3.11の津波の惨劇を再び起こさないための「防災集団移転」
筆者:
本日はこのエッセイを選んでいただき誠に光栄です。
関連死を含めれば2万2千人もの犠牲者を出した戦後最大の災害になってしまいました。
改めて被害者・被災者の方々に、ご冥福をお祈り申し上げます。
今回は3.11の「津波の悲劇」を政治的側面でどうやって防げばいいのかについて考えていこうと思います。
◇堤防が最善とは限らない
質問者:
政治の話なら単純に堤防を築けばいいのではないのですか?
筆者:
それが本来であれば理想的ともいえるのですが、
この日本という国は非常に残念なことに現在高度経済成長期に作った道路や橋すらも整備が進んでおらず老朽化しています。
建設後50年を経過するインフラの割合は道路が39%、トンネル27%、河川管理施設42%などとなっており、新たに巨大な堤防を作ると言った施策は余裕が無いと言えかなり難しいと言えます。
また、堤防は景観が台無しになって観光客の足が遠のき、海の生態系も乱れて主力産業の漁業が衰退すると言ったリスクもあります。
東日本大震災は本州における観測史上最高の遡上高である海抜38.2メートルを更新した40メートルの津波が起きました。正直なところケアしようと思えば際限なくなってしまうようにも思えます。
このことからこれ以外の施策について考えていこうと思います。
◇高台への移住はうまくいっていない
質問者:
具体的に堤防を作る以外でどういった施策があるんですか?
筆者:
簡単に言うのであれば高台への地域の移転です。
災害リスクが低い場所に集落ごと移転することを「防災集団移転」と言います。
現在においても気仙沼などの地域では高台へ居住移転が進んでいるのですが、
それらを考慮したとしても未だに2万9千人も県外に避難しているという方がいらっしゃいます。(最大で避難者は40万人以上だった)
これはやはり、被害が大きい元の住んでいた地域に戻ろうとするからこのようなことが起きているんだと思うんです。
質問者:
しかし、故郷には戻りたくないですか?
筆者:
ここはかなり心が痛いことですが、同じような津波による悲劇を減らし、
尚且つ堤防を作って自然が破壊されることを考慮すればやむを得ない決断なのではないかと思います。
実際に津波が到達した地域というのはかつて松島市宮戸島にあった「ここより下に住むな」という貞観地震(869年)の時にできた石碑より上に避難したところ、集落の大半が津波に飲み込まれたものの犠牲者は1000人島民のうち数人にとどまったと言います。
過去の経験を踏まえ、最低でも今回浸水した地域より高台に避難することがしやすい地域に移住することが大事です。
また、こういった被災した地域は若い方が移転していってしまい限界集落になってしまいます。そうなると遅かれ早かれそういった地域は消滅してしまうでしょう。
生産年齢人口の減少スピードはほかの地域と比べて5ポイント高いそうですしね。
漁業関係者以外は積極的に移転を推し進めた方が良いように思います。
それも県外に住まわれてしまうぐらいなら積極的に県内の別の地域に移り住んだ方が良いように思います。
質問者:
確かに被害が大きいところほど元の状態には戻れない上に、そこがまた津波に被害を受けて流されては元も子もないですからね……。
県外に流出して更に過疎化したら問題ですしね……。
筆者:
非情な決断に思えるかもしれませんが、これが合理的な選択だと思っています。
質問者:
しかし、元の場所に戻りたい方が多いという事は、高台には住宅整備がされていないのでしょうか?
筆者:
2021年の時点ではありますが、
東日本大震災の津波で自宅に住めなくなった人が高台にまとまって移り住む
「防災集団移転」は岩手・宮城・福島・茨城の4県の合わせて328地区で宅地が整備されました。
しかし、利用されている宅地が10戸未満の地区が全体のおよそ3割を占めることがNHKの調査で分かっています。
このことから何かしら政府の税制などで「促す」形でなければ故郷に固執してしまうと思われます。
質問者:
具体的にどのような問題があるのでしょうか?
◇ようやく「補助金削減」の動きが出てくる
筆者:
簡単に言えば所有権の問題です。
基本的には居住移転の自由が保障されていることから、
土地利用規制法などに該当している自衛隊基地、米軍基地、原発などの周囲一キロの場所でない限りどこでも住むことが出来ます。
よって税制などを使った施策が大事になると思います。
質問者:
災害リスクによった特殊税制はないんですか?
筆者:
世界においては災害リスクが高い地域に住むにあたって追加徴収があることもあるようなのですが、日本においてはありません。
24年3月7日の国土交通省の発表で新築住宅向けの補助金政策を改め、
災害が想定される区域で出していた複数の補助金を2024年度から半分にする。
といった施策がようやく開始することが決定しました。
今後は災害リスクに応じた補助金の減額だけでなく、税の徴収額の増額も求められてくると思います。
基本的には現代の税金のシステムの役割としては“罰金”という形の役割が多いのです。
“財源”という形で徴収している今の日本はかなり異常であると言えると思うので、話は少し逸れますが、消費を抑える効果がある消費税は廃止するべきでしょう。
質問者:
なるほど……具体的にどういう形で補助金が減額されるのでしょうか?
筆者:
23年秋から新たに始まった「子育てエコホーム支援事業」の補助金については、
18歳未満の子どもを持つか、夫婦のいずれかが39歳以下の世帯を対象に、省エネ性能が高い住宅を新築する場合、最大100万円を補助する制度ですが(同種の予算計2100億円)、
・洪水や高潮により3メートル以上の浸水が想定される地域や土砂災害警戒区域などの「イエローゾーン」と「市街化調整区域」内のいずれにも該当するエリアでは、支援額を最大50万円に減額。
・土石流や崖崩れのリスクが特に高い土砂災害特別警戒区域など「レッドゾーン」といわれる地域は、支援対象から外す。
といった制度になるようです。
質問者:
補助金の減額だけでは、新築抑制につながらないのでしょうか
筆者:
実を言いますと新築ともなると補助金以外にも税制面で優遇されています。
・住宅ローン減税制度 年末のローン残高の0.7%を所得税から控除する(最大35万円)
・登録免許税の軽減 所有権保存登記0.4%から0.15に軽減
所有権移転の登記2.0から0.3%に軽減
・不動産取得税の軽減 通常税率の4%から3%に軽減
・固定資産税の軽減 床面積が50〜280㎡の住宅 戸建て住宅では3年間、マンションでは5年間にわたって固定資産税が半額に減額
こういった制度です。
これらの税制について上記にあるようなイエローゾーン、レッドゾーンでは減額制度なしや増税などを考えた方が良いでしょう。
質問者:
そう言った措置が無ければまた住みたくなっちゃうんでしょうかね……?
筆者:
気持ちは分からなくは無いですがね。生まれた場所だったり何十年も住んでいたりするとそう簡単には離れられないでしょう。
僕は基本的には増税や社会保障費の増額には反対ですが、実質的な区画整理のためにはやむを得ないと考えます。
ただ、こういった制度は災害後に合理的な判断で行わなければそれこそ増税と財産権の侵害みたいなことになってしまいますから慎重な判断が必要になります。
質問者:
被害を受けやすい地域での住宅新築を抑制し、リスクの低い地域に誘導するんですね……。
筆者:
苦渋の決断ですが、今後の「集落消滅」などのことも考えると必要な措置なのではないかと思います。
民営化などでサービスの低下も顕著だと思うので高齢者の方々にもメリットはあると思います。(民営化は反対ですが基本的には流れを変えられないので)
質問者:
悲しいですが、複数の社会問題を解決するためには必要なことなんですね……。
筆者:
指定された移住先がスマートシティや監視社会になる可能性もあるので不気味と言えば不気味なんですけどね。
という事でここまでご覧いただきありがとうございました。
今回は津波の被害を防ぐためには高台への移住を進めなくてはいけないものの、元の低地に戻りたいがために防災集団移転に空きすらあるという事を指摘させていただきました。
移転するためには基本的には減税派の僕も補助金減額や税制改革もやむを得ないということをお伝えさせていただきました。
今後もこのような時事問題や政治・経済、マスコミの問題について個人的な解説を行っていきますのでどうぞご覧ください。




