ラムネ。
ラムネ。
何とも言えない爽やかな味で、口の中で控えめに弾ける清涼飲料水。
夏を思い出す。まだ幼かった頃に、姉と一緒によく飲んでいた。夏祭りで、近くの公園で。太陽の光や、月明かりに透かして、綺麗だね、と笑っていた。
飲み終わった後に出てくる青いビー玉は、当時の私たちにとっての宝物だった。一つ、また一つと引き出しの中で増えていって、宝石のように光っていた。
「お姉ちゃん!早く!雨降ってきちゃう!」
家に向かうときにいつも使っている道の空に、暗い灰色の分厚い雲が迫ってくる。
「わっ!本当だ!急がなきゃ!」
私たちは急ぎ足で家に向かった。
アパートの階段を駆け上がり、家に着いた頃には二人ともびしょ濡れになっていた。
「濡れちゃったね。」
「うん、濡れちゃった。」
このままだと寒いので、お風呂に入って体を温める。
「お布団、干したままだったね。」
「お洋服も、干したままだね。」
お風呂から出て、姉が窓を見ていう。
「ねぇ見て!晴れてる!」
外は、さっきまでの土砂降りなんて気のせいだったかのように、快晴になっていた。
「わぁ!すごい!」
さすが夏だね。と姉が言った。
「ねぇ、お散歩に行かない?こんないい天気なんだし。」
姉が提案してきた。
「そうだね。ラムネでも買おうか。」
私たちは少しのお金を持って、近くのお店に行った。
「ラムネ二つください!」
お金を出してそう言うと、お店のおばちゃんがいつも通りの笑顔でラムネ瓶を二つ渡してくれた。
「綺麗だね。」
「すごくきれい。」
なんて話しながら歩いていると、近くの公園に着いたので、ベンチに腰掛けてラムネの蓋に玉押しを押し付ける。
しゅわっ……と儚く泡が上に上っていく。思わず息を呑む。
気のすむまで泡の行く末を見届けた後、玉押しを外して瓶を口につける。
懐かしい味。なんだか泣きたくなってしまう。
不意に、姉が私のことを見た。
その瞳は、瓶の中で取り出されるのを今か今かと待っている、ビー玉のようだった。
ある日、その宝石は急に増えなくなった。部屋の隅にたまっていたガラス製の瓶も、増えなくなった。
引き出しを開けることも、日に日に減っていった。




