〜*第6話-10*〜
外に出ると思いのほか緊張していたのか、どっと疲労感が襲ってくる。
…でもコレで目的を達成出来た。伯爵が黒幕だとしたら、今回新たな反戦力が出来た事を知り、次回の集まりに顔を出すかもしれない。
そうなればこの問題は解決できる。お父様を通して陛下に伝えて貰えるし、うまく行けば反王政派を壊滅に追い込む事も出来るかもしれないしね。
学園寮に戻ると、リリィ達が慌てて駆け寄って来る
「お嬢様!!一体何処に行っていらっしゃったんですか!!」
えー、今日はもうゆっくり休むよう指示していたし、見張りの者達にも今日は大事な用事があると言って見張りを止めさせていたのに。こんなにも早くバレてしまっているとは。
寮には嘘の届け出をしていたから、バレないと思ったのに…甘かったみたいだ。
しかも今のこの格好…真っ赤なドレスに胸元は大きく開いて、身につけてるのは煌びやかな宝石。今は地味目な恰好を好む私がするような装いではない。
「それにその装いは一体・・・」
困惑の表情を浮かべるリリィ達に何と言い訳をするべきか。
「ごめんね。なんでもないのよ。でも一体どうして私が居ないと分かったの?」
何も言わない私に、リリィ達の表情が曇るが何も言わない。
きっと私を問い詰めても言わないと分かっているから。それ以前に主人に対して言える筈もないもの。ごめんね、と心の中で謝罪し話を続ける。
「あ、はい。エリック様がお探しで…それでお部屋にお嬢様が居ない事も分かりました」
あー、お兄様私の様子をみに来たのね。しまった…。過保護すぎる兄を甘くみてた。
「外に探しに行かれて、そろそろ1度戻って来られるかもしれません」
とリリィが現在の状況を教えてくれていると、「アメリア!」と若干怒りを含んだ声が聞こえる。咄嗟に振り返ると笑顔の兄がそこにいた。
声と表情のチグハグさに「ひっ」と情けない声が漏れ、反射的に自室に向かって走る。教員・公爵家嫡男…兄は権力の塊の為、通常女子寮は男子禁制だが兄は入る事が許されている。
いっその事この人も立ち入り禁制にしてくれればいいのに!
そんな事を考えながら、兄から逃げる事だけを考え自室に向かう。
しかし足音はどんどんと近づいてきて、気配を直ぐ後ろに感じる。
何とか逃げ切る事が出来て、扉に手を掛けた瞬間腕を掴まれる。
「どうして逃げる?アメリア」
「いえ、その…」
ダラダラと冷や汗が出そうだ。冷ややかな声に振り返る事が今度は出来ない。
少し遅れて、息を切らしたリリィ達が到着する。
「もうお前達は下がって良い。これからアメリアと話しがある」
「はい、かしこまりました」
冷え切った空気が伝わったのか、一瞬にして場を離れて行ってしまう。
そして私は兄に腕を引かれ、私の自室に引き込まれる。
「その、ごめんなさいお兄様…用事があったので出かけていたんです」
上手い言い訳も思いつかず、直ぐに謝罪をする。昨日の今日だったから心配かけたくなくて黙っていたのが、裏目に出てしまった。
素早く謝ると兄が振り返り、私の顔の横に両手を付き一気に距離が近づく。
「…ほう、虚偽申告をしてか?それにこの格好と匂い…実に不愉快だ」
そう言いながら首元の匂いを嗅がれる。この人犬なのかしら。
「ッッ、それは申し訳ありません」
兄の髪が首元にかかり、くすぐったくなり身をよじらせる。
「男物の香水…葉巻に酒の匂いもするな。一体何処に行っていた」
本格的に野生動物かと思う程の嗅覚。
自身を纏っている香は気付きにくい。
「その…それは言えません」
グッと兄の身体を押すもビクともしない。
「…そうか。私の事は信頼してくれていると思ったのだが、言えないのだな」
そう言いながら私の腰を引き寄せ、肩に頭を預ける。
ーーズルい。この兄は本当にズルい人だわ。
信頼しているに決まっている。この世界で唯一私の秘密を自分から話したのに。




