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死にたがりな悪役令嬢  作者: 緑茶
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〜*第7-6*〜

『裏切り者』『貴女には私しかいないのに』

幼い私が私を責める声。どうしてそんなに怒っているの。裏切ってなんてないよ。

でも今日はいつもと違ってなんだか声が出ない。暗闇でもない…。


ふわふわと、宙に浮いているような感覚。

『変わらず軽いな…もっと食事量を増やすよう侍女達に言っておこうか』なんてぶつぶつ呟く声。これは兄の声だろうか。いつの間にか寝てしまったようだ。


まだ夢の中に居るような感覚が続き、目を開く事は出来ない。

起きないと。兄と話をしたいから。


「…お、にぃ様」

ベッドに運ばれたタイミングで何とか声を出す。『すまない、起こしたか』そう言って私の頬を優しく撫でる指。キュッとその指を掴み『ここに…いて。ずっと私の…おにぃ様で…いて』

居なくならないで、私から離れないで…なんて自分勝手な願望だろうか。


◇ ◇ ◇

-side エリック


執事にアメリアが急遽帰宅した事を知らされ、早急に仕事を済ませ邸宅に戻る。

扉をノックするも反応が無い。何かあったのではないか、と考えが過ると心臓が嫌な音を立てる。

恐る恐る部屋を覗くと、ソファーで少し身体を丸めて眠る姿。

安心しつつも、このままでは風邪をひいてしまうと、抱き抱え寝台に運ぶ。運びながらその身体の軽さと細さに眉を顰める。コルセットや重いドレスを着ていないから、より分かりやすい。


アメリア付きの侍女達に、嫌がっても食べさせるよう言っていたが、効果はあまりないらしい。

そっと寝台の横たわらせると、薄く開く瞳と、あまりにも可愛らしい望みを口にして、私の指を掴む体温の低い小さい手。


「居るよ。お前がそう望んでくれるのなら」


胸の奥から湧き上がる感情をいつものように抑え込む。

…それでも、最近は制御が徐々に出来なくなってきているのが分かる。


怖がらせたくない、失望をされたい訳ではない。

兄として、一生この子を守ると決めたあの日から、その思いは変わらない筈なのに。


「ふっ、確かに難義な生かもしれないですね」

サーシャ殿に言われた事を思い出す。アメリアだけには知られたくない、誤魔化しの効かなくなってきた醜いこの情慾をいつまで隠し通せるか。


誰にもこの子を渡したくない。見せたくない。ずっと私の腕の中で閉じ込めて…あの日涙しながら焦がれる男の名を呼ぶように…俺の名を呼んで欲しい。

起こさないよう柔らかい細く綺麗な長い淡いピンクの髪、話す時その相手をジッと見据える青く澄んだ瞳、柔らかい頬、寝息を立てる小さな赤い唇まで撫でると、『ん、』と愛らしい声が漏れ出る。


『ここに…いて。ずっと私の…おにぃ様で…いて』そんな言葉に、私が簡単に翻弄されているなんて、この子は知る由もないだろう。

いつまで理想の物わかりの良い優しい兄で居れるか…自分でも分からないのだから滑稽だ。


「すまないね、離れてあげられなくて」


家族や友人に傷つけられた過去を知って、より一層大切にしたいと誓ったはずなんだ。

具体的な内容は濁しながらだが、きっと義弟は姉だったアメリアを欲望のままに襲ったのだろう。

聞いた限り、それが分からない程鈍感ではないし、殺してしまいたくなる程その男が憎い。


それでも…好きな愛する相手が側に居ると、触れたくて仕方が無いのは理解出来てしまうから、私も下劣で卑しい人間だ。


ー大丈夫だ、この子に嫌われる位ならこのような感情は死んでも隠し通せる。

まるで暗示をかけるかのように頭の中で反芻する。

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