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死にたがりな悪役令嬢  作者: 緑茶
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〜*第7-5話*〜

一瞬の沈黙の後『どこでそれを知ったのだ』と額を押さえる父。

心のどこかで、『何を言っている。そんな訳ないだろう』と言ってくれるのを期待していたのだが、そんな淡い考えはあっけなく散る。


「…まぁいつまでも隠しておく事ではないか」

それから父は本当に簡潔に私に説明をしてくれた。兄の両親が事故死をして、色々あって頼まれて幼かった兄を養子として公爵家で引き取った事。

引き取ると決めたからには、長男として育てる事を兄に説明の上、兄からは了承を得て現在に至ること。兄は自分の素姓を知っていたのか。


「エリックが来た当初は中々に扱いが難しかったが、ある日を境に我が家に馴染み始めた」

「ある日を境に?」

なにか兄が変わるきっかけがあったのだろうか。それにあの兄にも扱いが難しい時期があった事に少しだけ驚く。子供の頃からあんな感じなんだと勝手に思っていたから。でもそうよね…ご両親が幼い頃に亡くなったら落ち込むよね。


「ははっ、あいつが自分から言っていない事を私がベラベラと話したら怒られてしまう。ただこれだけは言える。あれはお前が大切で、我が公爵家の事も大事に思っている。そしてこれからもこの関係は変わる事は無いから安心しなさい。これからもお兄様と呼んであげれば良い」


そう言って立ち上がり私の側に寄ると、優しく私の頭を撫でながら『だから、そんなに心配そうな顔はしなくて良い』と安心させてくれた。『はい』と返事はしつつも、1番気になる所…兄は王家と繋がりがあるのか。それを知る事は出来なかった。

聞いたら父は教えてくれるのだろうが、『あいつが自分から言っていない事を私がベラベラと話したら怒られてしまう』と父は言った。だから、兄は自分から言ってくれるのだと思う。


それからは、父の雑談に付き合わされていたが、執事長が急遽仕事を持ってきたものだから、渋々と言った様子で解放される。


それから自室でゆっくりしていると、私が帰って来た事を聞いたアベルが慌てた様子で訪れる。

キラキラと輝く笑みを向けられお菓子を食べたり、遊んでゆっくり過ごす。可愛い可愛いと抱きしめ癒されていると、アベルの従者が呼びに来た。


「…嫌だ。僕今日はもうお勉強したくない」

ブスっと頬を膨らませて、私のドレスを掴むアベルにキュンとしながらも

「今日はお姉様泊まっていく予定なの。頑張って勉強したら特別に一緒に寝てあげるから、頑張っておいで」

と頭を撫でると、機嫌が直ったのか『分かりました!』と元気良く勉強に向かう。


公爵家の次男として、幼いうちから勉強の日々も大変よね。

1人になると父の話を思い返す。兄の実のご両親が亡くなっていただなんて。…ふと前世の母の事を思い出す。前世の事を思い返す事は、意識的にあまりしないようにしていたのだが、もう朧気で詳細には思い返せないけど、優しく微笑みかけて私の名前を呼ぶ声。

『菜々美ー。今日は何が食べたい?』『えーとね、ハンバーグとオムライス!』『あはは、菜々美は本当にその2つが大好きね。でも昨日作ったばかりだから駄目でーす』


大切な…母の記憶。思い出すと悲しくなって泣いてしまうから思い出さないようにしていた。

でもそうしていると、徐々に顔も声も朧げになっていった。

だけど、忘れたくても覚えてるんだ。お母さんに抱きしめられた時の温もりと優しい香。


「……嫌い」

ソファにクッションを抱きしめながら横たわる。そんなの嘘、どんなに強がっても嫌いになんてなれない。だってお母さんは、私を愛してくれてたって知ってるから。

こんな子供の頃から成長出来ない自分が大嫌い。

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