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不味くて美味しいウドン。

作者: 柴犬


 それはある日の事だった。

 最近手づくりのウドン作りにハマった友人が突如訪ねて来た。

 ウドン作りの食材と道具を持参して。



 オイ。



「良いかい。美味しいウドンの作り方を知ってるか?」

「知らんがな」

「なら今から教えてやろう」

「いや別に今は知らなくて良い」

「そうか……そんなに聞きたいか」

「聞けや」


 うん。

 イラっとする。


「ウドンの麺の作り方は実は案外簡単だ」

「ほう……」

「なのでそこは省略して、昨日作り置きした分を持ってきた」

「……おう」

「だから麺打ちと伸ばしは自分で調べろ」

「おい」


 そこが一番の肝だろうが。

 何で一番重要な所を省く。


「出汁は昆布と鰹節のみの本格派」

「……おう」

「昆布の表面の汚れを軽く洗い水は切る」

「汚れは確かに落とすべき」

「表面に浮いている白い粒は昆布自体のうま味何で、そこまで取っては駄目だ」

「へえ~~」

「鍋半分の長さに切った昆布に切れ目を入れ投入」

「ほうほう」

「弱火で沸騰しないようにして昆布が浮くまで待つ」



 耳穴を穿る僕。

 最初から聞く気有りません。


「昆布が浮いたら削った鰹節を鍋一杯入れる」

「え?」


 その言葉に僕は驚愕の声を上げる。

 鍋にいれてる鰹節。

 明らかに鍋の御湯と見た目が同じ量だぞ。

 

「どうした?」

「鰹節高いだろう? 最近」



 85ℊで結構な値段がするんだが……。

 正気か?



「そこはケチらず惜しみなく使う」

「マジかああっ!」

「そして鍋の火を止め鰹節が底に沈むまで待つ」

「へえ~~」

「沈んだら別鍋を用意して木綿の布で濾す」

「おお~~出汁の色って金色だな」

「金色なのは不純物のない出汁が取れた証拠で成功だ」

「へえ~~」

「そして出汁の十三に対し味醂と薄口醤油を一ずつ混ぜる」

「ほお!」

「混ぜ終わったら塩で味を調え茹でたウドンの麺を入れる」

「ほ~お!」


 眼前に香しいウドンが現れる。

 出汁とウドンの麺だけの。


「薬味は?」

「本当の素うどんは此れだけで完成だ」

「まあそらなら良いが」


「ささ、食え」

「おう」



 汁をまず飲んだ。

 美味い。

 カツオの風味が口いっぱいに広がる。


 そして肝心の麺を食べた。



 うん。


 腰が無い。

 溶いた小麦粉を茹でただけの塊……。


 

「これはウドンではなく水団では?」

「だよな~~」

「おい」

「何度やってもウドンの麺に成らないんだよ」

「これウドンではなく水団だろうが」

「だな」

「え~~」



 出汁は美味かったが此れはウドンではない。

 そう思った。


 こんな不味いウドンは初めてだ。

 此れを食わせた友人を怒ろうとした時の事。


「仕方ないので野菜と肉を焼いて追加しよう」


 そういって予め持参したであろう野菜炒めをどんぶりに投入。

 これでうどんは普通の水団になった。



 後は美味しく頂きました。

 ウドン改め水団。



 うどんとしては不味くて水団としては美味い。




 お後がよろしいようで。



 オチ?



 無いけど?


 何か?


 等と言っておこう。

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― 新着の感想 ―
友人、めっちゃいい奴ですね。 二人の掛け合いが楽しそうで、めっちゃステキやん!と思いました。タイトルもいいですね。 ほっこりしたエッセイをありがとうございました。
うどん以外は凄く美味しそうですねえ。 水団だと具材を入れて鍋っぽくしたくなりますねえ。 入れ過ぎると濁ってしまうかもですが。
すいとん食べたことない(*´ω`*) 台湾で一度、まさに小麦粉を麺状にして茹でただけみたいな牛肉麺を食べたことがありました。スープも牛肉もめっちゃ美味かったけど麺はコシがゼロだった。 あれみたいな…
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