祇園
弘法市は、毎月二十一日に行われる東寺でのバザーである。
「この行列は何じゃけ?」
蛍は、寺の中に続くであろう行列を横目で見ながら言った。
「護摩木じゃろうて」と、谷田が答えた。
「お焚き上げのことじゃけ?」
谷田と蛍の前を、黒澤と花が歩いていた。
二人は、途中の古着に引っ掛かっている。
「お炊き上げとは、ちーと違って、怨念をこめた願いを、僧侶が経を上げながら焚き上げる。言うなれば、イレギュラーな悪魔への願いじゃけ」
谷田の言葉に、「ほう、ほう」と、蛍はうなずいた。
花も蛍も十八になり、黒澤と谷田は二十一になっていた。
「祇園もスーパーマーケットのようになったじゃけ」
突然割りいるように花の横で、古着の着物を見だした女は、どぎつい化粧をしている。
「自分だけセックスしない、すました女が祇園にいるらしい」
女がそう言うので、花はその女の後ろの男の顔を見た。
男は、「いやいや」というように、首を振った。
「なんせ、男のことだ。その女欲しさに、高嶺の花じゃけとかいうて、マネージメントをはずむじゃけ」
女がまた言うので、花は今度は、自分の後ろを見た。
黒澤が買う着物を決めたようだった。その他には誰もいない。
「この京都で、洋服張って、客にまじない絡みのようなことをやる・・・確か・・・鴨川沿いから先斗町に移ってきた・・・何と言ったかのう・・・」
今度は、その女ではなく、追いついた蛍が、わざとらしく着物を見ながら言った。
「祇園祭とは、たらたらやるじゃけ。おかげで南座は繁盛しとる。そこに付け込んで悪いじゃけ?」
女が蛍の顔を見る。
谷田が来て、「先斗町の名物のサヤカさん、今日はその辺にしてまっしゃろ」と言った。
花が、「もしや、マーケのサヤカさんじゃろうか?」
すると女がいきなり、「失礼な!」と言った。
そこで蛍が、「アハハ!」と笑った。
黒澤が、「行くじゃけ」と、みんなに行った。手には紙袋を持っている。
女が、「おおきに」と、黒澤に頭を下げた。
黒澤はサヤカに言った。
「その紫がいいじゃけ」
サヤカは、ちょうど手に取っていた着物を見た。
蛍が、花のあとを追いながら、「護摩木燃やすなら急がんと」と言った。
谷田が、「ほな」とサヤカに言うと、サヤカは、「おおきに」と、深々と頭を下げた。
祇園の店は、皆伐を中心として、レートに乗った。
静香は、定期的に南座で舞台を踏んでいた。
皆伐の店は、祇園のほとんどをしめ、その力は怪物的になった。
娼婦と言いながら、座敷にでない高嶺の花として花は存在していた。
客がおもしろがってマネージメントを弾んだのを機に考えた、「お花代」は、功を評していた。
東寺の五重塔を、四人は見上げた。
けして入れない五重塔は、あやかしでも飼っているかのように、おどろおどろしい。
着物の他に、谷田が、骨とう品のつぼを買っていた。
「道端にもいっぱいあったじゃけ」
蛍が言うと、黒澤が言った。
「道端のは、全部嘘じゃけ」
谷田が、「キタキツネのえさじゃけ」と言った。
帰り際、白蛇を見た。
花は、東寺の門を出ると、ちらっと振り返った。
何だか入り口で売っている餅がおいしそうだった。
黒澤が、「あの餅は、あんまり良くない」と言って、花の手を引き、信号を渡った。
「駅前のイオンに行きたいじゃけ」
蛍が言う。
「そこでメシでも食いますか?」
谷田が言った。
花が、「足が痛いじゃけ」と言ったので、三人は花の足を見た。
黒澤が、「スニーカーを買ってやる」と言って、花の肩を抱いた。




