〜*第6話-11*〜
「信頼しているに決まっているじゃないですか。この世界で一番信頼していますよ」
だからこそ、私が成そうとしている事に巻き込みたくない。
私の事は放っておいて、自身の身体を休める事を優先して欲しい。学園にて剣術の指導に、公爵家の仕事と目の回る生活をしているのだから。
安心させたくて、信頼している旨を伝えるも抱きしめる力が強くなるだけ。
以前のアメリアだったら、どうしていただろうか。呆れる?それとも笑うだろうか。
…最近私はおかしい。妹を溺愛するこの人と…奏汰がダブって見えたあの日から。こんな風に触れられたり、優しい声を掛けられると胸が切なくなる。
側に居る事でまた私が傷つけてしまうのではないか。私が不幸にしてしまうのではないか。
そう思ってしまう。だからこそ私の事は気にせず、以前のように愛らしいご令嬢達に目を向け、自身の幸せに時間を割いて欲しいのだ。
妹の為なら、無茶をするこの人には幸せになって欲しい。
でも…私が足かせになっている。
「…私のせいですよね。お兄様を心配させる事をしてしまったから」
問題が解決すれば、消えてしまう私のせいで縛り付けてしまっている。
それはまるで呪いのような。逃げ出したい私。消えてしまいたい私。
家族を_兄を幸せにしたい私。
ごちゃごちゃとした感情が渦巻いて、自分でも何が一番大切なのか分からない。
そっと兄の背に手を回し、思いを口にする。
「私が何を成そうとしているのかは、今はお伝えする事は出来ません。これからまたこうやって偽ったりする可能性もあります。でも…それはアルベルティ公爵家の皆にとって大事な事だと、確信しているんです」
アメリアの最後の記憶…あのような惨劇を目の当たりにしたら、今度こそ私はどうなってしまうか分からない…。
そこで漸く、兄が重々しく口を開く。
「お前がしないといけない事なのか。考えている事を私が変わりに行う。お前が危険な目に合う事は許容範囲外だ。」
「いいえ、私にしか出来ない事なのです。ただ…この事で危険な状態になったり、傷つかないと約束します」
今後の展開がある程度把握出来ているのも、サーシャと協力して解決できるのは私だけだ。
兄の心配を少しでも軽くしてあげたくて、この件で傷を負わない約束をする。
「はぁ…本当に頑固な妹なことだ。危険な事をしようとしている事は分かっているが、全貌が分からない事には、下手に私が手を出す訳にはいかない。手を出す事でお前が危険な目に合う確率が高まるからな。それを分かった上でお前は詳細を言わないのだろう」
そう言うと兄の温もりが身体から離れ、今後を両頬を包まれる。
「しかし悪いな。私も大人しく妹に守られる男ではない。何かあれば私が守れるよう待機しよう。そして、これだけは覚えておきなさい。もしこの身体に傷が付けば…今後は私の手元から離さず、自由を許さず、付きまとうぞ。いいのか」
付きまとうと言えば、私が折れると思っているのだろう。
兄なりの最強の脅し文句。ただ…それは嘘だと長い付き合いだから分かる。
「ふふっ、それはそれは…恐ろしいですね」
兄の手に自分の手を重ねると、諦めの表情を浮かべる。
「私の言葉に一切躊躇無しか。私の妹は随分と自信があるようだ。全く…兄として情けないな。妹を止める事も出来ないとはな」
何とか納得してくれたかな、と安堵していると兄の端正な顔が近づいてきて、コツンと額同士が重なる。
「どうにもならなければ、必ず私を頼ってくれ。分かったな」
「分かりました。ありがとうございます。お兄様」
そこからは兄が公爵邸に戻る前に、納得がいってない香、装いを戻す為湯浴みをするよう指示されたので、自室に設置された御湯で済ませる。
本当は夜も深まっているし、兄に泊まるよう提言した所「淑女らしからぬ言葉だな、軽率に言うものではない。」とピシャリと言われてしまった。
…事故にでも合わないか心配なだけなのに。何が悪かったのだろうか。




