネェ…。
君達に出会えてよかッタ!今日と言う日に感謝だネ!」
「状況が違えば口説き文句だよね…てかマゾなの?」
「どちらカと言うと、サドだヨ。
ただ鍛練ノ為ニ、火や氷以外の属性も受けておきたいンだ。
「そう…いくら地獄の鬼の攻撃を防げたって、ボククラス…つまり神の攻撃の威力はハンパじゃないよ?」
「大丈夫、元々死んでいる体だから、すぐに復活できるサ!さあ、思いッきりヤッちゃってくれヨ!」
「生死云々じゃなくて、痛みの方を心配してるんだけど…。
まぁいいわ、それじゃ、いくよ!」
そう言って、リゼ様は呪文を唱え始めました。
「……一筋の光となりて 彼の者を撃ち抜け Ärger von Gott《神の怒り》!」
詠唱が終わるとリゼ様の前に魔法陣が現れ、そこから龍哉さんに向かって雷が…ってちょっと、それAランクの魔法じゃないですかぁ!
当然、避ける間もなく直撃。わたしは急いで彼に駆け寄ります。
「だ、大丈夫ですか!?リゼ様、やりすぎですよ!」
「あ、あはは…大丈夫だって、死なないんだし!」
「だとしても、痛みのショックで精神が壊れたりとかしたらどうするんですか。」
「そうだな、俺以外の人間には気軽に放つんじゃないぞ。ただの人間にこの威力はヤバい。
それより、もっと高威力の魔法はないのか?」
「そうです!龍哉さんだったから無事で済みましたけど………無事?…何で無事なんですか!?」
「天界へ来て“気”の素質があることが分かったんでな、勉強して扱えるようにしたんだ。
今のはそれを耐久力を高めるのに使っただけ。
とは言え、生還したが無傷じゃないぞ?ホラ、ここに傷ができてるじゃないか。
やっぱり慣れない属性+神ってのは凄いな。気の扱いもまだまだだし…さ、次いこ次。」
「そんな小さな傷は、傷の内に入りません。
と言うか、さりげなく次の魔法の催促しないでください。
リゼ様も、『今度こそ…』とか呟かないでください!」
「…ユニ、強くなるってのは、俺の楽しみの一つであると同時に、必要なことでもあるんだ。
もし明日にでも神が戦争を始めたらどうする?いくら不死とは言え、人の身ではただじゃ済まないだろう。
全国耐久力選手権が開催されたら?
愛娘が、『強くないパパなんて嫌い。うざい。お風呂は最後に入ってね。』なんて言い出したら?
そんなもしもの時の為に、最強たれ、至高たれ、だ。」
こ…この人、変です!
カッコイイことを言っているようで、ちょっとズレてると思ったら、実は大幅にズレていた…という感じです。
リゼ様!『パパ…強く生きて…』…じゃないですよ!
「さ、分かったら危ないから少し離れてなさい。
これからリゼが、さっきよりも強い魔法を放ってくれるそうだからね。」
…もう、諦めよう。
――その後、リゼ様はS+ランクの魔法まで撃ち出しましたが、結局龍哉さんは傷を負いながらも一度も死ぬことなく防ぎ切り、リゼ様の魔力が切れて終了となりました。
そのまま三人でお弁当を食べたりした後、それぞれの家へと帰りました。
その日の夜――
「ユニー、今日は面白かったねー。」
「そうですね。
お二人が闘い(?)を始めた時はどうしようかと思いましたが…。」
「そんなこと言って、ユニだって結構楽しんでたんじゃないの?
ボク以外の人の前でユニがあんなに話せてるところなんて、初めて見たよ。」
「へ?…確かに、あまり緊張せずに話せました。
試合中に色々話したおかげで、その後も普通に接することができたんでしょうか。」
もちろん魔法を受けることが主だったと思いますが、モジモジしているわたしを見て、気遣ってくれたのかな…だったらいいな、なんて。
…と言うか、思い出したら恥ずかしくなってきました。
「しかも初対面だって言うのにねぇ。
…あの常識外れな強さと言い、その雰囲気と言い、不思議な子だったよ。
ボクも結構長く生きてるけど、初めて会うタイプね。」
「確かここに来る前は地獄にいたそうですね。何があったんでしょうか…。」
多少ズレてることを除けば、とても優しくていい人でしたし、なんであんな人が地獄に…それに、偶に見せていた悲しそうな顔は一体…。
「うーん、気になるわね…。
でもまぁそれは置いといて、ユニ!明日も龍哉のところに行くよ!」
「ええっ!?だ、ダメですよ、仕事があるんですから。
龍哉さんのところに行きたいなら、早く終わらせて休みを作ればいいんです!」
「ぶー…少しくらい、いいじゃーん。」
「ダメです。またアヌ様にお説教されても知りませんよ。」
「うげ、それはもう勘弁…。
分かった、ちゃんとやるよ。」
「初めからそうすればいいんです。わたしも手伝いますし。」
…わたしも、行きたいですしね。
――そうして翌日から、以前より仕事に励むようになったリゼ様が見られるようになりました。
…龍哉さんに会うためだと思うと、なんだかわたしも普段よりやる気が湧いてくる気がします。
初めて感じるこの気持ちは、一体何なのでしょうか。
「…ユニちゃーん。何か微妙に乙女な空気を感じるんですけどー。」
「へ?何ですかそれ。そんなことありませんよっ。」
「うーん、怪しいなぁ…。」
Ärger von Gott《神の怒り》――術者の前方に魔法陣を出現させ、そこから雷を放つ。威力は前話の《栄光の十字架》と同じくらいっぽい。あ、威力の話は、同じ人が使った場合です。込める魔力量によって上下します。
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真名の設定が全く役に立たないのですが、もう少し可愛い名前にしたかったので無理矢理つけました。
リゼに関しては名前も呪文もドイツ語で統一しています。
作者が忘れたり、龍哉が別言語の魔法を使わせない限りは、そのままの筈です。