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蒼い宇宙の略奪者

 漆黒の宇宙なんてよく言うが、実際に生活してみるとそうでもない。

 特に銀河中心域に分類される宙域は生まれて1億年も経っていない若い恒星が多く、ビカビカと青白い可視光を始めとした多様な電磁波をぶち撒けまわっている。

 何光年と離れていない近距離にそんな派手な星がいくつもあれば、宇宙はほの蒼く染まっていく。


 そんな蒼い宇宙に赤い華が咲いた。

 搭載した弾薬が爆ぜ、燃料に引火し、積み荷と乗員の破片をバラ撒きながら火の玉と化す輸送船。

 酸素が必須な地球系人類が運用する船は燃えやすくていけない。

 ちょっとの被弾であっさり爆発してしまう。

 愛機の操縦桿を握る俺は大きく舌打ちすると、コンソールの端に位置するローテクなデザインのトグルスイッチを弾いた。

 途端に僅かな振動音だけが流れていた静謐なコクピットは、やかましい馬鹿どもの胴間声で満たされてしまう。


「ひぃぃやっはぁぁぁっ! やったったあぁぁっ!!」


「キレイっすねーっ! バチバチってなってキレイっすねーっ!」


「オレ! オレだよ! オレが撃ったのが当たったんだ!」


 暗号化も掛けない平文通信で能天気な会話しやがって。

 得意満面で戦果を自慢してるのはベーコの奴だな、あの馬鹿餓鬼め。

 自然と眉間に皺が寄ってくるのを感じながら、俺は通信機に怒鳴りつけた。


「おいこら、このド阿呆ども!」


 大騒ぎしていた馬鹿野郎どもがぴたりと口を閉じた。


「出撃前に言ってたよな? でかいのだけは沈めるなって。

 何やってんだよ、お前ら!」


「だ、だって、カーツの兄貴ぃ……」


「あんまり撃ち頃のポジだったんで……」


「デケエのいたら、うっちまってもしかたないっす。 ホンノーっす」


「……お前らなぁ」


 反省してるようで反省してない、単に兄貴分が怒ってるから縮こまった振りをしている舎弟達にブチ切れそうになったが、何とか堪える。

 モニターの中で反転して逃げようとしている、残り二隻の輸送船の拿捕が優先だ。


「もういい、残りは落とすなよ! 絶対落とすなよ! フリじゃねえからな!」


「わかってるっす!」


「任せてくれよ、兄貴ぃ!」


「迎撃機が出てきてるぞ、そっちはバンバン落としていいからな!」


「うっひょおぉっ!」


「オレがおとすぅぅっ!」


 舎弟達が操る三機の宇宙機は、パイロットのテンションそのままにスラスターを全力で吹かして突っ込んでいく。

 俺は戦場を俯瞰できる後衛のポジションを維持した。

 俺の役割は、あいつらの尻ぬぐいだ。

 兄貴分として、銘有りの機体を与えられた氏族の戦士として、舎弟達を見守り、そのミスをカバーしてやらなければならない。

 拿捕すべき目標船を初手で撃沈するくらい脳みそまでトリガーハッピーな連中のお守りなんて、罰ゲーム以外の何物でもないと思ってはいるのだが。


「あいつら、阿呆だからなあ……」


 パイロットシートに背を預けると、頭上まで配置された半球型モニターに蒼い星々が映し出されている。

いつ見ても感嘆を覚える美しい光景を眺めながら、ままならぬ事をしみじみと呟いた。


「まあ、仕方ないな、オークだもん」


 宇宙に名だたる脳筋種族。

 さすらいの宇宙蛮族。

 奪うし、殺すし、壊すし、浚う、銀河の大抵の種族からすると災厄そのものな連中。

 それこそがオークであり、俺ことカーツの出身種族であった。

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